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2023年11月10日

日本電信電話株式会社

耳を塞がない音響デバイスのさらなる進化
~コンサート会場などの賑やかな場面でも必要な音がクリアに聞こえるPSZ技術~

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、音を閉じ込めるオープンイヤー型の音響デバイスでユーザーの周囲に複数の音が混在するコンサート会場などの賑やかな場面でも耳元の音を空間的に制御することで必要な音がクリアに聞こえる技術を確立しました。
 本技術は、「聴きたい音」が周りに漏れずに自分だけに聴こえ、「聴きたくない音」はカットする究極のプライベート音空間を実現するPSZ(Personalized Sound Zone)をコンセプトとする研究開発成果の一つです。本技術の一部はエンターテイメント分野での空間音響アプリケーションや車室内への車載ANCをユースケースとして「NTT R&D FORUM 2023 ― IOWN ACCELERATION」(※1)に展示します。

1.背景

リモートワークの普及に伴い、イヤホンやヘッドホンの長時間利用が増えています。これらの音響デバイスの長時間利用は耳への負担が高く健康への影響も懸念されています。NTTではこの課題を解決するため、耳を塞がないイヤホンやヘッドレスト型スピーカーなどの音響デバイスの研究開発をすすめ、音響デバイスの音を周囲に漏らさない技術を確立してきました。しかし、これらの耳を塞がない音響デバイスは、周囲の音がユーザーの耳に到達するため耳を塞がない音響デバイスの音に影響を与える問題があります。そこで、NTTでは、ユーザーの周囲に複数の音が混在する環境下でも音響デバイスからの音を聞こえやすくする技術を研究開発し、今回外からの音の空間的な特性を利用して聞き取りやすく追加する方法と、外からくる音を減らす方法の2つの技術を確立しました。

2.技術のポイント

a. 周囲音の状況に基づく音源配置技術
 耳を塞がない音響デバイスを利用するユーザーは周囲の音が聞こえるため、周囲の音が音響デバイスの音に被さり、音が聞こえにくくなる課題があります。そこで、ユーザーが聞きたい音響デバイスの音を提示する位置を制御し、周囲の音が被らない位置から、あたかも聞こえるように提示することで、周囲の音が耳に聞こえる状況下でも音による情報提示を可能にしました。さらに、遠くのスピーカーでは再現することが難しいユーザー近傍の音を、耳元の音響デバイスより再生し、より定位感を高めることを実現しています。「第180回 NTT東日本 N響コンサート」小布施町サテライト配信公演(※2)では本技術を用い、耳を塞がない音響デバイスからの解説音声の聞こえる位置をオーケストラの演奏から分けることで、解説音声の聞き取りやすさの向上を図っています。

図1. 周囲の音の空間的な特性を利用して耳元の音響デバイスの音を聞き取りやすく追加する音源配置技術 図1. 周囲の音の空間的な特性を利用して耳元の音響デバイスの音を聞き取りやすく追加する音源配置技術

b. 耳を塞がない能動騒音制御技術(ANC※3)
 耳を塞がず音響デバイスの音を聞き取りやすくするためには、周囲の不要な音を抑圧する必要があります。それを実現するためには、耳から離れたスピーカーから出す音波で耳元の不要な音波の打ち消しを実現する必要があります。しかしながら、耳から離れたスピーカーで出る打ち消し音がマイクで収録されるため、動作をさせることが困難でした。さらに抑圧する領域を拡大させるためには従来のスピーカーでは出力が不足していました。そこで、NTTはPSZのスポット再生技術(※4)を適用した新たなスピーカーを開発し、打ち消し音がマイクに収録されることを低減することで、耳を塞がないANCの安定動作と領域の拡大を実現しました。

図2. PSZのスポット再生技術を適用した新たなスピーカーを用いた耳を塞がないANC 図2. PSZのスポット再生技術を適用した新たなスピーカーを用いた耳を塞がないANC

3.今後の予定

今回開発した聞きたい音が届くPSZ技術を用いて、「超歌舞伎 Powered by NTT」(※5)や、NTTドコモ主催のXR絶滅動物園(※6)の音響演出など実フィールドでの検証を進めてまいりました。今後は、検証の結果を踏まえ、更に様々な分野での実証実験を行い、技術のフィジビリティを高めていきます。また、新たな音響体験の創出に向けてNTTグループ各社と連携しサービス提供をめざしていきます。

※1周囲音の状況に基づく音源配置技術をはじめとする音響XR技術は、これまでの実証実験の取り組みを紹介、体験頂くことを予定しています。また、期間中NTT技術史料館では、音響XR技術を用いた音声ガイド体験を予定しています。PSZのスポット再生技術を利用したオープンイヤー型の音響デバイスを用いて、周囲の音も自然に聞こえる中で、展示物に近づくと自動でガイドコンテンツが音響デバイスから再生される体験を予定しています。ANC技術は、さらに、ユーザーが不要な音のみを精度よく消すため、ユーザーが必要とする音を識別する技術と連動させ、ユーザーの耳元に到来する周囲の不要な音のみを抑圧する、耳を塞がないANCをR&Dフォーラムにて披露する予定です。
「NTT R&D FORUM 2023 -IOWN ACCELERATION」公式サイト
URL:https://www.rd.ntt/forum/当該ページを別ウィンドウで開きます

※2「第180回NTT東日本N響コンサートのサテライト配信公演を11月2日に小布施町北斎ホールにて開催 ―高音質配信による高い臨場感と、マルチアングル配信による自由度の高い音楽鑑賞体験を提供―」
URL:https://www.ntt-east.co.jp/nagano/news/pdf/2012/20230915.pdf当該ページを別ウィンドウで開きます

※3ANCは周囲の音を観測するマイクで周囲の雑音を収録し、収録した雑音を打ち消すための音をスピーカーから再生させることで雑音を抑圧する技術になります。

※4TPSZのスポット再生技術はスピーカーの背面から放射される、逆相の音波を利用し、音漏れを抑圧することでスピーカー近傍のみに音が聞こえる領域を作り出す技術です。
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/11/09/221109a.html

※5「超歌舞伎 Powered by NTT」にて超歌舞伎の新しい空間音響演出にチャレンジ
~舞台のリアルな音と耳元の効果音がクロスオーバーする空間音響演出を実現~
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/04/29/230429b.html

※6【開催報告】2023/10/14~15 に「LOST ANIMAL PLANET XR 絶滅動物園」を開催
URL:https://www.docomo.ne.jp/corporate/technology/rd/tech/mmwave/20231014/当該ページを別ウィンドウで開きます

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
サービスイノベーション総合研究所
広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

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