2025年4月25日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、IOWN オールフォトニクス・ネットワーク(以下「APN」)(※1)(※2)を構成する各機能部が連携することによりオンデマンドで光パス(※3)を提供する技術を世界で初めて実証しました。これにより、将来のAPNで実現する新たな接続形態として、APNに機器を接続するだけで、任意の場所から必要な時だけタイムリーに、大容量・低遅延の光パスを利用できるとともに、既存ネットワークを有効活用した効率的な光パスの提供が可能となります。なお、大阪・関西万博のNTTパビリオン内では本技術の一部を展示しています。
IOWN構想では、光技術を最大限に活用したIOWN APNにおいて、大容量・低遅延な光パスを、消費電力を抑えつつユーザに提供します。これにより、インタラクティブなライブ映像配信サービス、遠隔手術、工場DXなどを可能にすることが期待されています。
NTTでは、2023年3月にNTT東日本・西日本にてAPN IOWN1.0のサービス提供開始を皮切りに、IOWN APNの大容量・低遅延の特徴を生かした様々な実証を行っています。例えば、IOWN APN step1、2 for Enterpriseとして、日本と台湾の間をAPNで接続し、約3,000kmの距離を低遅延かつ揺らぎのない安定した通信を実現しました(※4)。また、IOWN APN step1、2 for DCX(Data Center eXchange)として、海外においてもデータセンタ間のAPN接続に取り組んでいます。
そして、NTTでは新たなAPNの接続形態として、様々な拠点のユーザが必要な時に必要な時間だけIOWN APNにオンデマンドに接続できるようになることを、IOWN APN step3としてめざしています。例えば、IOWN APN step3が提供するユースケースとして、現地での映像制作に代わり、大容量・低遅延なデータ伝送により、クラウド上や放送局内での映像制作を可能とする映像リモートプロダクションがあります。IOWN APN step3でオンデマンドな接続ができるようになると、スタジアムやイベント会場といった様々な場所と映像制作拠点を必要な時だけ大容量・低遅延で接続でき、タイムリーな映像収集が可能となります。
現在、ユーザに光パスを提供する際には、作業者を現地に派遣してデータ送受信機を設置するとともに、両現地の作業者とオペレータが連携して光パスの設定作業を実施します。よりタイムリーに光パスを提供するためには、作業者を現地に派遣することなく、オペレータから送られてきたデータ送受信機をユーザの都合の良いタイミングでAPNに接続するだけで、自動的に接続を検知して光パスを設定できることが必要となります(図1)。また、より広範囲に光パスを提供するために、既設のネットワークに敷設されている様々な種類の光ファイバを使う必要があります。光ファイバの種類により光パスに使われる最適な波長帯が異なるため、最適な波長帯に光パスの波長を変換して提供できるようにすることも光パスの設定では求められます。これらの課題を解決するための技術として、NTTではIOWN APN step3を支える要素技術(Photonic Gateway(Ph-GW)、Photonic Exchange(Ph-EX)、APNコントローラ)の研究開発を進めてきました。
図1 従来の光パス設定作業とオンデマンドでの光パス設定作業
映像リモートプロダクションを想定して、Ph-GW、Ph-EX、APNコントローラを使用した実証実験を行いました。遠隔に設置されたデータ送受信機がAPNに接続された際、プラグ&プレイ機能により接続情報を自動検出し、映像拠点と映像編集拠点間で光パスをオンデマンドに接続することに成功しました。これにより、いつでも必要な時に光パスを提供できることを実証しました。
また、このときAPN内の光パスを効率よく収容するため、Ph-EXの波長帯変換機能を適用することで、その伝送区間では利用していない波長帯に波長変換を施して信号伝送を実施しました。
オンデマンドでの光パス開通動作として実証した手順は以下のとおりです(図2)。
図2 オンデマンドでの光パス設定機能実証系と手順
これらの動作をAPN機器6台からなるネットワークに対して行った結果、光ファイバ挿入側のデータ送受信機からの光信号をAPN機器で検出したのち、光パスが自動で設定され、対向側のデータ送受信機にてAPNの光パスを通過してきた光信号を検出することができました(図3)。
さらに、ネットワーク内には、Ph-EXにおける波長帯変換技術により効率よく光パスを収容可能としています(図4)。
図3 オンデマンドでの光パス設定動作実証結果
図4 波長帯変換機能実証結果
本取り組みでは、IOWN APNへの接続を契機に自動で接続情報を認識し、遠隔からエンドツーエンド光パス構築し、遠隔からの映像素材をオンデマンドに収集することに成功しました。さらに、遠隔からの映像素材を処理して、複数拠点へ配信する実証にも成功しました。ここで、エンドツーエンド光パスの設計には既設のネットワーク設備を有効活用して提供できる光伝送技術、ならびに高信頼な映像配信方式としてネットワーク故障があった際にも迅速かつ経済的に復旧する切替技術を適用しています。これらの技術により、IOWN APN step3でめざす、新たなAPNへの接続方法により、今まで以上に様々なユースケースでAPNサービスを利用できることが期待されます。
今後、本取り組みの機能実証結果を踏まえ、APN step3実現に向けて2028年度以降のサービス提供をめざし、各種機能の商用化開発を進めてまいります。また、IOWN Global Forumを活用し、Open APN Functional Architecture(※6)への提案を通じて、APNの機能実証やAPNの普及展開を推進していきます。
実証実験におけるAPNコントローラの一部機能は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の助成事業(JPJ012368G60301:超高速・大容量ネットワークを実現する光ネットワークコントローラ技術に関する研究開発プロジェクト)により得られた成果を活用しました。
※1IOWN
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。詳しくは以下ホームページを参照ください。
■IOWN構想とは?
https://www.rd.ntt/iown/index.htmll
※2APN
APN(All-Photonics Network)とは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。詳しくは以下ホームページを参照ください。
■オールフォトニクス・ネットワークとは
https://www.rd.ntt/iown/0002.html
※3光パス
光信号の送信機から受信機までをつなぐ光信号の通り道を光パスと呼びます。各光パスは、通過する光ファイバや光ノードシステムによって構成される経路と、光信号の容量や割り当てられる波長が指定されています。
※4NTTと中華電信、世界初のIOWN国際間オールフォトニクスネットワークを開通~日本と台湾間の約3000kmをわずか約17msecの超低遅延で接続~ | ニュースリリース | NTT
※5PPLN
PPLNとは、周期分極反転ニオブ酸リチウムであり、波長帯一括変換技術を実現するための光デバイスです。これにより、一つの波長帯に収容している複数の波長信号を光処理により、一括で別の波長帯変換することができます。詳しくは以下のホームページを参照してください。
周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)を用いた広帯域波長変換技術 | NTT R&D Website
広帯域光パラメトリック増幅中継技術 | NTT R&D Website
※6Open APN Functional Architecture
Open APN Functional Architectureとは、IOWN Global Forumで提案されているフォトニクスネットワーキングのオープンアーキテクチャです。詳しくは以下のホームページを参照してください。
Home - IOWN Global Forum
IOWN-GF-RD-Open_APN_Functional_Architecture-2.0.pdf
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
問い合わせフォームへ
ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。
NTTとともに未来を考えるWEBメディアです。