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生態系保全

方針・考え方

NTTグループの事業に欠かせない通信設備、特に電柱、通信ケーブルなどは自然環境の中に設置しており、生態系に対し少なからず影響をおよぼしています。また、通信ケーブルなどがリスやカラスによってかじられ破損するなど、生態系から影響を受けることもあります。生物多様性を含む生態系からの恵み(水や食料など)は、人類を含む生物全体にとって不可欠なものであり、その保全に向け考える必要があります。

ありのままの自然を未来に引き継ぐために、事業活動および社員活動を通して、自然に寄り添い、生態系保全に関する取組み(自然資本への配慮)を推進します。

推進体制

以下のページをご覧ください。

目標と実績

NTTグループは、生態系保全と自然資本への配慮を前提に、最善を図る事業活動と社員活動を推進していきます。

主な取り組み

NTTグループにおける自然への依存関係や影響の調査
潜在的な依存・影響の調査

NTTグループでは、世界中に多くの事業用施設を有しており、自然に依存するとともに、自然への影響を与えています。NTTの考える「持続可能な社会」の実現に向けた「自然との共生」の取組を深めていくため、TNFDに沿って、自然関連の影響・依存、リスク・機会などについて特定・評価を行いました。
「ガバナンス」、「戦略」、「リスクと影響の管理」、「指標と目標」の4つの柱に沿って自社の取組み状況や分析結果を整理しています。

ガバナンス

NTTグループでは、サステナビリティの推進を重要な経営課題と捉え、特に重要な事項については取締役との議論を踏まえて決定しています。
取締役による監督体制としては、取締役会直下にサステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置し、グループ全体の活動方針やその進捗状況を管理しています。サステナビリティに関する方針は、サステナビリティ委員会を経て取締役会で決定しています。

戦略

まず、移動通信事業・地域通信事業・ICT事業および再生エネルギー事業を対象とし、 NTTグループで使用している主要な事業設備の種類別に、ENCORE※1や外部ステークホルダーの要請等を用いた自然への潜在的な依存・影響に関する検討を行いました。

その結果、原材料調達段階では、事業共通で、原材料調達(金属採掘)における周辺生態系への影響や取水による影響、周囲への汚染の影響が挙げられました。
また、設置・運用段階では、主な設備種類別に、データセンターにおける取水による影響や、その他通信設備・再生エネルギー発電設備における周辺生態系への影響などが挙げられました。
さらに、廃棄段階では、周囲への汚染の影響が挙げられました。

これらをふまえ、金属原料の採掘段階における自然関連リスクの概要把握に取り組むとともに、設置・運用段階におけるNTTグループの直接操業設備について、実際の自然への影響度を検討するため、地域性評価を行いました。なお、廃棄段階については、すでにNTTグループにおいては廃棄物のリサイクルに努めており、撤去通信設備の99%超がリサイクルされていることから、影響は僅少と捉え、調査の対象外としています。

※1ENCORE (Exploring Natural Capital Opportunities, Risk and Exposure)

バリューチェーンを通じて重要と考えられる自然への潜在的な依存・影響

*を付したものは、自然への依存関係を、*のないものは自然への影響関係を示す

リスクの管理と評価

設置・運用
直接操業設備における地域性評価の実施

設置・運用段階における直接操業設備の地域性評価については、NTTグループ設備のうち、発電設備(太陽光、風力)および通信設備(データセンター、その他通信設備)の全設備数(約10万施設)に関し、施設の類型別にサンプリングによる調査を行いました。

この結果、発電設備、データセンター、その他の通信設備のいずれも、サンプルの数%程度において、生物多様性の重要性が高い地域への立地が見られました。 また水については、データセンターについて、海外拠点の一部について水ストレスが高い地域への立地が見られました。 発電設備(太陽光、風力)においては、想定される自然への依存・影響が大きく、かつ多岐にわたる傾向等をふまえ、今後、重要性が高い地域に立地する設備において生じるリスクの有無や、追加的にとりうる対応策の検討を行うこととしています。 データセンターについては、自然にもたらす影響が主に取水によるものと考えられることから、各事業会社において取水量や周囲の水環境に関する情報収集を行っており、これらから生じるリスクは少ないことを個別に確認しています。 通信設備は、事業の性質上、電信柱やRT-BOXといった軽微な設備も含め、全国に多数分布しています。重要性が高い地域に立地する通信設備については、各施設の影響として周辺生態系への懸念事象が生じていないか把握するため、一部の保護地域における公園管理者、施設管理者等のステークホルダーとの意見交換による現状把握を行いました。その結果、これらのヒアリングを行った設備に関しては懸念事象はなく、事業上生じうるリスクは低いと判断しています。今後は、その他の地域でも影響度の精査を進めるとともに、新たな設置を行う場合の自主ルール化や環境影響の緩和を含め、とりうる対応策の検討を行います。

今回、サンプリング調査の対象とした設備の他にも、化学物質を用いた研究活動を実施している研究機関では、個別に排水処理施設の設置や化学物質漏えい防止対策などを実施し、これら処理排水が法規制値以下の水質となっていることを、定期的に水質監視して確認しています。なお、NTTグループでの重大な漏出の実績はなく、こうした施設においても環境汚染に関するリスクは低いと判断しています。

直接操業設備の地域性評価結果

※横スクロールできます

生物多様性リスクが高い地域への立地 水ストレスが高い地域への立地
発電設備(太陽光、風力) いずれの施設も数%が該当 なし
通信設備 データセンター 海外データセンター1件が該当
その他通信設備
(基地局、中継局、通信ビル等)
なし

(注釈)NTT Ltd. が所有する海外施設は、地域性評価の対象に含まれていない。

  • 生物多様性評価ツール(IBAT)イメージ

  • Aqueduct イメージ

(備考)
生物多様性リスク: 生物多様性リスク評価ツール(IBAT)を用い、KBA (生物多様性保全の鍵となる重要地域)にあたる地域へ立地するかにより評価した。
水リスク: WRI Aqueduct 2019を使用し、Baseline Water Stressにおける「High」「Very High」とされた地域へ立地するかにより評価した。

原材料調達
金属原料の採掘段階における自然関連リスクの概要把握

金属材料の採掘段階については、主要な金属として銅、鉄、アルミニウム、レアメタルの4種を取り上げ、日本への輸出が多い主要産出国における主要鉱山について、立地を生物多様性リスク・水リスクの観点から評価することで実施しました。これらの結果、生物多様性リスクは非常に多くの鉱山で高リスクであること、水リスクも半数程度の鉱山でリスクが高く、自然への大きな影響を与えうることが分かりました。

NTTグループでは、サプライチェーンにおいて持続可能な社会の実現に向けた取組みを進めていくため、サプライヤーに対し、「NTTグループサプライチェーンサステナビリティ推進ガイドライン」及び「NTTグループグリーン調達基準」の遵守を依頼し、定期的に環境保全に関する取組状況についてアンケート・調査等を行うほか、企業評価や製品評価を実施しています。今後、これらの枠組の中で、自然・生物多様性保全に関するサプライヤーとの対話を強化し、金属資源の採掘を含む上流工程における、生物多様性の保全や地域の水資源の保全に関する取組強化を検討します。

主要な金属資源の採掘地に関する生物多様性リスク・水リスクの状況

※横スクロールできます

金属種類 使用する主な設備 生物多様性リスクが高い地域への立地割合 水ストレスが高い地域への立地割合
電線、電気通信設備 91.7% 41.7%
鉄塔、アンテナ、建築材料 93.8% 12.5%
アルミニウム 鉄塔、アンテナ 84.6% 69.2%
レアメタル(タンタル) 電子部品 85.7% 57.1%
89.6% 41.7%

(備考)
生物多様性リスク: 生物多様性リスク評価ツール(IBAT)を用い、70km圏内にKBA・保護地域がある場合に高リスクとした。
水ストレス: WRI Aqueduct 2019を使用し、Baseline Water Stressにおける「High」「Very High」とされた生産拠点を高リスクとした。
なお、割合は、金属種類ごとの調査拠点数(主要産出国における主要鉱山)を分母とした割合。レアメタルについては、主要統計における拠点情報の入手可能性をふまえ、また通信事業における電子部品原料を念頭に、タンタルを選定した。

サステナビリティに関する重要項目のリスクや機会については、サステナビリティ委員会に付議し、取締役会に報告しています。

なお、NTTグループのリスク管理プロセスとして、身近に潜在するリスクの発生を予想・予防し、万一リスクが顕在化した場合でも損失を最小限に抑えること等を目的として、リスクマネジメントの基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を制定し、代表取締役副社長が委員長を務めるビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、リスクマネジメントのPDCAサイクルを構築し運用しており、サステナビリティ関連のリスクの識別、評価、管理に関するプロセスはNTTグループの総合的なリスク管理プロセスに統合されています。

指標と目標

当年度は、事業用設備のスクリーニング調査の概要を記載しつつ、リスクついてはTCFDに追加する形で開示拡充、機会についてはICTを活用したソリューション事例等を開示していく方向で検討を進めています。
開示ができていない指標および目標については、 TNFD勧告で示されているコア・メトリクスや欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)等を踏まえ、今後検討を進めていきます。