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代表取締役社長 島田明の顔写真です。

マネジメントメッセージ

新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ
NTTグループの持株会社であるNTT株式会社代表取締役社長のメッセージをお届けします。

2023年5月に中期経営戦略を発表して以降、着実に進捗しています。2年目の今年は、2027年度の中期経営戦略の目標達成に向けて着実に力をつけていく重要な1年です。既存の取組みを着実に推進していくとともに、新たな取組みにも積極的にチャレンジすることで、新たな価値を創造し、そして、グローバルサステナブルな社会の実現に貢献します。

挑まなければ景色は変わらない。自己革新の先に

2025年7月1日、日本電信電話株式会社は40周年を迎え、「NTT株式会社」に商号を変更しました。新生NTT のスタートにあたり、グローバルなスケールで様々なチャレンジを続けるNTT の想いを伝えるためのキャッチコピーは、私の経営に対する全力の想いを込め、「挑まなければ景色は変わらない」としました。

NTTグループの40年の歴史は、挑むことにあったといっても過言ではありません。

私の社長としての使命は、992社・34万人の国内外の社員とともに、NTT の自己変革をさらに進め、社会のダイナミックな変革に挑み続けることにあります。

それでは、何に挑み、どのように景色を変えるのか。その中核にあるのは、IOWN(アイオン)です。そして、IOWN の行きつく先は、人々の豊かな暮らしと地球の未来への貢献です。

2027年までの中期経営戦略は、折り返しを迎えました。私は、挑戦の手を緩めることはしません。 NTTグループは、サステナビリティを経営の中核に据え、挑み続けます。

274万の株主をはじめとしたステークホルダーの皆さまにおかれましては、ぜひ、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

自己革新の先に~中期経営戦略の先を見据えた成長投資~

中期経営戦略は、確かな成長を皆さまにお示しし、NTTグループが持続的な価値創造を実現するための成長戦略です。

創立から40年間、NTTグループの事業ポートフォリオは、国内の固定通信からモバイル通信、海外を含めたICTビジネスに広がり、環境とともに大きく進化してきました。近年では、テクノロジーの進展や社会構造の変化により、事業環境がかつてないスピードで変化しています。さらに、デジタル化やAIの台頭による電力消費の急増をはじめとして、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めることが、重要な社会課題となっています。

こうした事業環境の中、中期経営戦略は、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために。」を基本的な考え方としています。私たちは、IOWN構想の実現、AIやデータセンター、金融事業などの成長領域への積極的な成長投資を進める一方、商号変更やNTTデータグループの完全子会社化といったグループ一体での自己変革に取り組んでいます。これらは、グループ全体のシナジーを一層高め、お客さまをはじめとしたステークホルダーの期待に応えていくための自己革新の取り組みです。

こうした自己革新の先に、NTTグループの実現したい未来があるのです。

事業ポートフォリオの進化

固定通信 (再掲)フレッツ光等 移動通信 (再掲)スマートライフ事業 システムインテグレーション(データセンター含む) その他

円グラフの中心は当該年度の営業収益の総額。パーセンテージは営業収益の総額に占める割合

1980年代 固定電話サービス中心

諸分野における情報化の急速な進展も踏まえ、NTTとして民営化、固定電話サービスだけでなく、電信、電報、専用など様々なサービスの普及拡大に注力

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1990年代 通信のデジタル化と携帯電話の普及

インターネット利用人口の増加や携帯電話の普及に伴う通信需要の急増により、ネットワークの高速大容量化や携帯電話を含めたサービスの多様化に対応

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2000年代 携帯電話・光アクセスサービスの拡大

ブロードバンド化やユビキタス化の進展等に伴い、携帯電話サービス(iモード等)や光アクセスサービスが拡大する一方で、固定電話サービスが減少

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2010年代 スマートフォンの進展等

スマートフォンが急速に普及。また、クラウド、ビッグデータ等の新技術により市場環境が変化し、国内だけでなくグローバル市場への事業展開を加速

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2020年代 AIの急速な普及・DXの進展

リアルとオンラインが共存した働き方やライフスタイルの定着、AIの急速な普及・活用の拡大やDXの進展等を踏まえ、スマートライフ事業やデータセンタ等の成長領域を拡大

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IOWN にかける想い~人々の豊かな暮らしと地球の未来のために~

私たちは、NTT Group's Coreを新たに制定し、日本電信電話発足当時の「ありたい姿」にある「人間社会の発展と人々の豊かな暮らし」に限定することなく、自然・あらゆる生命を包摂した地球の豊かさに貢献することをNTTグループの使命として「人々の豊かな暮らしと地球の未来に貢献する」と明文化しました。

AIは、今後、人々の豊かな暮らしと地球の未来に、最も貢献するものの一つであると考えています。既にAIは、あらゆる場面で人々の暮らしを支える存在となりつつあります。今後はさらに、病気の早期発見や災害時の被害把握、個別に最適化された教育支援、高齢者の見守りや介護の補助、さらには気候変動への対応など、あらゆる場面で人間の判断や行動を支え、命と暮らしを守る存在となっていくでしょう。

一方で、私たちは、AIが消費する電力の急増という現実に直面しています。数百億のパラメータ(変数)を持つ大規模AIの構築には、1,000MW時を超える電力が必要とされ、これは原子力発電所1基が1時間で発電する量を上回ります。しかも、大規模言語モデル(LLM)は定期的に再学習や更新が必要なため、今のままでは、社会全体の電力需要は想像を超えて膨らんでいくことになります。

私たちが選ぶべき道は、AIによって人々の暮らしを豊かにすることと、そのAIが消費する電力を抑えることを同時に実現することです。こうした相反する価値を同時に実現していくことをめざし、それに正面から取り組んでいるのが、IOWNです。

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IOWN による消費電力の削減、切り札は「光」

IOWNの最大の特徴は、電気信号を光信号に置き換えるということです。電気を光に置き換えるメリットは2つあります。

まず、光が高速であることです。光の速度は、この宇宙の中で最も速く、どんなものも光速を超えることはできません。そうした光の特徴を最大限に活用することで、AIが扱う膨大なデータを高速かつ低遅延で伝送します。

2つめは、電気信号に比べて光が省電力であることです。電気信号を用いて大容量のデータを伝送しようとした場合、熱が発生します。これは、電力の一部が熱に変わってしまい、エネルギーをロスしていることを意味します。このため、サーバーやネットワーク機器などを数多く抱えるデータセンターでは、発生した大量の熱を冷却するための冷房装置にも多くの電力が必要となります。一方、光信号によるデータの伝送や処理では、電気信号の場合と比べて熱はごくわずかしか発生しません。

こうした特徴を最大限に活用するのがIOWNです。

サステナビリティを経営戦略の中核に据え、商用IOWN の実現へ

NTTグループサステナビリティ憲章では、「Self as We」という基本的な理念を掲げています。これは、自分だけでなく、他の幸せも同時実現する、利他的共存の精神です。

NTTグループが、サステナビリティを経営戦略の中核に据える理由は、つまるところ、「Self as We」と考えています。IOWNは、人々の豊かな暮らしと地球の未来に貢献するために取り組んでいます。

先述したように、中期経営戦略は、NTTグループが持続的な価値創造を実現するための成長戦略です。

2023年3月、私たちはIOWN 1.0を商用化しました。2025年5月、私たちは大阪・関西万博で、IOWN 2.0によって消費電力1/8を実現しました。そして、2026年度にはこの万博版からさらに通信容量を2倍に向上させた商用版の提供をめざしています。中期経営戦略の先には、IOWNを軸に更なる成長を描くNTTグループの姿があるのです。

お客さま体験(CX)と従業員体験(EX)の循環による価値創造

「お客さま体験(CX)の高度化」と「従業員体験(EX)の高度化」は、中期経営戦略を進め、中期戦略の先の未来を実現するための根底にある取り組みです。

私が、経営者としてずっと信念に持っているものは、従業員が生き生きと働きがいを持ってチャレンジしていくこと、社員一人ひとりのワクワク感、感動する気持ちや喜び(EX)を大切にするということです。それが、お客さまの満足(CX)につながっていきます。そして、お客さまからの「ありがとう」は、私たちのモチベーションをさらに高め更なる価値創造につながっていきます。

NTTのシンボルマークである「ダイナミックループ」 は、このループを表現したものなのです。CXとEXが何度もループし、未来に向かってつながっていくことが、NTTグループが世の中に対して価値あるものを生み出し、サステナブルな社会をつくる原動力になると考えています。

CX の高度化

NTTグループは中期経営戦略において、CX(お客さま体験)の高度化を柱の一つに掲げています。これは、お客さまの期待を超える体験や感動を提供し、選ばれ続ける存在をめざすという意思の表れです。

NTTグループでは、お客さまの声を迅速に反映し、サービス改善を継続しています。例えば、NTTドコモの「d払い」では、アプリの起動やバーコード表示の高速化など、使いやすさに直結する改善を重ねており、市場調査でも高評価を得ています。2025年6月には、ライフスタイルに応じた最適な料金プラン「ドコモ MAX」を導入し、通信・金融・エンタメなど複数のサービスを組み合わせ、よりパーソナライズされた体験価値を提供しています。

法人向けには、NTT東日本及びNTT西日本の「フレッツ光クロス Biz」により、高速・大容量通信を活用した業務効率化やリモートワーク環境の高度化を支援し、デジタル活用によるCX向上を後押ししています。 また、NTTデータでは、AIとデータ連携によるCX変革を推進しています。顧客接点で得られるデータをもとに、AIエージェントが業務を支援する「LITRON®」シリーズの展開や、生成AIを活用したマーケティング施策の最適化など、CXの"舞台裏"を支える仕組みの高度化を進めています。

さらに、2024年度から主要会社にCCXO(Chief Customer eXperience Officer)を新設し、グループ横断でCX向上を加速しています。IOWNやAIなどの先進技術を活用し、更なる体験価値の創出に挑戦していきます。

EX の高度化

社長就任時より積極的に取り組んできたEXの高度化は、従業員が新たな価値を創出し、お客さまのサービスをつくる原動力であると考えています。そこで、従業員エンゲージメント率を役員報酬の指標とし、また、全管理者の賞与評価に設定しています。

従業員一人ひとりが自律的にキャリアを形成できる環境の整備に向けて、制度に対する理解の促進やキャリアを考える機会の拡充など、各種施策を強化した結果、従業員エンゲージメント調査における肯定的回答率は61%(前年度比+7ポイント)となりました。取り組みの一つとして、自発的な挑戦が可能な人事制度「NTT Group Job Board(公募)」では、利用強化月間を設け、利用者インタビューなどのコンテンツを集中的に配信し、挑戦を後押しする仕組みを一層充実させました。

そのほかにも、「NTTグループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」の策定(2024年7月)や男性育児休業取得促進に向けた「男性育休プロジェクト」への賛同と育児セミナーの開催(2024年9月)、多様な人材確保に向けた「第1回アルムナイイベント」の開催(2024年9月)など、様々な取り組みを実施しており、大変ありがたいことに今年も複数の賞を受賞しました。

EXの高度化に向け、社長就任以来、社員との対話を大切にしています。「常に現場に目を向け、社員一人ひとりに寄り添いたい」という想いから続けている取り組みの一つです。現場の最前線で日々努力を重ねる社員と対話を重ねるなかで、私の考えを伝えると同時に学びを得て、生の声や思いを汲み取っています。こうした声を経営に反映することこそ、私が大切にしてきた姿勢であり、NTTグループの更なる企業価値向上につながると考えています。今後も、従業員がより働きがいを持ち、挑戦できる環境づくりを推進していきます。

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社長就任後、「どこにでも行く」をモットーに、国内にとどまらず北米・南米・アジア・ヨーロッパを含む世界各地で18回の現場訪問を行いました。経営戦略を自らの言葉で伝えると同時に、社員への感謝を率直に表明し、少人数での対話や現場でのデモ体験を通じて社員の声を傾聴することを重視しています。

既存分野の取り組みの着実な推進

既存の通信事業に関する取り組みは、新たな取り組みへのチャレンジを支える重要なものです。

モバイル通信サービスの収入の減少が続いていますが、先述のとおり、スマートライフサービスに銀行サービスも加え、モバイル通信サービスの掛け合わせにより、顧客基盤を強化することが大切です。引き続き、ネットワークの通信品質向上に力を尽くすとともに、日本の通信インフラを担っているという自負を持って、ネットワーク設備を安定的・持続的に維持運営していきます。

他方、地域通信事業は、業績の回復が見られています。引き続き、DXを通じた効率化やコスト競争力の強化による地域通信事業の業績向上に取り組みます。なお、NTT東西では、メタル設備を利用した固定電話について、今後の設備の老朽化・コスト効率の悪化を踏まえ、2035年までをめどに、光やモバイルを活用したサービスへと段階的に移行し、これまでと同様、固定電話をご利用いただける環境を整備していくこととしました。代替サービスへの移行にあたっては、ご利用中のお客さまにご不便をおかけしないよう、十分な周知期間や移行期間を設けて実施していく考えであり、2025年9月に、基本的な方針等について発表しました。

NTT法の見直しについて

2025年5月、改正NTT法が国会で可決・成立しました。本改正は、現在の市場環境や技術革新等への対応として、前向きに評価できる内容と捉えています。

当社は、引き続き研究開発に積極的に取り組むとともに、今後、国内外の様々なパートナーの皆さまと機動的な連携も図りつつ、研究開発の更なる推進と、IOWNやNTT版LLM「tsuzumi」等の社会実装を進め、国内の産業基盤の強化、国際競争力の強化等に貢献していきます。

NTT東日本とNTT西日本は、引き続き、電気通信事業法等の法令・ルールに則り、電気通信市場における公正競争を遵守し、ネットワークや線路敷設基盤を他事業者に対して公平に提供していくとともに、ユニバーサルサービスの提供や、ネットワーク基盤の高度化・強靭化の推進、様々なサービスの提供を通じた地域産業の活性化や地方創生に貢献していきます。

代表取締役社長
社長執行役員
CEO
島田 明

島田明