新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ
NTTグループの持株会社である日本電信電話株式会社代表取締役社長のメッセージをお届けします。
2023年5月に中期経営戦略を発表して以降、着実に進捗しています。2年目の今年は、2027年度の中期経営戦略の目標達成に向けて着実に力をつけていく重要な1年です。既存の取組みを着実に推進していくとともに、新たな取組みにも積極的にチャレンジすることで、新たな価値を創造し、そして、グローバルサステナブルな社会の実現に貢献します。
2022年6月の社長就任時、私は、NTTグループがこれまで取り組んできた変革の路線を引き継ぎ、変化に対応し、時には変化に先んじて自らを変革していくことによって道を切り拓いていくと表明しました。そして、自らダイナミックに変革を行い、お客さまに新たな体験と新たな感動をお届けするNTTグループとなるために、3つの取組みを進めていくこととしました。
1つ目はEX(エンプロイーエクスペリエンス)の高度化を通じてCX(カスタマーエクスペリエンス)を高度化すること、2つ目はテクノロジーで脱炭素化をめざすこと、3つ目は大規模災害時も通信インフラや重要システムをつなぎ続けることです。
この3つの取組みはすべて、NTTグループのミッションである「事業を通じた社会課題の解決」を未来に向けて実行し続けるためのものです。このミッションは、見る人によっては、抽象的で分かりにくいという印象を持つかもしれません。実際にステークホルダーの方からそのようなお言葉をいただいたこともあります。
しかし、情報通信を中心とした私たちNTTグループ967社の事業は多岐に渡り、国境を越え、分野をまたぎ、あらゆる社会課題につながっています。私たちは、情報通信の力でそれらの課題を解決したい。そのような思いが、「事業を通じた社会課題の解決」という短いワードに込められています。
そして、私たちのミッションを達成するために、NTTグループは選ばれ続ける「Your Value Partner」である必要があります。なぜなら、情報通信はかけ算だからです。
「パートナー」×「情報通信」=「社会課題の解決」
情報通信だけでできることは、限られています。私たちの事業が社会課題の解決の原動力になるためには、パートナーの力が必要です。パートナーはお客さまだけではありません。
私たちにとっては、あらゆるステークホルダーがパートナーです。私たちはパートナーに寄り添い、パートナーとともに価値を実現する企業でありたいと考えています。
そのようなNTTグループであり続けるために、私たちは"Connect(つなぐ)"、"Trust(信頼)"、"Integrity(誠実)"の3つを従業員に共通する価値基盤として掲げました。これらは、NTTグループがグローバルベースに議論を重ねて誕生したワードです。
NTTの生い立ちは通信会社です。Connect(つなぐ)には「人とのつながり」という重要な意味も含んでいます。人とのつながりはTrust(信頼)がなければ成立しない。Trust(信頼)を成立させるには、Integrity(誠実)が必要です。
この3つのワードがあってこそ、お客さまもNTTグループと長くお付き合いができる。
このDNAは持続可能な社会の実現に貢献することにつながっていきます。全世界で働くNTTグループ34万人の従業員は、この3つの価値を大切にしながら日々の業務を遂行しています。
これらは、NTTの原点からつながるものであり、これからも根本的に大きく変わることはありません。
しかし、NTTグループの姿は、これまでの「コミュニケーションをつなぐ」会社から「データをつなぐ」会社に大きく変わっていきます。あらゆるデータを活用し、お客さまのビジネスやライフスタイルをよりよいものとするためのサービスを提供するグループとして成長を加速すること、そして、「未来へつなぐ」NTTグループをパートナーの皆さんや社員と一緒に創っていきたいと考えています。
私の社長就任時の「初志」はこのようなものでした。そして、こうした考えのもと、2023年5月に「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために」を基本的な考え方とし、中期経営戦略をスタートさせました。社会の様々な課題を解決して、地球が、人類がサステナブルに生活していける、リソースを使い尽くすのではなく、循環していくような世の中を作っていきたい、そういうメッセージを中期経営戦略の中に込めています。私の社長としての初志を貫徹することは、この中期経営戦略を実現することでもあります。
中期経営戦略は、NTTグループ価値創造プロセスの中核です。具体的に取り組んでいく項目としては大きく3つの柱を掲げています。
1つ目の柱は、「新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」です。NTTグループの総力を結集して、4つの取組みを進めています。すなわち、①IOWNによる新たな価値創造、②データ・ドリブンによる新たな価値創造、③循環型社会の実現、④事業基盤の更なる強靭化です。こうした新しい価値はすべて人から生まれます。
中期経営戦略の2つ目と3つ目の柱は「お客さま体験(CX)の高度化」と「従業員体験(EX)の高度化」です。
これらは1つ目の柱を支える仕組みです。CXとEXは、NTTのシンボルマーク「ダイナミックループ」の2つの環に例えることができます。
CXは大きな環、EXは小さな環です。社員が生き生きと働き甲斐を持ってチャレンジしていくこと、社員一人ひとりのワクワク感、感動する気持ちや喜び(EX)は、お客さまの満足(CX)につながっていきます。そしてお客さまからの『ありがとう』は、私たちのモチベーションをさらに高めてくれます。このように、CXとEXが何度もループし、未来に向かってつながっていくことが、世の中に対して価値あるものを生み出し、サステナブルな社会を作る原動力になると考えています。
こうした価値創造の取組みを進めるには、事業へのインプット、とりわけ成長分野への投資が欠かせません。NTTグループでは、成長分野への投資拡大として、今後5年間で従来の50%増となる約8兆円の投資を行います。既存分野も含めるとトータルで約12兆円の投資となる予定です。
そして、この投資を活用し、未来のためのキャッシュ創出力の拡大を実現します。企業が本業でどれだけキャッシュフローを創出したのかを示す指標であるEBITDA(利払い前、税引前、償却前利益)は、NTTグループでは近年、横ばいが続いています。
中期経営戦略では、成長分野への投資拡大を通じて、2027年度までにEBITDAを20%拡大し、約4兆円をめざします。
そして新たに創出したキャッシュは、ステークホルダーへの分配とともに再び事業へのインプットにも還流させることで、企業としての財務価値の向上、気候変動の緩和、IOWNやAIを中心とした多様な分野での新たな社会的価値の創造、社会インフラを守るためのレジリエンスの強化、そしてこれらを支える人的資本経営の推進、こういった価値を実現していきます。
これら財務・非財務のアウトカムはどれが欠けてもNTTグループの事業が成立しない、切っても切り離せないものです。
また、事業を通じてサステナブル社会の創造に貢献し、その結果として得られた果実を株主の皆さまに受け取っていただくことも重要な経営課題の1つです。新中期経営戦略においても継続的な増配や自己株式取得の機動的な実施といった株主還元の基本的な考え方は変わっていません。
NTTグループの価値創造プロセスは、中期経営戦略を核として持続的な企業価値の向上を実現するサイクルであり、NTTの原点から未来に向かってつながり続けるループです。
NTTグループの中期経営戦略のイメージ動画は、こうした私たちの思いを伝えるために制作しています。ぜひご覧ください。
昨年発表した中期経営戦略は順調に進捗しています。2027年度の中期目標達成に向けて、引き続き、しっかりと取り組んでいきます。
中期経営戦略の柱であるIOWNによる新たな価値創造については、光電融合デバイスの製造会社「NTTイノベーティブデバイス株式会社」を設立し光電融合デバイスの開発を加速、国内外でデータセンター間のAPN接続(海外は実証実験)を実現する等、着実に取組みが進展しています。
また、NTT版生成AI「tsuzumi」の商用サービスを提供開始し、パートナーとの連携強化・拡大を進めていることに加え、AI技術を活用したコンサルティング・開発・提供を目的とする新会社「株式会社NTT AI-CIX(NTT エーアイシックス)」を設立する等、AI・DXソリューションによる新たな価値創造を推進しています。
パーソナルビジネスにおいては、マネックス証券株式会社、オリックス・クレジット株式会社、株式会社インテージホールディングスとの資本業務提携により、金融サービスやマーケティングソリューションの強化を進めています。
データセンター事業に関しては、海外における拡大・高度化が順調に進捗しています。
高い収益性の見込めるデータセンターの自社開発を進めながら、AIやハイパースケーラーの需要を見越した土地への先行投資をするとともに、新たな地域や機能獲得のオプションとしてM&Aも視野に入れて取組みを進めます。
通信事業以外では、環境・エネルギー分野において株式会社グリーンパワーインベストメントを傘下に収め、再生可能エネルギー電源の拡充を進めるとともに、GXソリューションブランド「NTT G×Inno」を立ち上げ、再エネ基盤や技術・ノウハウ等を活用して、お客さまのGXに貢献するソリューション提供を強化していく考えです。
既存の通信事業に関する取組みは、新たな取組みへのチャレンジを支える重要なものです。
光サービスやモバイル通信等、既存事業の足元の業績が弱まっていますが、DXを通じた効率化やコスト競争力の強化による地域通信事業の早期立て直しや、スマートライフサービスともかけ合わせることでモバイル通信事業の基盤を強化し、業績を回復・向上させていくことが重要と考えています。
引き続き、日本の通信インフラを担っているという自負をもって、ネットワーク設備を安定的・持続的に維持運営していきます。
お客さま体験(CX)の高度化に関する取組みを着実に進めています。2023年7月には、モバイル通信サービスの新料金プラン「eximo」、「irumo」の提供を開始しました。また、お客さまにご不便とご心配をおかけしたモバイル通信品質のお客さま体感改善に向けた対策は、2023年12月には計画どおり完了しました。引き続きモバイル通信品質の改善に向けた取組みを行っていきます。
さらに、2024年4月には、dポイントを中心に決済とモバイルのサービスミックスである「ドコモポイ活プラン」の提供を開始しました。
また、Amazonとdポイント及びAmazonプライムに関する協業を開始しました。こうしたCXの高度化に向けた取組みをさらに進めていくため、新たにCCXOをNTTグループ主要各社で任命するとともに、「顧客エンゲージメント指標」を役員の業績連動報酬に反映することとしました。
EXの高度化も欠かせません。2023年4月には専門性を軸とした人事給与制度への見直しを行いました。2023年度の人事では、管理職の約2割(18.8%)、一般社員の約1割(10%)がこれまでを上回るペースで昇格しました。また、2022年7月に導入した「リモートスタンダード」制度の利用者は、約5万人まで拡大するとともに、2024年4月時点で約1,500名が単身赴任を解消しています。
オープンで革新的な企業文化の浸透に向け「サステナビリティ・カンファレンス」、「CXカンファレンス」、「TSUNAGU」カンファレンス、「失敗から学ぶカンファレンス」等のカンファレンスを開催し、様々な分野でチャレンジしている社員の姿を紹介することで、グループ全体のチャレンジ思考を高めています。引き続き、CXとEXの好循環を実現し、新たな価値を創造していきます。
私は、社長就任当初から「常に現場に意識を向け、社員一人ひとりに寄り添いたい」という信念をもっており、「どこにでも行く」をモットーに、社員との対話会を継続的に開催しています。
これは、「CXとEXの好循環による価値創造」の私なりの実践でもあります。国内だけでなく、北米、南米、アジア、ヨーロッパの各地で開催し、分野についても、ソリューション、街づくり、スマート農業、XR(クロスリアリティ)、電子コミック、スマートエネルギー、グリーンエネルギー、ヒューマンリソース、ファイナンス等、幅広い現場の最前線で日々努力を積み重ねている社員と対話を行い、生の声や思いを汲み取っています。
これを経営に反映していくことが、NTTグループの更なる企業価値向上につながると考えています。こうした思いから行っている対話会は、社長就任後からの約2年間で4ヵ国14回となりました。また、週に1回、数名の若手社員との昼食会も継続しています。若手社員の話に傾聴し、時に自分の考えを若手社員に伝えていく中で、自分の考えがクリアになり、アイデアが浮かぶ瞬間があると感じています。今後も続けていきたいことの一つです。
NTTグループ967社・34万人に私の思いを伝えていくのは、並大抵のことではありません。四半期ごとにグループ全体にCEOメッセージを出すとともに、2024年5月には中期経営戦略の振り返りとして35分にわたる社長メッセージを届け、改めて社員の皆さんに考え方や進捗の状況を説明しました。2027年に向け引き続き、社員とともに歩みを進めていきたいと考えています。
2024年4月にNTT法が改正され、研究開発の推進・普及責務の撤廃、外国人役員規制の一部緩和等が行われたことは前向きに受け止めています。また、来年度の法改正に向けて、今後、詳細な法制度の設計も含めて議論が加速していくことを期待しており、当社としても引き続き、議論に協力していく考えです。
多くのステークホルダーの皆さまのご期待に応えるためにも、サステナビリティを経営の中核に据え、よりよい社会の実現に貢献し続けていくことが我々の使命です。今後も、新たな価値創造により、グローバルサステナブル社会を支えるNTTグループとなれるよう、挑戦を続けていきます。皆さまには一層のご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。
代表取締役社長
社長執行役員
島田 明
サステナビリティ
NTTとともに未来を考えるWEBメディアです。