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2023年5月12日

社長記者会見

2022年度決算・新中期経営戦略について

島田代表取締役社長
(同席)
中山執行役員財務部門長
谷山執行役員経営企画部門長

社長記者会見の写真

(島田社長)

それでは、まず2022年度の決算および2023年度の業績予想を説明します。4ページをご覧ください。
 2022年度の連結決算は、対前年増収、営業利益、当期利益とも増益となりました。いずれも過去最高を更新しました。
 営業収益は、グローバル・ソリューション事業セグメントの増収およびエネットにおける電気料収入の増などにより、対前年9,797億円増収の13兆1,362億円となりました。この増収のうち、為替の影響は約2,800億円です。
 営業利益は、電気代の高騰影響を、増収に伴う増益効果およびコスト削減などによりましてカバーし、対前年604億円増益の1兆8,290億円となりました。
 当期利益は、営業利益の増益などにより、対前年320億円増益の1兆2,131億円です。海外営業利益率は、増収に伴う利益増に加えまして、構造改革を通じたコスト削減などにより、対前年0.9ポイント改善の7.2%です。中期財務目標の7%を1年前倒しで達成したことになります。

続いて5ページをご覧ください。セグメント別の営業収益、営業利益については、まず総合ICT事業セグメントですが、コンシューマ通信事業における値下げの影響などによる減益要素はあるものの、法人事業、スマートライフ事業における増収およびコスト削減によりリカバーをしまして、対前年増収増益です。
 地域通信セグメントです。前年度における一過性のコスト増要因がなくなる影響はありますが、想定を上回る電気代の高騰影響に加え、NTT西日本において8月の大規模故障に伴い、コスト削減施策が遅れたことによりまして、対前年減収減益となっています。
 グローバル・ソリューション事業セグメントです。旺盛なデジタル化需要の取り込み、それからNTTリミテッドにおける高付加価値サービスの拡大などによる増収に加えて、NTTリミテッドにおける構造改革を通じたコスト削減がありまして、対前年増収増益となっています。
 その他、不動産、エネルギーなどの事業です。エネットにおける燃料価格の高騰などを反映した電気料収入の増により、対前年増収増益となっています。

次に、2023年度の業績予想について説明します。7ページをご覧ください。2023年度業績予想については、営業収益は対前年減収、営業利益、当期利益は対前年増益を予想しています。営業利益、当期利益は引き続き過去最高をめざし、中期財務目標であるEPS370円達成に向けて取り組んでまいりたいと思っています。営業収益は、為替の影響、それからエネットにおける電気料収入減によりまして対前年減収でありますが、これらの影響を除いた主要各セグメントは引き続き増収をめざす計画です。
 営業利益は、電気代の高騰影響が不透明でありますが、NTTドコモをはじめとするグループ各社の増益により、対前年1,210億円の増益の計画としています。当期利益は、支払利息の増などはありますが、営業利益の増益により、対前年419億円の増益を計画しています。
 続いて8ページをご覧ください。セグメント別の営業収益、営業利益です。総合ICT事業セグメントですが、法人事業やスマートライフ事業の成長に加え、コンシューマ通信事業における中大容量プランユーザーの拡大などによる減収幅の縮小や、コスト効率化によりシナジー効果を具現化し、NTTドコモトータルでは対前年増収増益の計画になっています。
 地域通信セグメントは、NTT西日本において遅れが生じていましたコスト効率化施策の実施に加えて、東西ともに成長分野の拡大などによる増収や、さらなるコスト削減により、対前年増収増益を計画しています。
 グローバル・ソリューション事業セグメントです。為替影響による減収はあるものの、引き続きデジタル化需要の取り込みなどによる増収に加えて、構造改革を通じたコスト削減などにより、対前年増収増益の計画としています。
 その他のセグメントですけれども、エネットにおける販売量の適正化に伴う電気料収入減などにより、対前年減収。減収に伴う減益はあるものの、NTTアーバンソリューションズにおける不動産ビジネスの増益などによりまして、対前年増益です。
 続いて9ページをご覧ください。現行の中期財務目標の進捗については、おおむね順調に推移しています。EPSは2022年度、348円となり、計画の340円を上回る着地となりました。現中期財務目標である2023年度370円の達成をめざしてまいりたいと思っています。この後、説明します新しい中期経営戦略において、新たに財務目標を設定する考えであり、EPS以外の現行の中期財務目標については、新たな財務目標に切り替えていきたいと思っています。
 続いて10ページをご覧ください。現中期経営戦略の進捗について、2月からの取り組みの進捗状況については、ご覧のとおりです。

次に、中期経営戦略について説明します。副題としまして、「New value creation&Sustainability 2027 powered by IOWN」というタイトルをつけています。今回の中期経営戦略については、2023年度から2027年度までの5カ年計画としています。新中期経営戦略の資料の1ページをご覧ください。新しい中期経営戦略の基本的な考え方は、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために」です。
 続いて2ページをご覧ください。そのために成長分野への投資を拡大します。今後5年間で、成長分野に従来の50%増となる約8兆円の投資を行います。なお、既存分野を合わせると、5年間で12兆円の投資となります。
 3ページをご覧ください。さらに未来のために、キャッシュ創出力を拡大します。これまで横ばいだったEBITDAについて、先ほど説明しました成長分野への投資拡大などを通じまして、2027年度でプラス20%増加となります約4兆円をめざしてまいりたいと考えています。
 4ページをご覧ください。次に、戦略の実現に向けた取り組みの柱について説明します。大きく3つの柱を掲げています。1つ目の柱は、「新たな価値創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」です。2つ目と3つ目の柱は、1つ目の柱を支えるための仕組みであり、2つ目の柱が、「お客さま体験(CX)の高度化」、3つ目の柱が「従業員体験(EX)の高度化」となります。これらを構成する、9つの取り組みにつきましてはこの後説明します。
 5ページをご覧ください。これから1つ目の柱、「新たな価値創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」を説明します。
 6ページをご覧ください。1つ目の取り組みです。「IOWNによる新たな価値創造、構想から実現へ」です。AIの活用拡大などに伴う消費電力増大の解決策として低消費電力を実現する光電融合デバイスの早期事業化に向けて、NTTイノベーティブデバイス株式会社を2023年6月に設立します。出資金300億円でスタートし、順次増資を検討してまいりたいと思っています。また、6Gなどを含むIOWN研究開発実用化の加速に向けて、IOWN研究開発全体で、2023年度は約1,000億円の資金を投下します。それ以降も継続的に資金を投下し、サーバーやデジタルツインコンピューティングなどの実用化も加速してまいりたいと考えています。
 7ページをご覧ください。2つ目の取り組みは「データ・ドリブンによる新たな価値創造」です。個人のお客さまを中心としたパーソナルビジネスの強化に向け、NTTドコモのスマートライフ事業の強化を図り、成長分野へ、今後5年間で約1兆円以上の積極的投資を実施します。金融やヘルスケア、メディカルといったさまざまな分野のサービスの拡充、高度化に取り組むとともに、そうしたサービスを通じて得たさまざまなデータを分析、解析することで、よりパーソナライズされた最適なサービスの提供につなげてまいりたいと考えています。
 8ページをご覧ください。次に「社会産業のDX、データ利活用の強化について」です。企業などのお客さまに対して、AI、ロボット、IOWN、デジタルツイン、それからセキュリティーなどといった技術を活用して、ソリューションサービス、それからプラットフォームサービスをグローバルで展開し、生活や社会を支える産業へ変革してまいります。この分野には、今後5年間で約3兆円以上の投資を実施します。
 9ページをご覧ください。続いて「データ・ドリブン社会に重要なプラットフォームであるデータセンターの拡張・高度化」です。現在、世界第3位のNTTグループのデータセンター基盤をさらに拡張するとともに、IOWN技術の導入により高度化を推進してまいります。それに向けて、今後5年間で約1.5兆円以上の投資を実施し、データセンターの容量を現状の1,100メガワットから倍増してまいります。
 10ページをご覧ください。3つ目の取り組みは「循環型社会の実現」です。グリーンエネルギーとICTの組み合わせにより実現するグリーンソリューションを推進し、今後5年間で約1兆円の投資を実施します。また、再生可能エネルギーの発電事業を拡大するとともに、蓄電池やEMSなどを利用した地産地消型で最適化、効率化された電力の安定供給を実現してまいりたいと考えています。
 11ページをご覧ください。次に「循環型ビジネスの創造」です。再生可能エネルギーに加え、さまざまな産業間で廃棄物の再利用などを進め、資源を循環させることで持続可能な社会を実現してまいります。また、IOWN、5G、IoT、AIロボットの活用により、1次産業の効率化、付加価値化を進め、産業振興、地域創生に貢献してまいります。
 12ページをご覧ください。次に、「ネットゼロに向けて」です。2040年度に向けて、NTT Green Innovation toward 2040について、スコープ1、2の取り組みに加えて、スコープ3への拡大をめざしてまいります。
 13ページをご覧ください。4つ目の取り組みです。「事業基盤のさらなる強靱化」です。先般のNTT東日本・NTT西日本などで発生しました通信故障により皆さまに大変ご迷惑をおかけし、改めておわびを申し上げたいと思います。これまでの通信故障などの反省や教訓を生かし、大規模故障やサイバー攻撃などの発生を踏まえた強靱なネットワーク、システムを実現し、社会インフラを強化してまいります。また、激甚化する自然災害などへの対策を強化してまいります。その実現に向け、2025年度までに1,600億円規模の投資を実施してまいります。
 14ページをご覧ください。これからは2つ目の柱、「お客さま体験(CX)の高度化」を説明します。
 15ページをご覧ください。5つ目の取り組みは、「研究開発とマーケティングの融合」です。研究開発推進機能とマーケティング機能、アライアンス機能を融合、強化し、マーケティング機能を含めたR&D組織として、研究開発マーケティング本部を持ち株会社に新設します。プロダクトアウト型の研究開発の強化に加え、グローバルでお客さまやパートナーとコラボレートしながら、研究開発からプロダクト提供までを行うとともに、さまざまなパートナーとのアライアンスを推進してまいります。
 16ページをご覧ください。6つ目の取り組みは、「CXを重視したサービスの強化」です。あらゆるステークホルダーをお客さまやパートナーとして捉え、お客さま体験ファーストを推進してまいります。カスタマージャーニーに寄り添いながら、アジャイルでサービスを常に改善、アップデートしていくことで、お客さまの期待を超える新たな体験や感動を提供し、選ばれ続けるNTTグループをめざしてまいりたいと考えています。
 17ページをご覧ください。3つ目の柱、「従業員体験(EX)の高度化」を説明します。
 18ページをご覧ください。7つ目の取り組みです。「オープンで革新的な企業文化への改革」です。お客さま重視を基本に、オープン、コラボレーション、トライ&エラーを重視する文化の浸透を進めるとともに、ダイバーシティー&インクルージョンを引き続き強化します。
 続いて、19ページをご覧ください。8つ目の取り組みは、「自律的なキャリア形成の支援強化」です。社員の自律的なキャリア形成を支援し、事業の成長を支える人的投資を拡大します。今年4月に導入した専門性を軸とした人事制度に基づき、18分野の専門性を高めるための社外資格取得支援や研修メニューの充実、社員のキャリアデザインのアドバイスを行うキャリアコンサルティング機能の充実などを図ってまいります。また、出産、育児、介護などのライフイベントのサポートを含めたトータルなキャリア形成を支援してまいります。
 20ページをご覧ください。最後に、9つ目の取り組みです。「全世界の従業員の家族を含めたサポートプログラムの強化・充実」です。従業員が死亡した場合に、子女の大学卒業までの教育費の一部をサポートする制度を拡充します。国内では、1988年から基金を用いて、社員に不幸があった場合の子女への教育費をサポートしてまいりました。海外の当社グループで働く約15万人の社員に対しても、国内同様のサポート制度導入に向け、来年度当初からの適用をめざして検討を進めてまいりたいと考えています。
 21ページをご覧ください。ここからは、新たな中期財務目標について説明します。
 22ページをご覧ください。中期財務目標はご覧のとおりです。先ほど説明したとおり、対2022年度でEBITDAを20%増加させるということを目標設定とします。そのドライバーとなる成長分野においては、対2022年度でEBITDAをプラス40%増加させることに加え、成長分野の中でも注力すべきグローバル事業には、個別に海外営業利益率、2025年度10%を目標設定します。また、既存分野においても、継続的な利益創出を期待し、対2022年度でEBITDAの10%増加を目標設定するとともに、資本効率性の向上に向けて、ROIC9%の目標を設定します。
 加えてサステナビリティ関連指標として、これまで打ち出してきたサステナビリティ憲章や新たな環境エネルギービジョンなどを踏まえ、女性新任管理者登用率、温室効果ガス排出量、従業員エンゲージメント率の3つを目標設定します。
 23ページをご覧ください。成長のためのキャッシュ創出力の強化に向けては、ご覧のとおりです。
 続いて24ページをご覧ください。さらなる成長の実現に向けた投資規模の拡大により、資金需要は高まりますが、EBITDAから見た有利子負債水準が2倍程度で維持・低下できるよう、資金効率性にも配慮してまいりたいと考えています。
 25ページをお願いします。株主還元の基本的な考え方につきましては、引き続き継続的な増配の実施を基本的な考え方とするとともに、自己株式の取得を機動的に実施し、資本効率の向上を図ってまいります。
 新中期経営戦略の説明は以上です。

最後に株主還元、株式分割ならびに組織見直しについて説明します。株主還元と株式分割について説明します。2023年度の配当予想については、対前年5円増の1株当たり年間125円とすることを本日の取締役会で決議しました。これにより2011年度から13期連続の増配を予定しています。
 また、本日の取締役会では株式分割も決議しました。7月1日を効力発生日として25分割し、投資単位を大幅に引き下げ、当社株式により投資しやすい環境を実現し、NTTグループの持続的な成長に共感いただける投資家層を幅広い世代で拡大してまいりたいと考えています。
 持株会社においての組織見直しを実施します。まず先ほどの新中期経営戦略の中でも説明しましたが、研究開発マーケティング本部の設置です。研究開発マーケティング本部を設置し、その配下にマーケティング部門、アライアンス部門を設置するとともに、研究企画部門を移管します。また、これに伴い新ビジネス推進室は廃止します。
 これとは別に、グローバルでのマーケティングやプロモーションなどの強化に向けて広報室を経営企画部門から独立させ、社長直轄組織である広報部門として設置します。また、グローバルでのリーガル/リスク対応などの強化に向け、総務部門内に法務室を設置します。加えてサステナビリティ憲章の取り組み加速に向け、サステナビリティ推進室を経営企画部門内に設置します。
 私からの説明は以上です。

質疑応答

  • 株式25分割の理由について教えて欲しい。

    若い方々に投資をしてもらいたいということです。来年の1月から新NISAの制度が開始され、政府も貯蓄から投資へという流れを促進させていいます。
    そういう中で最近小学生が将来の投資教育の一環で株式を買う話がありますが、NTTはおかげさまでこのところ株価も上がって4,000円を超えており、40万円が単位になるのでなかなか買いづらい。それを25分割することにより160円程度になり、100単位で買っても16,000円程度になるということで、アマゾンやグーグルと同程度の規模で株式投資ができるようになります。さまざまな世代の幅広い方から投資いただけるような環境整備をするという観点で実施を決定しました。

  • 財務指標の見直しの中に従業員エンゲージメントが入っているが、指標に入れた理由を教えて欲しい。

    従業員エンゲージメントは去年の実績で国内の主要会社で57%です。海外の方は、かなりエンゲージメント率が高いのですが、雇用の形などの違いがあると思います。
    就任したときから申し上げていますように従業員がお客様のサービスを作っていく原動力ですので、エンゲージメント率、働く満足度、わくわく感などが重要だと思っており、エンゲージメント率を上げることによって新しいサービスを作っていく、新しいプロダクトを作っていく環境を作っていきたいと思い、今回指標の中に入れました。
    指標は前年よりも高くするということですので、今年は57%をまず上回っていくということになります。

  • 電気代高騰影響について、2022年度ではどの程度だったか、2023年度はどの程度織り込んでいるのか教えて欲しい。

    電気代の高騰は年間通して600億円、前年に比べて4割程度上がっています。NTTドコモは、電気代の高騰をのみ込んで利益アップしたものの、NTT西日本は故障も起こしたこともあり、コスト削減が遅れ電気代の高騰分をのみ込めなくなった状況です。
    今の市場状況を見ると、同程度でキープしさらなる高騰にはならないという予想に立ち、前年度に上昇した分だけ今回の業績見込みに織り込んでいます。したがってさらに上がっていくと再度吸収しなければならないので、厳しい状況にはなると思います。できれば今の水準で推移してもらいたいと期待してます。

  • NTTイノベーティブデバイス株式会社について、出資構成や売り上げ規模の目標、NTTが自前でデバイスを作る意味を教えて欲しい。

    100%の単独子会社です。売り上げの規模は2029年度で2,000億円程度を考えています。数字はデバイスだけの売り上げを想定して考えておりますが、デバイス販売以外の分野にも事業領域を広げていきたいと思っています。
    NTTが自前で持つ意味は、NTTの研究所が光電融合デバイスを世界で初めて開発したところから話が始まっているので、NTTが作り上げていきたいという希望があります。
    ただ、最終的に大量生産する時に、自前で作っていくのか、それともファブレスのような形にするのかというのは、まだ決めているわけではありません。これからの検討だと思っています。

  • NTTグループの中では、ハードウエアの製造機能を持っている会社としてNTTエレクトロニクスがあるが、今回NTTエレクトロニクスで生産機能を増強するという判断ではなく、新会社を作った背景、NTTエレクトロニクスが今後IOWN構想で果たす役割について教えて欲しい。

    NTTエレクトロニクスは、NTTイノベーティブデバイスに統合してまいりたいと思っています。
    メインのプロダクトを光電融合デバイスに焦点を当てて作っていくという、我々の心意気を示したいということで新しい会社名と新しい器を作った次第です。DSPなどの部材をNTTエレクトロニクスが作っているので、機能を一緒にした方が効率が良いということで統合する所存です。統合は2023年8月頃に実施したいと思っています。

  • 研究開発マーケティング本部の設置について、新ビジネス推進室はこれまでグループ連携でB2B2Xの過程を探るような役割を担ってきたという理解でいるが、今回、研究開発マーケティング本部の中で再編する狙いを教えて欲しい。

    研究開発マーケティング本部設置の1つのきっかけは、海外から研究所に対してさまざまなリクエストがあり、グローバルのお客様との接点を作っていく必要があったということです。さらにカスタマージャーニーに寄り添って、サービスをブラッシュアップしていくためには一定のKPIを作ってチェックする必要があるので、その機能もマーケティング部門の中に置きます。去年から新ビジネス推進室の中で進めてきましたが、1つの組織として、マーケティング部門として確立させました。
    アライアンス部門は、基本的には今の新ビジネス推進室がやってきた外部のパートナーとの接点を、従来と同じように対応していき、さらにレベルアップを図るために人員なども強化してまいりたいという趣旨です。

  • 世界各国でAIが話題だが、NTTグループとしての大規模言語モデルの開発や、海外の会社がやっているAIの活用などについての考えについて教えて欲しい。

    既にNTTはお客さまに対してAIサービスを提供しています。COTOHAという商品名でやっていますが、金融など特定分野に特化して、軽量で高性能だと評価いただいているところです。言語処理だけではなく、画像処理や音声処理も含めたサービスで、ブラッシュアップしていく過程において、研究所では大規模言語モデルのLLMについての研究もやってきています。
    今話題になっている大規模言語モデルは、GPT3だとパラメータが大体1,750億程度あって、8GPU程度使用しています。非常に大規模で電力消費が大きいので、NTTとしてはもう少しLLMの言語モデルを小型化し、カスタマイズ性能を少し向上させ、加えて映像や音声、画像などマルチモーダルなものも対応できる形で世の中に出していきたいと思っています。研究所がどれだけ頑張れるかですが、今年度内に使いやすい、軽量で効率性のいいようなものを出していければと思っています。もちろんこれは法人向けになろうと思います。
    オープンAIを使っているかという観点では、お客さまからのご要望に基づき、海外ではマイクロソフトのAzureのオープンAIをサービスとして提供しています。国内では未提供で、チャットGPTをトライアルしている段階です。ただ、もちろんオープンサービスにお客さまや社内の厳秘なデータを入れるわけにはいかないので、あくまでもクローズドなものを利用していくということを社内の基本的な方針にしています。

  • ソフトバンク宮川社長は、GPT4を活用して、色々なものを組み込んでから応用をやっていく趣旨のことを言っていたが、島田社長の考えはあるか教えて欲しい。

    Azureに実装されているクローズドなサービスをお客さまのソリューションの中に組み込んでいくというのは十分ありえますし、その応用も十分考えられます。今、グループの中で色々検討が進んでいると思っています。

  • IOWNの目標に対する進捗について教えて欲しい。

    今回、NTTイノベーティブデバイスを新設したのは、2025年をめざしているIOWN2.0で、ボード間をつなぐ光電融合デバイスを出していくためなので着実に進捗していると思っています。2025年には光電融合デバイスを出荷できるような準備をしっかり整えてまいりたいと思いますし、2029年頃をめざしているIOWN3.0に向けてしっかり歩んでまいりたいと思っています。光半導体に向けて着実に一歩一歩前進させていきたいと思っています。

  • 人件費や電気代の高騰により物価高になっているが、影響と今後の対応について教えて欲しい。

    海外の事業から申し上げますと、データセンターなどの電気代は、お客さまに上がっている分をほぼご負担いただいています。また人件費の高騰については、システムインテグレーションであればお客さまに負担していただくようなビジネス展開を原則としています。
    国内は、通信サービスがメインのビジネスで、電気代が高騰したからといって料金値上げをするかというとご理解をいただけるかどうかという観点もありますので、頑張ってコスト削減で吸収してきたわけです。
    今年度は、高騰について同水準で推移すればありがたいと思っていますが、さらに上がってくるような事態になれば、色々と考えなければならないかもしれません。
    法人のお客さまに対してはご理解いただき価格の中に織り込むということが基本だと思いますが、マス向けのサービスについてどうしていくのかというのは、事業の効率化をどこまでやっていけるかを踏まえつつ、できれば使いやすい料金で、いいサービスを提供し続ける気持ちで、頑張ってまいりたいと思っています。

  • 長らく営業利益の半分以上はNTTドコモが稼いでいるが、構成が今後5年間で変わってくる可能性があるのか教えて欲しい。

    NTTグループの利益の6割程度をNTTドコモグループで稼いでいます。ただ、グローバルな事業もおかげさまで相当伸びてきていますので、NTTデータグループの成長にも期待したいと思いますし、新たに投資をしたものがリターンを生んでキャッシュを生んでいくという、そういう好循環になるような投資をしたいと思います。
    新しい分野でEBITDAを増やしていくというのは、まさに新しい投資をして、そこから生まれるリターンを蓄積していくということの積み重ねだと思っています。

  • 株式分割に関連して、現在のNTTの個人投資家層について教えて欲しい。また今後どのような構成になっていって欲しいのか、本当に若い人たちが株を持つようなことを理想としているのか教えて欲しい。

    現在のNTTの個人投資家は全体だと大体90万人程度いらっしゃいます。サンプル調査ではそのうち過半が70代以上で、8割が60代以上の方が占めている状況です。
    一方で、ミニ株の投資というのも増えていて、ご高齢の方の投資家層だけではなく若い方々にも投資していただきたいと考えており、米国株と同じく安く購入できるような環境整備をしていく必要もあるのではないとかということを含め、単価を下げていく必要があると判断し25分割にしました。

  • 今後も大規模な組織再編がありえるか教えて欲しい。

    今は大規模な組織再編をする必要性は感じていませんが世の中の変化は激しいので、再編が必要になればやりたいと思います。ただ再編をするというのは内部でかなりの力が必要になってきますので、澤田が社長をしていた時代に進めた今の組織体制をいったん落ちつけて、その組織から生み出す新しい成長をまずは引き出していきたいと思っています。

  • NTTイノベーティブデバイスについて、外部からの出資の可能性があるのか教えて欲しい。

    当面、他社からの出資を受けることは考えていません。新会社の下にジョイントベンチャー作ってもいいですし形は色々あると思いますが、しばらくの間は、100%子会社にしている方が私どもの意思決定でどういう形にも変化させていくことができますのでこの形態で、と考えています。

  • 今後5年で、成長分野に8兆円程度投資ということだが、このうちIOWN関係がどの程度のボリュームを占めるのか教えて欲しい。

    中期経営戦略では、研究開発は仮に1,000億円が5年だと5,000億円程度ですが、光電融合デバイスの大量生産を始めるタイミングに移ればさらなる投資をしなければいけないので、研究開発5,000億円プラスアルファの規模感になっていくと思います。
    ただ、IOWNの本格的な投資が必要になってくるのというのはIOWN3.0以降、設備ラインをしっかり作っていく頃にかなりの規模が必要になってくることを想定しています。この新中期経営戦略の次のフェーズでも、かなりの投資が必要になってくる可能性が高いと思います。必要に応じて前倒ししていく時はしっかりIOWNのデバイス、もしくはデバイスを使った機器類の製造投資をしてまいりたいと思います。

  • AIに関して、今の日本の置かれている状況、規制環境と競争力などを含めて、どのように見ているのか、またNTTグループ内それぞれにAI人材がいると思うが、集約の必要性などについて教えて欲しい。

    AIのサービス自体は、さまざまなサービスに組み込んでいます。NTTドコモでも必要ですし、NTTコミュニケーションズは法人向けのお客さまに対してのAIサービスを出しています。それぞれの事業会社において異なる分野でAIのエンジニアが必要だという実態があります。
    もちろん大規模言語モデルを研究している研究所にはハイレベルの研究者がいることは事実で、世界の注目を浴びているLLMのアルゴリズムのAIについて少し違う特長のものを作りたいと思っています。できれば今年度中に何らかの新しい商品が出せればと思っています。

  • NTTイノベーティブデバイスについて半導体を自前で作るのか、あるいは外国や日本の半導体メーカーと協業するのか教えて欲しい。

    NTTイノベーティブデバイスが作るのは、まずは半導体の部品です。部品のところから接続を光化していくというところから始めていきますので、光半導体とは別物です。こうしてデバイスを高めていくことを通じて、最終的に光半導体に結びついていきます。着実に光半導体に向けてステップを踏んでいくということになりますが、どんどん小型化をさせていく必要があり、当面の間はまだ道のりが長いので、この会社で半導体を作るかどうかというのは、もう少し先になってから考えたいと思います。

NTTグループ中期経営戦略

New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN

2023年5月、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために。」を基本的な考え方とした中期経営戦略を発表しました。