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2024年2月 8日
島田代表取締役社長
(同席)
中村執行役員財務部門長
服部執行役員経営企画部門長
決算のご説明の前に、令和6年能登半島地震により被災されました皆様、ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。被災地の一日も早い復旧復興を心よりお祈り申し上げます。NTTグループとしても、被災地の復旧復興に向け、引き続き力を尽くしてまいります。
それでは、2023年度第3四半期のご説明を申し上げます。4ページをご覧ください。第3四半期連結決算の状況は対前年増収減益です。営業収益は第3四半期として過去最高を更新しました。営業利益、当期利益は、ともに、第3四半期単独では対前年増益に転じています。
営業収益は、エネットにおいて電力調達価格高騰を踏まえ、電力調達量を抑制したことなどに伴う電気料収入減が約1,900億円あるものの、総合ICT事業セグメント、グローバル・ソリューション事業セグメントの増収などにより、対前年1,443億円増収の9兆7,169億円です。なお、この増収のうち為替の影響は約1,200億円です。
営業利益は、地域通信事業セグメントにおいて、コロナ需要の一巡などを経まして、光回線の純増や音声トラフィックが厳しい状況であることに加え、資産のスリム化に向けた不要資産撤去コストの増などにより、第3四半期時点では対前年346億円減益の1兆4,862億円です。今後、セキュリティ対策費用、今般の災害復旧費用など安心安全なサービスの提供に向けて必要となるコストの拡大が見込まれていますが、ノンコア資産のスリム化などを通じた増益を第4四半期に見込んでおり、コスト削減施策の確実な実施などと合わせ、引き続き年間で増益となるNTT連結計画の達成を目指していきたいと考えています。
当期利益は、営業利益の減や支払利息の増などにより対前年214億円減益の1兆111億円です。EBITDAは営業利益の減益などにより、対前年162億円減の2兆5,717億円です。
続いて5ページをご覧ください。セグメント別の収益利益については、総合ICTセグメントにつきましては、法人事業、スマートライフ事業、コンシューマ通信事業、いずれも対前年増収です。前年度の特殊要因の反動などによりスマートライフ事業の減はあるものの、収入増に伴う法人事業の増、コスト効率化などによりますコンシューマ通信事業の増によって対前年増益です。地域通信事業セグメントは、固定音声関連収入などの減収に加え、先ほどご説明したノンコア資産のスリム化などを通じた増益を第4四半期に多く見込んでいます。第3四半期時点では、対前年減収減益で、今後災害復旧費用などの発生が見込まれ、地域通信事業セグメントの計画達成は厳しい状況ですが、ノンコア資産のスリム化など確実なコスト削減などに取り組むことで最大限カバーしてまいります。
グローバル・ソリューション事業セグメントです。日本における公共金融法人分野の増収に加え、為替影響などにより、対前年増収です。構造改革効果や増収に伴う増益などにより対前年増益となっています。
その他セグメントです。エネットにおいて電力調達価格高騰を踏まえ、電力調達量を抑制したことに伴い電気料収入が減になったことなどにより、対前年減収となっています。利益についても、エネットにおいて前年度は電力調達価格が低く利益が出ていた一方、今年度は電力調達価格が上昇した影響などにより、対前年減益となっています。
続いて6ページをご覧ください。改めて2023年度の営業利益の見通しについて申し上げます。第1四半期、第2四半期は、主に地域通信事業セグメントにおいて、ノンコア資産のスリム化に向けたコストなどが先行しており、対前年減益となっていましたが、コスト削減効果などにより四半期ごとに利益は着実に改善してきており、第3四半期単独では対前年増益に転じたところです。第4四半期は、成長分野の拡大やさらなるコスト削減などによりベース利益を拡大していくとともに、ノンコア資産のスリム化などによる増益を見込んでおり、災害復旧費用など厳しい環境下ですが、連結利益目標の達成を目指してまいります。
7ページをご覧ください。次に、トピックスについて6つほどご説明いたします。
8ページをご覧ください。まず初めに、IOWN オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network、以下、APN)による分散型データセンターの実現についてご説明いたします。本年度内に、NTTグループの主要なデータセンター間をAPNで接続をいたします。さらに、2024年度から地域のデータセンターへも拡大し分散型のデータセンターを構築してまいりたいと考えています。APNの特性を生かし、離れたデータセンター間でもリアルタイムで連携することで、あたかも1つのデータセンターのように利用することが可能となります。
9ページをご覧ください。これは既に発表しておりますが、東京電力ホールディングス様との新たな取り組みについてご説明します。東京電力パワーグリッド様と新会社の設立に合意いたしました。千葉市印西白井エリアにおいてデータセンターを開発、2026年度下期よりサービス提供開始します。また、東京電力ホールディングス様と、群馬県嬬恋村において蓄電所事業を実施するための合同会社を2023年11月に設立いたしました。2025年の事業開始を目指しております。今後とも、両者が有する電力および通信のアセットやノウハウを活用し、新たな価値の創造と持続可能な社会を目指してまいります。
10ページをご覧ください。次にグリーントランスフォーメーション分野の新たな取り組みについてご説明いたします。GX分野の取り組みの強化に向けて、新たなソリューションブランド、NTTG×lnnoを立ち上げました。また、再エネ発電事業者のGXに向けたグリーン発電事業統合プラットフォームの提供、それから再エネ電気供給を支えるエネルギー流通プラットフォームの構築を開始いたしました。加えてCO2などの排出量を可視化するプラットフォームについて、サプライヤー1,000社程度まで導入を進め、Scope3まで含めたカーボンニュートラルの実現を目指してまいります。
続いて、11ページをご覧ください。次に、能登半島地震における被災地への支援状況についてご説明いたします。通信復旧に加え、指定避難所以外も含め約300カ所へ直接訪問し、携帯電話やドコモの衛星携帯電話・通信であるワイドスターⅡ、Starlinkを提供しています。また、災害時用公衆電話として、事前設置型の171カ所に加え、今回被災してご要望いただいた23カ所に事後設置型のポータブル衛星を追加設置いたしました。さらに長期化する避難生活の心と体のケアのため、2次避難所を含め映像サービス、オンライン再診を提供しています。今後は自治体様などと連携しまして被災、避難された方の通信に関するお困り事を受ける出張窓口の設置などもしてまいります。
続いて12ページをご覧ください。株主数の状況についてです。株式分割後の12月末の株主数をご報告いたします。グラフの右側が12月末の株主数ですが、従来微増傾向だった株主数は株式分割発表後、継続して増加を続け3月末比で1.7倍となっています。40代以下の層の割合が約4倍になるなど年齢構成が多様化しております。
13ページをご覧ください。中期経営戦略について11月以降の取り組みの進捗状況はご覧のとおりです。
私の説明は以上です。
能登半島地震の被害額について規模感を教えて欲しい。
まず、おおむね面積ベースでいくと97%程度まで復旧しました。モバイル回線ファーストで復旧活動を進めておりますが道路にアクセスできない影響で、エリア影響が残る基地局通信局数で15局程度は回復していない状況です。また固定回線の回復できていない通信局数は2局です。
まだアクセスできないエリアがある中ですので正確にどれぐらいの費用がかかるかは明らかでありませんが、過去の災害復旧を参考にすると、おおよそ100億円程度の費用になるかと思っています。復旧費用の割合は3分の2程度が固定回線になるかと思います。ただ固定回線はこれから避難された方々がご自宅に戻られ、家を建て替えるなどしてからの復旧ということになってきますので、詳細はまだわからないです。
先日、KDDIがローソンにTOBをするという発表があったが、NTTドコモも当該株を2%保有しているところ、今後の保有方針と、今後の店頭でのd払いやdポイントなどのサービスについての今後の方針について教えて欲しい。
NTTドコモは2%ほどローソン様の株を保有しておりますがまだその扱いについては決めておりませんので、今の段階での回答はご容赦ください。決済サービスは、KDDI髙橋社長も自社サービスのみを扱うようなことはしない、といったことを会見で仰っていましたので、NTTドコモのサービスも継続していただけると思っています。
我々としてはしっかりお客様の決済サービスをなるべく広く、幅広いところで使っていただけるように努力してまいりたいと思います。現時点で具体的に話をしているわけではありません。
KDDIの取り組みについて、商品とサービスの融通、店舗DXの支援、金融、ポイントなどで連携すると言っていたが、このようなKDDI、ローソン連合の取り組みが事業環境とNTTの戦略にどのような影響を与えるのか教えて欲しい。
まず同じ戦略は取るつもりはありません。例えばサプライチェーンでは必ずしも最終的な小売りの方々だけではなくて上流工程の方々もつないでいくことになりますので、今までもDXのサポートを各分野でさせていただいてきていますが、継続してやってまいりたいと思います。またコンビニの主要3社様に対しても今までもビジネスでお付き合いさせていただいていますが、継続してしっかり強化してまいりたいと思います。
我々自体がコンビニ事業に参入するなどの考えはありません。
最近日本の企業でコンプライアンスが問われる事案が相次いでおり、実際、NTTグループもNTT西日本グループで個人情報をめぐる案件もあったが、NTTとしては数年前から総務省との接待問題を受けて新たにコンプライアンスに関する取り組みを始めている中、コンプライアンスに対する重要性の受け止め、これまで取り組んできたことへの評価、また今回の事案を受けて新しくやろうとしていることがあればと教えて欲しい。
コンプライアンスは企業にとって非常に重要で、法令順守というより、その時々の社会環境の変化にあわせてしっかりした規律を持って対応していかなければいけないということが求められており、今の時代に合ったコンプライアンスが常にあると思っています。
NTT西日本グループでは昨年、個人の犯罪に基づき69社、928万件のクライアント様とクライアント様のお客様情報を漏えいしたことについて非常に申し訳なく思っており、深く反省しているところでございます。昨年来、緊急対応として、NTT西日本グループだけではなくNTTグループ全体で同様な問題が発生してないかということについて調査しています。昨年12月いっぱいまで対応し、中には少し年を超えてしまっているものがありますが、まずは当面の対策は打ちました。
ただ、例えばUSBメモリを全面禁止していくにあたっては、当然そのオペレーションのプロセスを変えていかなくてはならない、加えて設備を新たに構築しなければならないといった課題もあります。したがって暫定対処時は、USBメモリの管理を強化するなどを対応していますが、それだけでは十分ではないので、今年2月末を目途に、来年度の投資を含めて予算を作っていくことをNTTグループ内の各社で真剣に議論させており、暫定対処から本格対処に切り替えていく考えです。この運用は既にスタートしているところもありますが、基本的には来年度にわたって、システムの見直しや、ログチェックの具体的な運用などの本格的な対処策を検討しているところです。
NTT西日本グループの情報漏洩の調査については、第三者も含めた委員会が調査しており、今年2月の半ば目途で調査報告がまとまると聞いています。2月末にはNTT西日本グループが当該報告書をもとに今までやってきた対策、今後すべき対策なども含め、NTT西日本社長から発表する機会を作るよう指示しているところです。
いずれにしましてもコンプライアンスは企業の存亡にとって非常に重要なものだと認識しておりますので、これからも強化をしてまいりたいと思っています。
能登半島地震の復旧について、NTT法の関係でユニバーサルサービスがどうあるべきかという議論もあるが、これを踏まえて復旧の進め方について考えがあれば教えて欲しい。
今回の地震復旧対応に限らず、東日本大震災の頃から、お客様のニーズはモバイル回線の早期復旧だと認識しています。もちろん自衛隊や気象庁の地震計などの重要回線は最優先しますが、それ以外はまずはモバイル回線をいち早く復旧するようNTT西日本、NTTドコモに指示をしていました。
今回、総務省でNTT法に関連してユニバーサルサービスのワーキングが立ち上がったところ、これからのユニバーサルサービスは、モバイル回線を中軸として考える体系を作っていく必要があると思います。
従来のメタルの固定回線は、住宅とか事業所に対して点で通信をするものでしたが、今のお客様が求めているのは、例えば今回のような災害があった時に、避難所や避難する過程の主要な道路など点ではなく面での通信だと思います。したがって、これからの時代はモバイル回線を中心としたユニバーサルサービスをベースに考えていく必要があるということではないかと思います。
もちろん、そのバックボーンである光回線サービスを守っていかなくてはいけませんが、それはNTTのみならず、ケーブル会社や電力会社の子会社が提供している光ファイバーケーブルも重要になってまいります。加えてモバイル事業者も自前でバックホールを持たれたり、コアネットワークを自前の光ネットワークで持たれたりしていますので、これらを踏まえ議論を深めていき、新たなユニバーサルサービスの体系を作ることが重要だと思います。
よくラストリゾートについての議論がありますが、それは国民経済に鑑みて、安く、効率がいいものになるよう作っていくべきだと思います。最終的に、行政が事業者を指定できるような形になるのが良いと思います。
ただ、以前から申し上げておりますように、どなたも手を挙げる方がいないエリアがあれば、NTT東日本・NTT西日本が当該エリアにおいてラストリゾートを負う覚悟はありますし、もしかすると携帯事業者自体がそうした覚悟を持っていく必要があるかもしれないとも思います。
NTTドコモ事業について、コンシューマ通信セグメントにおいて機器収支改善等でプラス155億円という形になっているが、一方でモバイル通信の収入減が続いているところ、それぞれの要因・動向を伺いたい。また上期の決算時に井伊社長から、今期中に4,000円程度のARPUで下げ止まるのではないかと見方が示されていたが見立てを教えて欲しい。
第3四半期決算時点のARPUは4,000円を少し下回り3,990円になっています。1つの要因として、「irumo」が売れていることが挙げられます。セカンドブランド相当のブランドを出した影響が少し遅れて出てきていますが、その後反転してくる認識です。
iPhoneの新しい端末が出たり、第3四半期の端末の制度見直し商戦があったりしたので、実質NTTドコモはあまり端末の値下げをやってこなかったところです。したがって端末では利益は少し出ていますが、必ずしもMNP(モバイルナンバーポータビリティ)の成績が良かったわけでもなく、ARPUも決して完全に反転しているわけでもないので、これを踏まえ春の商戦況をどう対応していくかは、今、検討しているところです。しっかりと対応してまいります。
それから、将来のお客様をいかに確保していくかは非常に重要ですので、若年の方々に対して魅力的なサービスをどう訴求していくかも1つ大きな要素になると思います。ぜひ期待していただきたいと思います。
NTTドコモのネットワーク品質問題は契約者数への影響があったか教えて欲しい。
アンケートを取ったわけではありませんのでわからないですが、あまりいないのではないかと思っています。NTTドコモも、新型コロナ渦が明けてからのトラフィック量に対しての対応が少し後手に回った点について反省をし、その後しっかり対応し、計画で申し上げると昨年12月末までの改善は全てやり尽くしました。
今後、基地局を増やす必要がある部分はどうしてもあるので、この点については折衝の時間がかかって越年した部分がありますしもしかすると年度を越える部分も若干あるかもしれませんが、着実に改善しています。いわゆる通勤路線の沿線部分も相当程度に改善してきていますので、これからはアプリケーションのパフォーマンスまでしっかり管理し品質を向上してまいりたいと思います。通信品質について今後会見をすることがないように、努めてまいりたいと思います。
今日、NTTドコモがJリーグと契約を交わし、ルヴァンカップの放映を「Lemino」で始めるとリリースをしているが、この意義について、「Lemino」事業の今後に絡めて教えて欲しい。
今、映像ビジネスの分野は、それぞれ独自のコンテンツで競っている時代になってきていると思います。その意味では、お客様は複数サービスに契約され、見たいコンテンツをその時その時に選んでいくことになります。ですからボクシングの井上尚弥選手のケースなど「Lemino」でしか見られないコンテンツというものをいかに出していくことが競争の時代において重要だと認識しています。
その一環で、今回の契約も締結していますし、先般マンチェスター・シティFCが来られた時の放映など際立ったコンテンツをしっかり提供してお客様の心をつかんでいける事業をしっかりやってまいりたいと思います。
春闘について、NTT労組は5%のベアを要求するようだが、会社として今春闘にどのように臨む考えか、その理由と合わせて教えて欲しい。
まずNTT労組からはまだ要求書をもらっていません。従来から私が申していますのは、人がサービスを作ってお客様のカスタマーエクスペリエンスを際立てていくということで、人への投資は非常に重要だと思っています。その意味で過去10年間ずっと賃金を上げてきています。例えば消費者物価は10年間で8%程度上がっているところ、当社の賃上げの累計は10年間で30%程度ですから、消費者物価をかなり上回っています。
私は継続的に、かつ安定的に上げていくということが重要だと思っています。したがって、何かあるタイミングで従来やっていなかったものを急に上げて突出した賃上げをする、あるいは急にやめるといったことではなく、地道に向上させていくことが重要だと思っていますし、それが社会の全体の成長に有効に役に立っていくと考えています。したがって今年も賃上げはしっかりやってまいりたいと思います。
賃上げの程度については、労使間で議論した上で結論を出すものだと思っていますが、当然、世の中が賃金を上げて世の中の経済をもっと盛り上げていこうという流れについて認識しているところですので、これも踏まえ最終的な結論を出していきたいと思います。
ユニバーサルサービスについて、これからはモバイル回線中心と話があったが、現在は公衆電話も対象であるところ、設置基準が緩和され台数が減っていく中で公衆電話のユニバーサルサービスはどうあるべきなのか、存在意義や役割についての考えを教えて欲しい。あわせて公衆電話はメタル設備で提供されているが、当該設備が縮退していった時のサービス提供のあり方について教えて欲しい。
まず諸外国では公衆電話の設置義務は、ほとんどの国でなくなってきています。モバイル回線を中心とし、これをカバーするという考えが主体なので、こうした考えが基本線ではあろうかと思います。
公衆電話の今の仕組みはメタル回線で構成されていて、仮に光回線でサービス提供をしようとすると当然ソフトウエアや課金方式など、全て新たに作りこむ必要がありコストがかかります。コストがかかるからやる、やらないという話ではありませんが、経済面や利便性を考えたときにどういうやり方が一番求められている便益を達成できるかということをよく議論する必要があると思います。その意味でまさに今行われているユニバーサルサービスの議論の中で公衆電話のあり方についても議論する必要があると思っています。
KDDI、ローソン連合によってNTTドコモの金融事業やポイント事業に影響があるのか教えて欲しい。
直接関係ないと思います。KDDI様に聞いてみないとローソン様とのコラボレーション戦略はわかりませんが、急にd払いやdポイントがローソン店舗で使えなくなることはないと報道を見る限りは認識していますので、大きな影響はないと思います。
能登半島地震でもかなり活用されていた衛星通信について、現在NTTグループはStarlinkのサービスを始める一方で株式会社Space Compassを立ち上げたり、Project KuiperでAmazonと提携したりと、色々なところに網を張っている印象だが、衛星通信に関する事業のあり方について教えて欲しい。
能登半島地震の復旧対応では、NTTドコモはワイドスターⅡの端末を被災地に持ち込みました。なぜかと言うと、ワイドスターⅢが例えばスマホと連携ができるなど多機能であることに比べ、ワイドスターⅡは音声通話が得意なので、まずは連絡を確保できるサービスを持ち込むことが一番良いと判断したためです。
したがって衛星通信もその時々で用途によって色々と使い方が変わってくることに加え、今後の衛星通信の進化のタイミングで利便性や特性を見て、使うタイミングごとにチョイスしていくことが当面の間、必要だと思います。そのため色々なプロジェクトに参画して、優劣や利便性を見ていかなければいけない認識です。
日本でも低軌道衛星を作るべきではないかという議論もありますがそれはNTTグループだけではできませんので、国に主導いただいて作っていく必要があると思います。
それから今、着目しているのはHAPSです。HAPSを早く日本のエリアに持ち込んで実験を早くやりたいと思っています。ただ、HAPS自体、緯度が高いと太陽光パネルで電気の出力がある程度抑えられるという課題もあるので、やはり衛星通信やHAPSの特徴をよく見ながらやっていく必要があると思います。
当面、宇宙に関するサービスは様々なチャレンジをしながら、テストして、うまく実用化していく必要がある認識です。
NTTドコモの決済金融サービス事業に関して、競合他社の場合はモバイルサービスの料金プランと合わせた決済金融サービスの連携や銀行との連携などを深めている状況であるところ、NTTドコモはマネックス証券と提携を発表し、また銀行では三菱UFJ銀行とアライアンスを組んでいるものの、このあたりの連携の遅い印象があるが、島田社長としてどのような判断しているのか教えて欲しい。
元々NTTグループの方針は従来からB2B2Xと言っており、センターBのお客様をサポートするような形でやっていこうというものでした。したがって、例えば金融業界でもセンターBに対してのサポートをマルチにやっていくことがベースでした。
ただ、世の中のニーズが、1つのスマートフォンアプリの中で完結できるようにすることが求められる時代に移ってきましたので、NTTドコモがその分野でやや遅れたのは事実だと思います。
生命保険も損害保険をまとめポイント連携も含めて対応するというニーズが高くなってきましたので、遅ればせながら整えているところですが、まだまだ足りていないと私は思っています。もう少し時間かかると思いますが、しっかりお客様のご要望に応える体制を構築し、できれば来年度にはキャッチアップをしてまいりたいと思います。
ドライカッパの接続料が一部基本料を上回り、構造的に赤字が増えるしかない状況だと思うが、要望があるか教えて欲しい。
今、ここで明確に申し上げるのは難しいですが、赤字の事業を継続していくことは非常に厳しいものがあると思います。したがって適正な利益水準は必要なものだと思いますので、できれば制度的に見直していただければありがたいと思います。
加入電話はユニバーサルサービス義務があるため、ご要望があれば例えば1週間以内で電話を開通させなければいけません。申し込みがあれば、全国津々浦々どこでも開通させなければいけないということは、それだけ膨大なメタル固定電話設備を維持しなければいけないということなので、現在年間で600億円程度の赤字が出ていますが、これから10年経てば年間900億円以上の赤字になり、累計していくと非常に大きな金額になります。
本来はそれらのキャッシュをインフラの高度化に早く振り向けていくことが重要なので、今のユニバーサルサービスの議論ではそうした面もしっかりよく見ていただいて、見直すべきところは見直して、新たなネットワークの高度化にキャッシュが回っていくような議論が進められるとありがたいと思います。
以上
NTTグループ中期経営戦略
2023年5月、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために。」を基本的な考え方とした中期経営戦略を発表しました。
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