目標1:
貧困をなくそう
目標8:
働きがいも経済成長も
目標10:
人や国の不平等をなくそう
目標17:
パートナーシップで目標を
達成しよう
コンサルティングやシステムインテグレーション、アウトソーシングなどの幅広いITサービスを提供しているeveris社は、スペインと南米に6カ所のニアショア・オフショア拠点を有し、高品質かつ低価格なサービスを提供する体制を整えています。そうしたなか、チリの生産性向上や経済発展に貢献するため、2015年にオープンイノベーション「デジタルハブ」を設立しました。この取り組みについて、同社の米州公共部門長のアレハンドロ・モラン・マルコ氏から紹介してもらいます。
everis
米州公共部門長
アレハンドロ・モラン・マルコ
2014年3月、チリ共和国では新政権が発足し、新たに大統領になったミシェル・バチェレ氏は、就任直後から税制改革や選挙制度改革、教育制度改革などの重要法案を議会に提出し、生産性向上と経済発展に関するアジェンダを発表しました。これを受けて、私たちeverisは「デジタルハブ」の構想に着手しました。ITイノベーションやソフトウェアイノベーションを起こして世界レベルのソフトウェアをつくれたなら、チリの抱える課題解決につながるはずと考えたのです。また、従業員については地元の大学の卒業生を採用することで雇用創出にもつながります。
早速、政府や地元の大学にオープンイノベーション「デジタルハブ」の構想を提案したところ、合意を得られ、2015年には構想を実行段階に移し、大学や州政府との強固なアライアンスを結んでいきました。また、デジタルハブをテムコ市に設立することにしました。その理由のひとつは、テムコ市のあるアラウカニア州は首都サンティアゴから800kmほど離れており、農業や漁業などの第1次産業が主要で貧しい地域であったため、デジタルハブで暮らしを良くしたかったからです。また、テムコ市にある大学が同プロジェクトに積極的に参加してくれ、人材を派遣してくれることを約束してくれたことも理由のひとつです。
デジタルハブは政府と大学、everisの3社が共同で取り組むため、その研究開発領域は「医療」「教育」「物流」「貿易」の4つのテーマに絞りました。例えば、「医療」分野ではゲノムヘルスレコードを開発しています。いわゆるオーダーメイド医療の実現に向けた研究で、患者のゲノム情報を診断に活かせるようになれば、その人に合った効果的な処方ができるようになりうるというものです。また「貿易」分野では、日本のシステムを好事例にチリの港湾で使える情報統合システムの開発に取り組んでいます。このように、デジタルハブでは公的需要に応えることを最も重視しています。
また、デジタルハブはオープンイノベーションを推進する役割を担っています。そのため、政府から課題を出されれば、その解決策を考え、試作品をつくり、病院や学校、港湾などで試験し、生み出した技術・サービスによる利益を共有する----という仕組みを築いています。こうした取り組みが評価され、チリのIT企業連合(ACTI)から「社会的ICT最優秀イニシアチブ賞2016」をいただきました。
デジタルハブが稼動して2年半で地元から約350名を採用しています。また、そのうちの約150名が地元大学の卒業生です。今後4、5年うちに従業員数を900名に伸ばすことを目標としています。従業員は現在、ヨーロッパやチリ、ほかのラテンアメリカ諸国、アメリカ向けのITプロジェクトを手がけています。チリは英語が母語ではないため、ITエンジニアとして正しく英語を使えるように英会話などの研修を定期的に開催しています。
2017年には、新しいデジタルハブ「ヘルスケアデジタルハブ」をテムコ市から3時間ほど離れたコンセプシオン市に立ち上げました。名前の通り、ヘルスケアサービスに関するITに特化しています。さらにアルゼンチンのメンドーサにデジタルハブを建設していく考えです。これによってラテンアメリカにデジタルハブのネットワークをつくることを目標としています。
デジタルハブは、テムコ市やコンセプシオン市など主要都市以外の地域に住む人々に大きなチャンスを与えています。同時に、私は"世界クラスのIT革新"を可能にすると強く信じています。なぜなら、彼らには夢があり、情熱を持ち続けているからです。デジタルハブをはじめ、今後構築するラテンアメリカのネットワークを駆使して、ラテンアメリカをより良い環境にしていくことが私の夢です。