2023年5月17日(水)、18日(木)、NTT筑波研究開発センタでつくばフォーラム2023が開催された。
今年のテーマは「つながり続ける今と未来へ 変革に挑戦するアクセスネットワーク」。
17日、つくば国際会議場で行われたNTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 川添雄彦の基調講演、および見どころ紹介でも取り上げた今、注目の6つの技術の詳細についてレポートする。
17日、つくば国際会議場で行われた副社長 川添の基調講演のテーマは「新たな価値の創造とグローバルサスティナブル社会を支えるNTTへ」。
NTTグループは、5月12日に新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN※」を発表した。
同戦略の基本的な考え方は「NTTは挑戦し続けます 新たな価値創造と地球のサステナビリティのために」。
NTTグループだけの話ではなく、地球を意識した上で事業を展開していくという決意の表れとなっている。
IOWNとはInnovative Optical and Wireless Networkの略で、光を中心とした革新的技術を活用し、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能なネットワーク・情報処理基盤構想
IOWN構想は低消費電力、大容量・高品質、低遅延を特徴としており、これを実現することは地球を意識した取り組みといえる。IOWN構想を実現にする技術が、1960年代よりNTTが研究開発を行ってきた光の技術である。2019年に光トランジスタの発明に成功したことで、データ処理にも光を使うことが可能になりIOWN構想の発表に至った。
当初は全てを完成させてから披露することを考えていたが、成熟した技術から随時、成果を出していく方針に変え、3月16日にAPN IOWN1.0サービスをリリース。そのすごさを会場の参加者にも体感してもらおうと、APN IOWNを活用した東京と大阪を結んでクラシックコンサートを開催した。通常のクラシックコンサートとまったく遜色のない演奏に聴こえることを証明する実証実験となった。
今回新しく発表したのは、APN IOWN1.0の先の技術で、今回リリースしたAPN IOWN1.0は同一県内に限った形での提供だが、APN Step2では提供エリアを県間に拡大するとともに、伝送容量は6倍以上、電力効率を13倍となる。2025年大阪・関西万博で発表を予定している。さらにAPN Step3以降もさらなる高度化を図り、伝送容量125倍、電力効率100倍まで向上する予定を発表した。
この進化の核を握るのが、低消費電力を実現する光電融合デバイスの早期事業化だ。それを可能にするため、光電融合デバイスの企画・設計・開発・製造・販売を行うNTTイノベーティブデバイス株式会社という新会社を6月に設立することを発表した。
IOWN2.0ではコンピューターの中にあるLSIのボード間の光接続を、IOWN3.0ではチップ間の光接続を、IOWN4.0ではさらに進化させてチップ内ダイ間の光接続を実現する。
IOWN構想はNTTだけでは実現できるわけではないため、IOWN構想実現に向けてIOWN Global Forumを設立。
同フォーラムでは世界中のさまざまな企業と連携し、エコシステムを構築していく予定である。そしてこの技術を次世代のグローバルサスティナブルな技術として世界に拡げていくことで、日本という国として世界に大きく貢献できる存在になっていくことを発表した。
講演のオンデマンド配信は2023年6月16日18:00までご視聴いただけます。ご視聴には、事前登録が必要となります。
こちらの「事前登録はこちら」からご登録、視聴ください。
https://www.tsukuba-forum.jp/index.html
つながり続ける未来を実現するNTTグループの挑戦を体系的に把握できる展示会だけに、会場には、昨年にも増して多くの人が詰めかけていた。中でも最も来場者の注目を集めたのが、「6G/IOWN時代のアクセスネットワーク」の展示。NTTグループが研究開発を進める「IOWN」は、すべてのネットワークを光(APN:オールフォトニクスネットワーク)にするとともに、デバイスに光電融合技術を採用することで、大容量・低遅延・低消費電力を実現する、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想である。パネルで技術の概要を紹介すると共に、今年、3月16日よりAPN IOWN1.0の提供を開始したことをうけ、富士通、日本電気、シエナ、三菱電気4社が開発したAPN対応終端装置も展示されていた。
またAPN IOWNのユースケースとしては建設現場での遠隔操作をデモで紹介。APN IOWNを使うとどれだけ低遅延で建設機械を遠隔操作できるのか。実際のロボットアームの動きと、画面に映し出されているロボットアームの動きを見比べても、遅延はほぼゼロ。IOWNが普及した先の未来を感じさせる展示となっていた。
社会のインフラとなりつつある通信サービス。そんな社会のインフラに大規模故障が発生したときに、早期復旧を実現する技術。Konanで大規模故障の原因を推定し、NOIMでは、サービスごと、エリアごとの状況把握が可能になる。サービス事業者がこの技術を使うことで、大規模故障によるユーザーへの影響を大幅に軽減できることに加え、総務省などへの報告が迅速に行えるようになるという。
報道発表資料
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/04/26/230426a.html
個人が持つ無線アクセスポイントや組織が持つローカル5Gなどの無線設備を個人間や事業者間で高品質かつセキュアに共用する技術。この技術のポイントとなるのがブロックチェーンだ。ブロックチェーンを用いた接続契約によりセキュアな共用を担保。さらにユニークなのは、高品質な通信を可能にするため、ブロックチェーン上の情報を用いて自律分散的に端末収容を最適化できること。この技術により無線アクセスのトラヒック増への対応はもちろん、無線設備コストの低減や省エネ化に貢献する。
報道発表資料
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/04/27/230427a.html
現在、人で行われていることが多いトンネルや橋梁、ダムなどのコンクリート構造物の点検。それを市販のデジタルカメラを使って、その撮影画像から劣化の大きさを自動計測してくれる技術。コンクリート表面に汚れが付着し、表面情報が失われていたとしても、AIを活用して汚れの少ない領域から抽出し、高精度に画像スケールを推定する。人が行う点検と比べると精度は多少、劣るが、すでに実用化できる段階にきている。
報道発表資料
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/05/15/230515a.html
今後、拡大が予想されている洋上風力発電。同技術は運転を停止することなく、非接触で安全に破損個所の点検を可能にする。そのために用いるのが2機のドローン。2機のドローンを微弱無線の送信/受信機とし、微弱無線の送受信を行う。その受信信号の変化を解析することで、洋上風力発電風車の破損の有無を検知。微弱無線は無線免許を取得することなく活用できるというメリットに加え、非接触で行えるので保守運用コストの削減を削減、カーボンニュートラルにも貢献する。
報道発表資料
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/05/16/230516a.html
遠隔操作で直感的に処理するのに欠かせない視覚情報。それをエッジで処理して伝達するサービスでは、ネットワークとアプリ間での往復処理遅延を担保する必要があった。同技術はネットワークとサーバの各状態をリアルタイムに監視し、品質が劣化するなどの状況に即応して経路を切り替えることで、常時低遅延性を保つことが可能になる。今回の展示では三菱電機の遠隔操作システム「VISUAL HAPTICS(ビジュアル ハプティクス)」を用いて、遠隔ロボット操作のデモを実施。安定した低遅延サービスが実現していることを証明していた。
今回紹介した技術は6G/IOWA時代のアクセスネットワークを含めてもたった6つ。展示会場ではこの数倍もの技術が展示されており、各ブースでは思い思いの人が足をとめ、説明を熱心に聞いていた。
NTTグループでは、日本だけに留まらず、世界、地球に貢献する技術の開発を行っている。これからも私たちが開発する技術にぜひ、期待してほしい。
講演のオンデマンド配信は2023年6月16日18:00までご視聴いただけます。ご視聴には、事前登録が必要となります。
こちらの「事前登録はこちら」からご登録、視聴ください。
https://www.tsukuba-forum.jp/index.html