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2026年3月11日

「つなぐ×かえるプロジェクト」競争から協調へ変化する通信の災害対策最前線

地震や豪雨など大規模災害が相次ぐなか、通信は社会と企業活動を支える不可欠な基盤です。「つなぐ×かえるプロジェクト」は、競争関係にある通信事業者各社が力を持ち寄り、さまざまな社会貢献に取組むことを目的に始まり、災害時の迅速な復旧と避難所支援の最適化をめざす取組みへ発展してきました。その背景には、能登半島地震における各社の実践や、NTTが長年培ってきた独自の災害対応ノウハウがあります。本記事では、プロジェクト誕生の経緯から現場での具体的な対応、さらに地域密着型支援の広がりまでを紹介し、通信業界が描く新たな災害対応の姿をひもときます。

1)「つなぐ×かえるプロジェクト」概要

「つなぐ×かえるプロジェクト」は、国内の通信事業者各社が協力して、社会貢献をめざすプロジェクトで、2020年9月にNTTとKDDIが主体となってスタートし、2024年12月にはソフトバンクおよび楽天モバイルも参画して枠組みを強化しています。その中でも災害対策においては大規模災害時の通信インフラをいち早く復旧し、被災地支援を迅速に実施していきます。
 基本ミッションは、各社が保有する設備や資源を共同利用し、被災地でのネットワーク復旧や通信サービスの提供を効率化すること。具体的には、事業所・資材置き場・給油拠点などのアセットを相互に活用したり、ケーブル敷設船といった船舶を用いた通信設備・物資輸送を実施するなどの仕組みを整備しています。
 さらに2025年10月22日には、NTTグループ各社、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの8社により、避難所支援のエリア分担・情報発信の共通化といった協力体制を構築する新たな取組みを開始しました。これにより、支援が重複したり地域格差が生じたりすることを防ぎ、災害時に関係者や被災者にとってわかりやすく迅速な支援提供を可能にします。

画像:つなぐ×かえる避難所支援共同プロジェクト

2020年9月11日
NTTとKDDI、災害時の物資運搬などに関する相互協力開始 ~社会的課題の解決に取り組む社会貢献連携協定を締結~

2024/12/18
大規模災害発生時におけるネットワークの早期復旧に向けた通信事業者間の協力体制を強化
~各社のアセットの共同利用や船上基地局を活用~

2025/7/1
大規模災害発生時における速やかな被災地支援に向けた通信事業者間の協力体制を強化

2025年10月22日
大規模災害発生時における速やかな被災地支援に向けて、避難所支援における通信事業者間でのエリア分担などの連携体制を強化当該ページを別ウィンドウで開きます

2)プロジェクトの発展が示した能登半島地震支援の実践モデル

「つなぐ×かえるプロジェクト」が掲げる目標は、災害時に通信インフラを迅速に回復し、社会のつながりを保つことです。この考え方は各社横断での協力体制として進化してきましたが、その実践例として2024年の令和6年能登半島地震でのNTTドコモとKDDIの対応が挙げられます。
 能登半島地震発生後、NTTドコモは現地で基地局の停電や伝送路断線などの影響を受ける中、復旧チームを全国から動員し、移動基地局や発電機によるサービス復旧、無料Wi-Fi・充電サービスを避難所で提供しました。これは単なる設備復旧に留まらず、避難者の生活や心のケアにも目を向けた総合支援です。

写真:基地局復旧の様子

なかでも注目されたのはNTTドコモとKDDIによる船上基地局の運用で、船に搭載した基地局機器で沿岸部に電波を送ることで、道路が寸断されている地域でも通信エリアの確保を実現しました。この取組みは、平時からの訓練や他社との連携を前提としたプロジェクトの成果であり「つなぐ×かえるプロジェクト」が掲げる「つなぐ力」を具体的な現場で体現した事例といえます。現場からは「通信が再びつながることが安心につながった」との声も寄せられており、災害対応の新たなモデルとして評価されています。

写真:船上基地局

3)NTT独自の災害支援が「つなぐ×かえるプロジェクト」への基盤に

NTTドコモでは従来から、大規模災害発生時における迅速な通信復旧と避難所支援を独自に強化してきました。
 令和6年能登半島地震においても、道路寸断や停電といった厳しい状況下で迅速に復旧活動を展開し、移動基地局や無料Wi-Fi、充電サービスを提供するとともに、避難所における生活支援の幅を広げました。通信インフラの早期復旧のみならず、被災者の生活に直結する支援として、衛星通信を活用した無料Wi-Fiやドコモ公衆ケータイの提供といった多様なサービスを展開し、被災地に寄り添う支援を実施。また避難所では、避難者の不安軽減に配慮した映像コンテンツ配信など、ヘルスケア・メンタルケアにも対応しました。現場に赴いた社員は、各種機器の設置・設定や利用方法の案内を通じて、避難者との対話を重ね、単なる機能提供を超えた「つながり」の重要性を実感しました。

写真:全国から集まった移動基地局車

全国から集まった移動基地局車

写真:全国から集まったマルチチャージャーなどの支援物品

全国から集まったマルチチャージャーなどの支援物品

これらの取組みは、NTTが長年蓄積してきた災害対応ノウハウと即応体制の具体的な実践例でもあり、「つなぐ×かえるプロジェクト」のミッションのひとつである「通信事業者のアセットの共同利用による復旧活動」や「避難所支援のエリア分担・情報発信の共通化」へと発展していく基盤となっています。

4)「競争を越えて結束する」通信事業者各社が語る災害連携の現在地

写真:「つなぐ×かえるプロジェクト」座談会

2026年2月、NTT株式会社、NTT西日本、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの「つなぐ×かえるプロジェクト」担当者が集まり、座談会が開催されました。通信事業者として立場はそれぞれ異なりますが、共通しているのは「通信は社会基盤であり、災害時こそ止めてはいけない」という強い思いです。
 まず話題になったのは、過去の災害対応で感じた課題でした。特に多く挙がったのが、避難所支援のムラ。大規模な避難所には複数のキャリアが集まりやすい一方で、小規模な避難所には十分な支援が届かないことがある。能登半島地震の際にも、各社が懸命に動くなかで重複や抜けが生まれてしまう現実を目の当たりにしたといいます。その背景には、各社の体制や文化の違いがありました。NTT東日本、NTT西日本やNTTドコモのように各都道府県に拠点を持ち、地域密着で動く体制の会社もあれば、KDDIのように総支社主体で初動を担う会社、ソフトバンクや楽天モバイルのように本社主導でスピード感を重視する会社もあります。担当部署も設備系、総務系、営業系などさまざまで、同じ「避難所支援」という言葉でも前提が異なることがありました。実際、連携の初期段階では相互理解に時間がかかったといいます。会議で意見を出しても他社がすぐに賛同できない場面もあり、その理由を丁寧に確認していくと、組織上の事情や判断基準の違いが見えてくる。そうしたプロセスを重ねながら、少しずつ共通の土台を築いていきました。
 連携が前進した背景には、NTT株式会社が事務局的な立場で旗振り役を担ったことも大きかったと語られました。モバイル領域では各社間の競争意識が強く、どこか1社が前に出るのは難しい。そこで直接通信サービスを提供しないNTT株式会社がフラットに調整を進めたことで、心理的なハードルが下がったといいます。月1回程度の定例に加え、対面での集中議論や各社へのヒアリングを重ねることで、関係性が深まっていきました。

写真:座談会の様子

プロジェクトの取組みは段階的に進められました。まずは情報共有から始め、次に運用イメージを整理し、訓練で検証する。南海トラフ地震を想定した訓練では、各社が一気通貫で連携するシミュレーションを行い「本当にできるのか」という不安が「形になる」という手応えに変わったといいます。各社名を前面に出すのではなく「通信事業者全体としてこれだけの避難所を支援できる」という整理ができたことも、自信につながりました。
 成果として強調されたのは、「顔が見える関係」ができたことです。カムチャツカ半島の地震や山火事などの際にも「今どう動いていますか」「自治体から要請はありますか」と気軽に確認できるようになりました。自治体への問い合わせだけに頼らず、横の連携で状況を把握できるようになったことは、実務上も大きな前進です。

各社の強みも共有されました。NTT西日本は府県単位の拠点網を活かした動員力、NTTドコモはグループ内外をつなぐ調整力、KDDIは総支社主体による迅速な初動体制を強みとしています。ソフトバンクはLTE網を活用した電話サービスや全国のスマホアドバイザーによる支援、楽天モバイルは全国拠点との情報一元化や楽天グループとの連携可能性を挙げました。得意分野が異なるからこそ、連携による相乗効果が期待できます。
 今後については、南海トラフ地震のような広域災害を見据え「1社では到底支えきれない」という危機感が共有されました。通信は安否確認だけでなく、金融や物流など社会機能全体を支えています。だからこそ通信業界としての連携をさらに強め、その先では他業界との連携も視野に入れていく必要があるという意見も出ました。
 参加者が最後に強調したのは「災害は同じ形では起きない」ということです。完璧な答えを用意するのではなく、課題が生じたときに悩みを共有し、更新し続けられる関係を持つことが重要だといいます。会社の枠を越えて「被災地のために何ができるか」を議論できる土台ができたこと自体が大きな成果でした。競争関係にある通信事業者各社が、災害時にはひとつのチームとして動く。その文化が、少しずつ形になり始めています。

写真:2025年1月に神奈川県平塚市で行われた4社合同の車載型基地局への給油訓練の模様2025年1月に神奈川県平塚市で行われた
4社合同の車載型基地局への給油訓練の模様

5)NTTが独自に展開する、地域密着型の災害復旧

NTT東日本、NTT西日本では、災害対応において独自の地域密着支援を強化しています。令和6年能登半島地震では、断水に伴う現場作業環境の悪化が課題となったことを受け、NTT東日本から水循環型シャワー装置「WOTA BOX」を貸与・活用しました。このポータブル水再生システムは断水地域でも入浴環境を整え、衛生面の確保だけでなく作業員のモチベーション向上と効率的な復旧活動につながりました。装置の運用経験からNTT西日本は独自の運用ノウハウを蓄積し、防災備品として複数台を配備するなど、災害現場のリアルなニーズに即した対応を進めています。さらに、これらの運用知見をメーカーなどへフィードバックし、製品改良・普及に貢献する動きも始まっています。

写真:入浴後の様子入浴後の様子

能登地域の復旧支援では「WOTA BOX」活用に加え、社員による仮設住宅訪問や相談会の開催など、被災者一人ひとりに寄り添う地域密着活動も展開。相談窓口を設けてサービス利用方法など生活に直結した相談にお応えすることで、安心感の提供と地域との信頼構築に努めています。このように、地域に密着したNTT東日本、NTT西日本はICT基盤の復旧だけでなく、被災地の生活再建を支える実務的・感情的支援も重視し、地域コミュニティとの密接な関係構築を進めています。

写真:個別訪問の様子個別訪問の様子

またNTTドコモでは、自治体と連携した災害復旧拠点の整備にも取組んでいます。直近では、愛知県知多郡美浜町と災害時の連携協定を締結し、町内施設などを活動拠点として活用できる体制を構築しました。さらに南海トラフ地震による広域災害を想定した全国合同災害対策訓練「R-ONE」では、美浜運動公園を拠点に移動基地局や衛星通信設備を展開し、実際の復旧手順や関係各所との連携を検証しています。こうした訓練を通じて、自治体など活動現場におけるパートナー様と平時から顔の見える関係を築き、災害発生時に迅速に動ける体制を整えている点も、NTTが重視する地域密着型の災害対応の特徴です。

写真:実践的な訓練にこだわり、当日の打ち合わせも重要視された実践的な訓練にこだわり、当日の打ち合わせも重要視された

6)関連リンク

ドコモの能登半島地震での取組み①-船上基地局篇-
https://www.docomo.ne.jp/corporate/anatatodocomo/docomoeveryday/article31/当該ページを別ウィンドウで開きます

ドコモの能登半島地震での取組み③-避難所支援篇-
https://www.docomo.ne.jp/corporate/anatatodocomo/docomoeveryday/article40/当該ページを別ウィンドウで開きます

南海トラフ地震に備えるドコモの合同災害対策訓練
https://www.docomo.ne.jp/area/nwpr/feature_article13/当該ページを別ウィンドウで開きます

令和6年能登半島地震におけるNTT西日本グループの取組み
https://www.ntt-west.co.jp/sustainability/special1/当該ページを別ウィンドウで開きます