2018年11月22日
日本電信電話株式会社
富士通株式会社
株式会社日立製作所
日本電気株式会社
沖電気工業株式会社
Orange
一般社団法人情報通信技術委員会
2018年11月13日、国連専門機関であるITU-T(国際電気通信連合、電気通信標準化部門)において、宇宙線が主たる原因である地上の通信装置の誤動作(ソフトエラー*1)対策に関する設計・試験・評価の方法および品質基準を定めた国際標準が制定されました。
本国際標準の制定に向け日本電信電話株式会社、富士通株式会社、株式会社日立製作所、日本電気株式会社、沖電気工業株式会社は、一般社団法人情報通信技術委員会に開設された「通信装置のソフトエラーに関する標準化Adhoc」(以下、SOET_Adhoc : Soft error testing Adhoc)において共同で国際標準案を起草し、ITU-T SG5*2会合ではOrangeとともに勧告化を推進してまいりました。
本国際標準勧告により、通信装置のソフトエラー対策基準に基づく更なるネットワークの信頼性向上が期待できます。
近年、宇宙線によって生じる中性子線に起因するソフトエラーが地上で使用する通信装置でも増加しつつあります(図1)。ソフトエラーによって、半導体メモリに保存されているデータが一時的に書き換わることで誤動作やシステムダウンを引き起こす恐れがある一方で、再起動や上書き保存といった簡易な処置で故障が回復するため、ソフトエラーに伴う故障の原因特定が困難と言われています。ソフトエラーが発生すると、通信サービスの利用者に多大な影響を及ぼす可能性があり、また運用者にとってもその原因究明・対策が大きな負担となる場合があります。通信装置は、このような故障も想定して通信サービスに影響を及ぼさないように設計されていますが、ソフトエラーはその再現が難しいため、開発段階で十分な検証を行うことができませんでした。
しかし、近年、加速器中性子源*3を用いてソフトエラーによる通信装置への影響を測定できるようになったことで、開発・導入段階でソフトエラーの影響を把握し、改善を行った上で通信装置を実運用ネットワークへ導入することが可能となりつつあります。これにより、大幅な通信品質の向上を図ることができますが、設計や試験の手法・評価について指標となる品質の基準が求められていました。
図1:ソフトエラー発生のメカニズム
このような背景から、ソフトエラー対策に関する設計から評価、品質基準を定めることを目的に、2015年10月のITU-T SG5会合において、通信装置のソフトエラー対策に関する検討プログラムの開始が承認され、SOET_Adhoc委員各社が中心となり勧告草案の作成を行い、このたび国際標準として制定されました。
この勧告は、5つの勧告本編と補足資料で構成されています。(図2)
ソフトエラー対策に関する設計・試験・評価の方法および品質評価基準が定義され、またネットワークに求められる信頼性のレベルに応じたソフトエラー対策を実施するための指標も示されています。
図2:ソフトエラー対策勧告の全体像
各勧告の内容を以下に記します。本勧告により高い品質基準を満たした通信装置が普及することとなり、通信サービスの更なる信頼性向上が期待されます。
*1ソフトエラー
永久的にデバイスが故障してしまうハードエラーとは異なり、デバイスの再起動やデータの上書きによって回復する一時的な故障。
*2ITU-T SG5
ITU-Tは国連の一機関であるITUにおいて電気通信の標準化を担う組織。その中で、SG5(Study Group 5)は環境と気候変動の課題を検討している。
*3加速器中性子源
加速器によって加速された陽子や電子をターゲットに照射して核反応によって中性子を発生させる施設。
*4粒子放射線影響
放射線の中でも粒子の性質を持つもの(中性子、アルファ粒子等)が半導体に及ぼす影響のこと。近年、地上では宇宙線によって大気中で生成された中性子が半導体に及ぼす影響であるソフトエラーが増加。
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勧告番号 | 略称 | タイトル | 承認年月 |
---|---|---|---|
K.124 | 概要編 | Overview of particle radiation effects on telecommunications systems (通信装置の粒子放射線効果の概要) https://www.itu.int/rec/T-REC-K.124-201612-I |
2016年12月 |
K.130 | 試験編 | Soft error test method for telecommunication equipment (通信装置のソフトエラー試験手法) https://www.itu.int/rec/T-REC-K.130-201801-I/en |
2018年1月 |
K.131 | 設計編 | Design methodologies for telecommunication systems applying soft error measures (通信装置のソフトエラー対策設計手法) https://www.itu.int/rec/T-REC-K.131-201801-I/en |
2018年1月 |
K Suppl.11 | 補足編 | Supplement to K.soft_des - Soft error measures for FPGA (K.131補足資料 - FPGAのためのソフトエラー対策) https://www.itu.int/rec/T-REC-K.Sup11-201711-I |
2017年11月(Rev.1) 2018年9月(Rev.2) |
K.139 | 基準編 | Reliability requirement of particle radiation effect for telecommunication systems (通信装置の粒子放射線効果の信頼性要求基準) |
2018年11月 |
K.138 | 評価編 | Quality estimation methods and application guidelines for mitigation measures based on particle radiation tests (粒子放射線検査に基づく対策のための品質推定方法とアプリケーションガイドライン) |
2018年11月 |
本件に関するお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
TEL:0422-59-3663
Email:inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
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