2018年11月26日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下 NTT)は、存在を意識させることなく周囲に馴染む電池として、光透過性を有する『透ける電池』を作製し、電池動作を確認しました。NTTでは、ICTサービスの実現に向けた蓄電池をはじめとする電池に関する研究開発の技術・知見を活かし、本研究開発を進めています。今後は、IoTの更なる可能性を拡げるために『透ける電池』を適用できる領域を探索すると共に、性能向上を図ります。
本成果は、2018年11月29日~30日に開催されるNTT R&Dフォーラム2018(秋)にてご覧いただけます。
あらゆるものがデバイス化し、ネットワークに接続されているIoTの普及が進んでいます。今後、さらにIoTが普及することで、利便性が向上する一方で、世の中に様々なデバイスが溢れ、デバイスの存在感が増し煩わしさを感じる可能性も考えられます。そこで、デバイスの存在感を抑えるために、これまでは“小型化”、“軽量化”などの取り組みが進められています。
NTTでは、これまで、安心・安全・高信頼な情報流通サービスを提供する為、スマートフォンなどで長時間使用できるように、また、災害時の長時間停電時でも安定に電力を供給できるエネルギー源として使用できるように研究開発を行ってきた蓄電池に関する技術・知見を活かし、これらに加えて新たな観点として“透ける・透明”に着目し、存在を感じさせないデバイス作製の可能性を探索するために、光の透過性を訴求した電池の研究開発を行ってきました。
これまでの電池の研究開発は、EV、スマートフォン、ドローン等への適用を指向し、高出力で長持ちする電池を実現するために、より大きな容量、より長い寿命、より高い安全性をめざし、設計されてきました。そのため、従来電池の電極は、金属の集電層上に活物質、導電材、結着剤が混合された合材層が形成され、全体的に黒色で光を透過しない構造が一般的でした。
今回、光透過性の観点で電池を構成する材料と構造に着目し、図1に示すように、入射光の吸収と反射を抑制する技術開発を行い、存在感なく周囲に馴染むデバイスをめざしました。
材料選定技術:光の吸収を抑制しやすい材料を電池の電極として選択。
構造制御技術:光の吸収と反射を抑制しやすい構造になるように、電池の電極を作製。また、適用できる領域を拡げる事をめざし、電極を導電性フィルム上に成膜し、電解質をゲル化することで、“透ける”に加えて、“曲がる”電池を実現。
図1.今回提案の透ける電池と従来電池の構成
開発した電池は一辺が9×5cmの長方形です。(図2.左)動作確認として、本電池を市販LEDに接続したところ、5分間の点灯を確認しています。(図2.右)
図2. 開発した透けて曲がる電池とLED点灯の様子
具体的な性能として、本電池の光透過特性を分光光度計により評価したところ、平均約25%の透過率を有していることを確認しました。(図3.左)この透過率は、向こう側が透けて見える一般的なサングラスの透過率に相当します。また、本電池の充放電性能を評価したところ、平均電池電圧1.7V、放電容量0.03mAh(電流密度0.01mA/cm2)を示すことを確認しました。この容量は、一般家庭にある掃き出し窓約1.5個分のサイズで市販のコイン電池CR1025の容量に相当します。さらに、本電池は充放電可能な二次電池として動作することを確認しています。(図3.右)充放電を100回繰り返した後でもLED点灯が可能であることを確認しています。
図3.透けて曲がる電池の光透過特性と充放電性能
『透ける電池』は、従来の電池では適用困難だった領域に、広く適用できる可能性があり、近年、研究開発が進んでいる透明に関する技術分野(情報表示端末分野のディスプレイ、建物の窓等の建材分野の太陽光発電素子など)と組み合わせることで、IoTの新たな可能性拡大に繋がると考えています。今後は、本電池の透明度と電池性能の向上の両立に取り組みながら、具体的な適用先を探索していきます。
※本成果は、2018年11月29日~30日に開催されるNTT R&Dフォーラム2018(秋)にてご覧い
ただけます。
NTT R&Dフォーラム2018(秋)公式サイト:https://www.rd.ntt/forum/forum2018_autumn.html
本件に関する問い合わせ先
日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
science_coretech-pr-ml@hco.ntt.co.jp
TEL:046-240-5157
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