2019年11月 8日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下「NTT」)は、機能素材「hitoe®」※1を電極として縫製したウェアに装着して、心拍数・心電波形などの生体情報に加えて、ウェア内の温度や湿度の環境情報を取得・送信するウェアラブル生体・環境センサのプロトタイプを開発しました。
今回、NTTは、3センサ導入(心電、加速度、温度・湿度)とマルチセンサデータ信号処理技術を開発し、暑さ対策などのスマートヘルスケア応用を可能にしました。低電力モードによる長時間動作、メモリ機能と無線機能の搭載による欠損のないデータ収集、人間工学に基づいた筐体形状といった特長により、ユーザの負担を軽減し、生活のさまざまなシーンにおいて生体情報と個人の環境情報を快適かつ簡単に取得できるようになります。
また、NTTは、大学などの専門機関と連携して、リハビリ支援や暑さ対策などのヘルスケア分野で有用性を検証していきます。
本研究開発成果は、2019年11月14日~15日に開催する「NTT R&Dフォーラム2019」※2の「Action for 2020 and beyond」展示コーナにてご覧いただけます。
これまで、NTTは、機能素材「hitoe®」を電極として縫製したウェアラブル生体センサを活用したスポーツ選手のパフォーマンス評価やリハビリ患者のモニタリングに対して有効性を検証してきました。近年の温暖化に対する暑さ対策として暑熱環境が人体へ与える温熱的な負担を可視化する技術が求められており、NTTでは、機能素材「hitoe®」で培ったウェアラブルデバイス技術を活かし、環境が生体に対して与える影響を把握するためのウェアラブル生体・環境センサの開発に着手してきました。
今回開発したウェアラブル生体・環境センサは、インナーウェアの前面正中部に装着することで、アウターウェア内の温度や湿度、また上半身の加速度や角速度を計測します。またインナーウエアの肌接触面に機能素材「hitoe®」を縫製し、心電位を取得します。取得したデータは、センサに搭載した無線モジュールによりセンサ着用者のスマートフォンやIoT-GWに送信され、リアルタイムにデータをモニタリングすることが可能です。また、計測したデータを元に、ウェアラブル生体・環境センサの内部で心拍数、RRI※3、歩数、上半身の傾きなどの様々な特徴量を解析し、内蔵メモリに蓄積する機能を備えており、これによって、スマートフォン等と常時接続していない場合でも、計測を継続して必要な特徴量を後から一括して読みだすといった使い方も可能になりました。
従来、複数のセンサを用いて連続的に計測・解析・通信を行うと、CPUの負荷が高くなって消費電力が増加し、動作時間が短くなって頻繁な充電が必要となったり、大きな電池が必要になることが課題でした。そこで、CPUを休止させた状態で複数のセンサからのデータをバッファに蓄積し、短時間のみCPUを起動させて一括して波形処理や特徴量解析を実行するマルチセンサデータ信号処理技術を構築し、CPU負荷の低減を達成しました。これにより、小型な電池を用いても100時間以上の連続計測が可能となり、重量12gの小型・軽量な筐体内に複数のセンサと電池等を収容することに成功しました。さらに、人間工学に基づいて設計された筐体形状によって、屈曲や臥位などの動作を妨げず、快適に装着し続けることが可能なセンサを実現しました。
図1.NTTの開発したウェアラブル生体・環境センサのプロトタイプの主な諸元
暑さ対策への応用を目指し、暑熱環境下のネットワーク設備工事などの作業者に対して実証実験を実施し、有用性を検証していきます。
※1hitoe®・・・東レとNTTが開発した機能素材で、最先端繊維素材であるナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングすることで、耐久性に優れ、非金属素材でありながら生体信号を高感度に検出できる。体表面にhitoe®を密着させることで、心拍数や心電波形、R波の間隔から推定される睡眠データなどの生体情報が取得できる。また、ナノファイバーを使用することで、家庭洗濯への耐久性があり、さらに肌への密着性も上がるため衣服や帽子など人の体に密着した形で生体信号が取得でき、より高感度な測定が可能となる。
※2「NTT R&Dフォーラム2019」サイトURL
https://labevent.ecl.ntt.co.jp/forum2019/info/index.html
※3RRI・・・R-R Interval、心電波形 (ECG) 上のR波とつぎのR波の間隔。
本件に関するお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
広報室
電話:03-5205-5550
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