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2020年10月28日

日本電信電話株式会社
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

NTTと農研機構が秘密計算技術による作物ビッグデータ活用の共同研究を開始
~安全かつ高度な作物データ利活用の活性化した世界を目指して~

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純 以下、NTT)と、農業・食品産業技術総合研究機構(本部:茨城県つくば市、理事長:久間和生 以下農研機構)は、異なる組織間で共有が困難なため活用されていないデータを、NTTの世界最高速の秘密計算技術(※1)を用いて、互いのデータの安全性を担保しつつ活用するための共同研究を10月29日より開始することに合意しました。

本共同研究では、複数の組織が保有する作物データに対する秘密計算技術を用いた解析により、農業研究開発の効率的実施に有益な情報が得られることを示すことを目標としています。本共同研究の成果を踏まえ、広く農業分野にて、異なる組織や企業間で独立して存在し、共有されていない未利用の作物データを相互利用できる枠組みの構築を目指す方針です。

1.共同研究の趣旨

複数の組織がお互いのデータを安全に利活用する技術として、データを暗号化したまま処理できる秘密計算技術が注目されています。この技術を用いると計算対象の元データを誰も一切見ることなく、データの共有・保管・分析をすることが可能です。NTTは秘密計算の課題である処理速度に関して、他の追随を許さない世界最高速のパフォーマンスを実現しています。

また農業分野の研究開発においては、作物データを用いた解析が必要不可欠です。この作物データは各組織や企業が保有していますが、技術ノウハウの流出やデータの知財化への悪影響等の懸念から、組織間での積極的な共有による利活用が進んでいませんでした。

このたび、NTTと農研機構は、将来、複数組織に独立して存在する作物データの安全な共有・分析を行うことを見据え、農研機構が保有する種々のデータを複数組織のモデルデータと見做して、秘密計算技術を用いて安全に利活用するための共同研究を行うことを合意しました。NTTが保有する秘密計算技術やデータを安全に利活用するノウハウと、農研機構が保有する作物データとその分析手法を、それぞれが持ち寄ります。

表1 共同研究の役割分担

参画者 役割
NTT ・秘密計算技術を活用した各種分析手法の評価
・データを安全に利活用するノウハウの提供
農研機構 ・各種作物データの分析手法の提供
・作物データ(サンプルデータ)の提供
・秘密計算上での作物データの分析

本共同研究では、図1に示す通り、独立して存在する作物データの提供から保管、高度な分析/解析までのプロセスにおいて秘密計算技術を適用して、常に暗号化したままで処理ができることの検証を行います。そして、複数の組織が保有するデータを利活用して解析精度の向上を図り、農業分野の研究開発の効率化につながるような、価値あるデータ解析手法を開発します。

図1 本共同研究の概要

図1 本共同研究の概要

2.本共同研究で取組む解析技術

本共同研究では、以下に示すような、高度な解析技術を秘密計算上で実現することを目指して、農研機構が保有するデータを用いて取り組みます。

1)対象物・品種全体の傾向の把握

複数組織のデータをまとめて分析し、全体の傾向を明らかにする技術です。これまで個々の組織のデータだけを対象に分析していましたが、複数組織のデータをまとめて分析することで、より詳細な分析や傾向把握をすることができます(図2)。

図2 データ共有による解析精度と信頼性の向上(イメージ)

図2 データ共有による解析精度と信頼性の向上(イメージ)

2)全体における対象データ間の比較や位置づけの把握

複数組織データと比較、分析し、個々の組織のデータの位置づけを明らかにする技術です(図3)。

図3 データ共有による自組織データの位置づけの明確化(イメージ)

図3 データ共有による自組織データの位置づけの明確化(イメージ)

3)過去のデータを用いた将来の予測

過去のデータを用いて、高精度な予測を行い研究開発の進捗を加速します。

これら解析を実現するためには、様々な課題があります。例えばゲノムの解析技術では結果の正確性を期すためにフィッシャーの正確確率検定(※2)がよく用いられますが、秘密計算技術上での実現は一般的には困難とされています。NTTではヒトのゲノムに関する秘密計算上でのフィッシャーの正確確率検定を実現しております。(※3

3.目指すビジョン

本共同研究の成果を生かし、将来的には図4に示す通り、農研機構が整備を進めている作物データおよび各組織が保有する作物データを用いて、世界最高水準の情報量を有する安全な作物ビックデータと、それを用いた価値ある/魅力ある解析が可能となる安全かつ高度なデータ利活用のための解析エンジンを実現し、新品種育成や、営農を支援する情報システム開発とそれによる情報発信など、作物データの利活用が活発になされている世界を目指します。

図4 目指すビジョン

図4 目指すビジョン

4.今後の展開

今後、気候変動をはじめとする外部要因の急激な変化やライフスタイルの多様化による運動不足、過食、ストレスなど健康への影響が懸念されます。またこれらに伴い、食に関するニーズも多様化していくことが考えられます。NTTと農研機構は、未利用のデータを共有し、作物ビッグデータとして活用できる仕組みの構築等によるデータ駆動型スマート農業の実現に向けて取り組み、我が国の農業の発展に貢献します。

また、NTTでは、農業分野を含め様々な分野における安心・安全なデータ利活用の推進に向けて、異なる分野の多様なデータを安全に流通させる基盤技術の開発、特に秘密計算に関しては機械学習などの高度な分析処理の実現や更なる高速化に取り組んでいきます。これらをはじめとする研究開発成果ともとに、NTTグループでは農業分野を含め様々な分野における安心・安全なデータ利活用を推進してきます。

用語解説

※1秘密計算技術:データを暗号化したまま計算できる技術。NTTが取組む秘密計算技術は、NTTがエディタとして貢献したIS0標準(ISO/IEC19592-2)に準拠する秘密分散を採用したマルチパーティ計算。秘密分散の特徴を最大限生かした設計により、秘密計算の課題である処理速度に関しても通常のデータ処理に迫る世界最高速のパフォーマンスを実現。

※2フィッシャーの正確確率検定:2つ以上のカテゴリーの独立性について判定を行う手法。

※3複数の研究機関が持つゲノムデータを相互に開示せず分析する解析手法を開発
https://www.ntt.co.jp/news2016/1607/160712a.html当該ページを別ウィンドウで開きます

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

■日本電信電話株式会社

サービスイノベーション総合研究所
企画部広報担当
randd-ml@hco.ntt.co.jp

■農研機構

本部 広報部広報課報道チーム
naro-pr@naro.affrc.go.jp

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