2025年3月 3日
日本電信電話株式会社
株式会社NTTドコモ
発表のポイント:
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下、NTT)と株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:前田 義晃、以下、ドコモ)は、2023年10月に発表※1した6G/IOWN時代のコアネットワークとして提案する「インクルーシブコア※2」構想をもとに、モバイルネットワークとAI等のサービスに用いるコンピューティングサービスのコントロールを連携させ、低遅延・帯域確保などエンドツーエンドの品質をコントロール可能とするIn-Network Computing※3(以下、INC)アーキテクチャの実証実験(以下、本実験)を行い有効性と実現性を実証しました。
本実験では、6G時代の実用化を見据え、GSMAが規定するOpen Gateway※4/CAMARA API※5を用いて、モバイルネットワークの状況に合わせて経路制御を行う技術のほか、INCとしてユーザ通信装置の近くに設置するサーバ(コンピューティング)と接続、および連携制御を行う技術を新たに開発し実装しました。これにより、ユーザ要望に基づき、ネットワークとコンピューティング双方の区間にまたがる品質要件を、APIだけで短時間に実現できることを確認しました。INCアーキテクチャで、実際にリアルタイムに映像データを転送しAI解析を行うケースに適用した結果、AIモデルの性能限界90%を達成可能であることを確認しました。
本実験はNokia社の協力を得て行ったもので、本実験成果について2025年3月3日(月)~6日(木)にスペイン、バルセロナで開催されるGSMA主催のMobile World Congress Barcelona※6のNokia社ブースにおいて次世代のアーキテクチャの取り組みとして展示いたします。
図1. 実証実験の概要
現在、6Gの国際標準化に向けた議論が各国各団体にて行われており、世界の主要な通信事業者、通信ベンダー、研究機関などが参加する標準化プロジェクト 3GPP※7において2025年以降にアーキテクチャやプロトコルなど技術仕様の策定が予定されています。6Gのユースケースとして、新たに没入型XRやAI(Artificial Intelligence)/ML(Machine Learning)、センシングなどのサービスが提案されています。これらのユースケースに対してユーザが臨場感を損なわず、高品質なサービスを得られるために、6G時代のネットワークは通信の処理だけでなくサービスのデータ処理までを含めてコントロールし品質を担保することが期待されています。
このような期待をとらえ、NTTとドコモは、6G時代のサービスを支えるネットワークの要素技術としてIn-Network Computingを検討しています。国際標準化の議論においても多くの企業から同様の提案があり、INCは6G時代のサービスを実現する主要な要素となると考えられています。
INCでは、ネットワークでサービスの計算処理を支援することで、機能が簡素化された端末においても、6G時代のサービスを快適に利用できるようになることが期待できます。
NTT、ドコモでは、上記の背景のもとINCの基盤としてISAPの研究開発に取り組んでいます。ISAPは、モバイルネットワークと連携しコンピューティングサービスを提供する基盤であり、以下の技術的特徴を備えています。
従来、モバイルネットワークシステムは移動通信端末の接続や移動管理を担い、端末から外部ネットワークに至る低レイヤの接続性を対象としていました。昨今、XRやエッジコンピューティングなど高機能サービスの拡大により、モバイルネットワークシステムにおいても上位のレイヤまたはアプリケーションを意識した通信の制御が求められ、6G時代のユースケースでは一層求められることと考えられます。
NTTとドコモは、INCのアーキテクチャとしてユーザプレーン機能に計算機能を配備し、API経由でモバイルコアネットワークの制御インタフェースを介したコンピューティング機能のセットアップと、端末のネットワーク接続の同時制御についてアーキテクチャを検討し仕様拡張要素を見出しました。
提案するアーキテクチャのポイントは以下3点です。
図2. INCアーキテクチャの仕様拡張
本実験は、Nokia社のGSMA OpenGateway/Linux Foundation CAMARA Projectで検討されているAPIの管理やルーティングを行うプラットホーム(Network as Code)と、3GPP標準準拠のモバイルコアネットワーク(CoreSaaS)をアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に設置し、モバイルネットワーク通信環境を構築して実施しました。
モバイルコアネットワークには、プラットホーム(Network as Code)を介してコンピューティングサービスの起動要求を受けることでISAPへの通信経路設定を行う制御を新たに導入しました。ISAPのDPUやGPUなどのアクセラレータ※10を搭載したコンテナ基盤上での制御も併せて、コンピューティングサービスの起動要求に応じて通信と計算を一括して起動制御する構成を実装しました。(図3)
図3. 実証実験のシステム構成
実証実験において、CAMARA APIベースのコンピューティングサービスの起動要求に応じたモバイル接続を提供する機能の動作を確認し、実用に向けてモバイル端末でのオンデマンドなコンピューティングサービス利用が可能なことを確認しました。また、例としてAIによる映像解析アプリケーションを本環境で動作させ、モバイルネットワークと連携したコンピューティングサービスの効果として、端末~サーバ間のデータ交換遅延と揺らぎを最小限に抑えたことで、従来アーキテクチャでは57%だった正答率を90%のAI自体の性能限界まで向上することを確認しました。
図4. ネットワークを介して映像を送信しAIで解析した結果の表示画面
NTT、ドコモは、6G時代のモバイルネットワークと連携したコンピューティングサービスの提供に向け、INCの検討を継続するとともに、低遅延と帯域確保を必要とする高機能なソリューション・サービスへの展開をめざし、技術検討を進めサービス具現化を進めます。
また、NTT、ドコモは、Nokia社とも連携し、2025年の議論開始が予定されている6Gのアーキテクチャの3GPP等での国際標準化に向けて通信事業者・通信機器/端末メーカ、クラウド事業者、サービス提供事業者などとの連携を広げ、INCの研究開発およびサービス提供に向けた検討を推進してまいります。
※1報道発表資料「6G/IOWN 時代のコアネットワークである「インクルーシブコア」アーキテクチャの確立とメタバースを活用した実証実験を実施」:
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/10/25/pdf/231025aa.pdf
※2インクルーシブコア:
NTTが提案する6G/IOWN時代のネットワークアーキテクチャ。
ネットワークを介し様々な融合と協調を実現し、AI統合型のコミュニケーションやサイバーフィジカルシステムなどの6G/IOWNのユースケースに必要な、コンピューティングとネットワークの融合を実現します。
・「インクルーシブコア」技術仕様に関するホワイトペーパー
https://www.rd.ntt/ns/inclusivecore/whitepaper_ver1.html
・報道発表「6G/IOWN 時代のコアネットワークである「インクルーシブコア」アーキテクチャの確立とメタバースを活用した実証実験を実施 ~萌芽的技術コンセプトの「In-Network Computing」と「SSI」を取り入れたコアネットワークを構成~」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/10/25/pdf/231025aa.pdf
※3In-Network Computing:
アプリケーションレイヤの処理機能をネットワーク内のデータ転送機能に移譲し、遅延や端末の消費電力を低減しつつ、高性能・高機能なサービスを実現する技術コンセプトです。ネットワーク内にあるスイッチなどの装置へ情報処理をオフロードすることで、端末の負荷を低減することが期待されます。
※4GSMA Open Gateway:
GSMA Open Gatewayは、通信キャリア網の機能を提供するためのキャリア共通API策定に向けて、GSMA(Global System for Mobile Communications Association)内で立ち上げられたプロジェクトです。2024年時点で、62のモバイル事業者が参画しており、策定中のキャリア共通APIの世界的な商用化に向けて活動しています。
※5Linux Foundation CAMARA API:
CAMARA ProjectはLinux Foundation配下のオープンソースプロジェクトであり、アプリケーション開発者が通信キャリア網の機能を、国や通信キャリアを問わずに利用するためのキャリア共通API(Application Programming Interface)の仕様策定を進めています。
※6Mobile World Congress Barcelona:https://www.mwcbarcelona.com/
※7標準化プロジェクト 3GPP:移動通信システムの規格策定を行う国際標準化プロジェクト
※8ISAP(In-network Service Acceleration Platform):
In-Network Computing として端末やクラウドでのサービスに係る情報処理を仲立ちし、両者を高速に同期・協調させながら、通信環境やサービス利用環境に即したネットワーク内のハードウェアでの連鎖的な処理基盤を形成します。端末とクラウドの情報処理をいつでもどこでもネットワークが協調させ高速化するので、お客様環境や端末、サービスに制限されないフレキシブルなサービス体験の創出につながります。ISAP により、端末スペックやアクセス環境を問わず様々な先進的なサービスを利用できるようになり、サービス提供者より多くのユーザにサービス提供が可能となります。
※9UPF(User Plane Function):
5Gネットワークの機能の一つで、データ転送やトラフィックのルーティングなどを実行します。
※10アクセラレータ:
コンピュータの処理速度を向上させるハードウェアやソフトウェアを指し、本実証ではハードウェアアクセラレータとしてData processing unit(DPU)、Graphic processing unit(GPU)を指します。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
問い合わせフォームへ
株式会社NTTドコモ
ブランドコミュニケーション部 広報担当
TEL:03-5156-1366
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