2026年4月13日
お知らせ
2026年4月13日~4月17日にスペインのバルセロナで開催される、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)分野におけるトップ国際会議CHI2026「The ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI) 2026」に、NTTの研究所より提出された11件の論文が採択されました。CHIはヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)分野におけるトップ国際会議として知られています。
所属としてそれぞれ略称で書かれている研究所名は、以下の通りです。
社会研:NTT社会情報研究所
人間研:NTT人間情報研究所
先デ研:NTT先端集積デバイス研究所
主な論文の概要は以下の通りです。
茂木 大和(京都大)、赤堀 渉 准特別研究員(社会研)、山下 直美(京都大)
自己開示はメンタルヘルスの向上に繋がることが示唆されている。近年では、チャットボットは自己開示時に他者から評価されるリスクを低減できるため、ユーザの自己開示を促進する手段として注目されている。一方、音声対話型チャットボットは普及しているものの、チャットボットの音声の特性がユーザの自己開示に与える影響は十分に解明されていない。そこで本研究では、チャットボットの音声を本人・家族・他人の声を合成した音声の3条件で比較する14日間の実験(N=61)を実施し、チャットボットに対する印象と自己開示の差異を分析した。その結果、本人音声の条件ではチャットボットに対する魅力度が高く、継続的に深い自己開示を促すことが示された。本成果は、チャットボットの音声インタフェース設計において、継続的な自己開示を促す仕組みの設計に貢献することが期待される。
長谷川彩子(NICT)、笠間貴弘(NICT)、秋山 満昭 上席特別研究員(社会研)
セキュリティおよびプライバシー(S&P)設定の構成は、専門知識を持たないユーザにとって難しい場合があります。そのため、人々は意思決定の際に、他のユーザの選択(社会的証明)や専門家の推奨といった説得的な手がかりに頼ることがあります。これらの手がかりは、より保護的な設定の選択を促す場合がある一方で、保護レベルの低い設定へと誘導する欺瞞的なパターンとして悪用される可能性もあります。本研究では、一般ユーザの意見や専門家の助言といった情報源に基づく提案が、論理的な説得メッセージと組み合わされた場合にユーザの意思決定にどのような影響を与えるのかを検証しました。また、それらの提案が欺瞞的であった可能性をユーザに提示した後、ユーザがこれらの手法をどのように評価するかについても調査しました。米国の1,433名を対象にオンライン実験を実施した結果、説得メッセージは社会的証明や専門家の権威に基づく手がかりの影響を強めることが明らかになりました。さらに、その効果は、より保護レベルの低い設定を促す場合でも持続することが確認されました。これらの結果は、S&P設定のインターフェース設計において、透明性と合理性に基づく説得的設計の重要性を示すとともに、ユーザがこうした提案を批判的に評価できるよう支援することの必要性を示しています。
進藤 真人 研究員(人間研)、高野 詩菜 研究員(人間研)、佐子 柊人(日大)、宮田 章裕(日大)、青木 良輔 主任研究員(人間研)
eスポーツは、誰もが参加できる可能性を持つ一方で、身体障がい者にとっては操作方法のアクセシビリティという課題も指摘されている。本研究では、ゲーム操作を身体の動き(位置・姿勢)に基づく運動学的入力から、筋肉の収縮・弛緩による力調整に基づく運動力学的入力へ転換することで、インクルーシブeスポーツに向けた新たなパラダイムを提案する。具体的には、筋肉の電気信号を読み取って操作する筋電操作インタフェース(EMG-IF)を用いることで、力加減を通じたゲームプレイを可能にする。本研究の目的は、身体障がいの有無に関わらず、このEMG-IFがプレイヤー間でどの程度共通のゲーム操作になり得るかを探ることである。調査1では、障がいのない参加者20名を対象に、手首や肘などの動きの大きさがEMG-IFの操作性に与える影響を調査した。調査2では調査対象を身体障がいのある参加者8名に拡大し、障がいの有無による操作性の違いを比較した。結果として、各EMGセンサに対応する筋肉について「力を入れる・抜く」動作を個別に制御できる場合、障がいの有無に関わらず同等の操作性になり得ることを示唆した。一方で、障がいに関連する不随意筋活動や意図しない筋の同時収縮は、EMG-IFによる操作に大きな影響を与える課題となる。
久保 勇貴 研究主任(人間研)、新島 有信 特別研究員(人間研)、小池 幸生 主幹研究員(人間研)、志築 文太郎(筑波大)
指輪型デバイスは、指に装着しタッチ操作により周辺の機器を操作できる一方、小ささゆえ誤入力が起きやすく操作の種類も限られています。本研究では、指輪の外周を平面ではなく斜めに面取りした形(ベベル形状)にし、角度の異なる各面にタッチセンサを搭載することで、その角度差から別の面に触れることを低減させ、タッチ入力精度を向上する手法を提案しました。幅6mmの指輪型デバイスにおいてベベルあり/なし条件を比較し、ベベルあり条件が9つのタッチジェスチャを有意に高い精度かつ低い誤入力率にて行えることを確認しました。本手法を通じて、形状の工夫が有用であることを示し、今後の指輪型デバイス設計に新たな方向性を提示しました。
筋電気刺激(EMS)は、書道における筆圧制御のような微細運動課題の支援にも応用できる可能性がある。しかし、従来のステップ型 EMS(StepEMS)では、目標強度が急激に印加されるため、不随意な開始時のぴくつきが生じやすく、運筆軌跡を乱してしまうことが多い。そこで本研究では、パルス幅を約 1 秒かけて目標レベルまで徐々に増加させる RampEMS を提案する。これにより、筆圧変調を維持しつつ、急激な動きを抑制できる。ユーザスタディでは、書道課題において RampEMS と StepEMS を比較し、RampEMS は、筆圧変調を可能にしながら、ストロークの乱れを有意に低減することが示された。
佐子柊人(日大)、池田知樹(日大)、青木良輔 主任研究員(人間研)、宮田章裕(日大)
サンドバッギング(意図的に実力を隠して期待値を下げる行為)はeスポーツの公平性を損なう。非言語的合図が著しく制限されるeスポーツ環境では、サンドバッギングは実スポーツと同様の方法で表現・観察できない。その結果、サンドバッギングが具体的なゲーム内行動としてどのように現れるかは、依然として十分に理解されていない。本研究では、制御された一人称視点シューティングゲームの照準タスクから収集した操作ログの分析を通じて、サンドバッギングの行動特性を調査した。10名の参加者が高努力条件とサンドバッギング条件の両方でタスクを実行し、その間、発射回数や命中回数などの詳細な指標が記録された。分析の結果、eスポーツプレイヤーは少なくとも2種類の異なるサンドバッギング戦略を採用する可能性があることが明らかになった。1つは意図的なミスをほぼ回避しつつ、発砲数を一貫して抑制する戦略である。もう1つは試行ごとに戦略を切り替え、発砲数の抑制と発射頻度を下げずにミスショットを意図的に増加させることを交互に行う戦略である。本研究はサンドバッギング行動に関する基礎的な実証的知見を提供するとともに、eスポーツにおける自動サンドバッギング検出手法の開発に向けた重要な方向性を示唆している。
高橋 公海 主任研究員(社会研/BMP)、税所 修 研究主任(社会研/BMP)、井上 孝史(社会研)、田中 雄次郎(先デ研/BMP)、松永 大地(先デ研/BMP)
深部体温(体の内部の温度)は、体内時計が1日の中でどのタイミングにあるかを示す指標の一つであり、近年の非侵襲センサの登場によって、日常環境の中で計測し、その変化を可視化することが現実的になりつつある。しかし、こうした体内時計に関するフィードバックは多くの人にとって馴染みがなく、どのように解釈し、信頼し、活用すればよいのかは十分に明らかになっていない。
本研究では、非侵襲深部体温推定センサと可視化システムを用いて2週間のフィールド調査(N=12)を実施し、その後半構造化インタビューとテーマ分析を行った。分析の結果、人々は指標の意味やその根拠を十分に理解できない場合、データへの信頼や活用が難しくなり、日常生活での行動に結びつきにくいことが明らかになった。
本成果は、体内時計に関するデータを分かりやすく提示し、日常生活の中で行動改善につなげるためのインタフェース設計に貢献することが期待される。
中條 麟太郎(東大)、秋山満昭 上席特別研究員(社会研)、Jack Jamieson 准特別研究員(社会研)、渡邊淳司 上席特別研究員(社会研)、Ari Hautasaari(東大)、苗村 健(東大)
攻撃的または強い否定的感情を伴うソーシャルメディア投稿への日常的な接触は、感情伝染を通じてユーザのデジタルウェルビーイングを損なう可能性がある。本研究では、書体の可読性を調整することで、こうした投稿の影響を緩和できるかを検証した。高い感情喚起を伴う投稿を検出し、その表示に用いる書体の可読性を動的に低下させる機能を備えたクライアントを開発し、7日間のフィールド実験(N=6)を実施した。その結果、従来の表示方法と比較して、可読性を下げることでユーザは投稿との心理的距離を保ち、衝動的な反応を抑える傾向が確認された。
本成果は、ユーザの自律性を保ちながら、ソーシャルメディア上の情報をより冷静かつ批判的に捉えることを支援するインターフェース設計に貢献することが期待される。
トピックスに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。
NTTとともに未来を考えるWEBメディアです。