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2019年6月14日

トップ選手たちと過ごす、
夢のような時間
NTT東日本バドミントン教室

「よろしくお願いします!」。朝10時、福島県郡山市にある帝京安積高等学校の体育館。今日は日曜日ですが、福島県県下の小学生から高校生まで、バドミントン部員86人が集まりました。NTT東日本バドミントン部の選手・コーチたちから指導を受け、試合をし、一日バドミントンを楽しむ「NTT東日本バドミントン教室」は、2001年2月にはじまり、今年(2019年)で17回目を迎えます。

画像:選手と一緒に、ウォーミングアップ 選手と一緒に、ウォーミングアップ

「こんな夢のようなお話、はじめは信じられませんでした」と、第1回開催当時を振り返るのは、福島県バドミントン協会理事長の橋本遊二さん。地域貢献活動の一環として、バドミントン教室を開催できないかとNTT東日本から打診があったとき、当時副理事長だった橋本さんはじめ、協会内の誰もが「素晴らしい企画だ」と喜びました。

「子供たちにとって、トップ選手のプレーを間近で体験することができる機会なんて、めったにない」と、積極的に受け入れることを決めました。「第1回では、特に子どもたちも緊張して、時にしり込みするような場面もありました。それだけ子どもたちにとっては『雲の上』のような存在だったのでしょうね」

画像:福島県バドミントン協会理事長・橋本遊二さん 福島県バドミントン協会理事長・橋本遊二さん

そこから17回を数える継続的な取り組みになることも、当時は考えられなかったと橋本さんは言います。「単発のイベントなんだと思っていました。ですから翌年、また開催したいと連絡があったとき本当に驚きましたし、こんなに長く続くなんて夢にも思いませんでした」。回を重ねるごとに、子どもたちも次第にのびのびとした表情を見せはじめたといいます。

また、バドミントン協会としてこの教室を「選手育成」に役立てようという考え方も固まりはじめました。「広くみんなにバドミントンの楽しさを伝える、という考え方もあったと思いますが、私たちは、もっとうまくなりたい子どもたちに、トップ選手と直接触れ合い、プレーを間近に見ることのできる機会をつくり、福島県のバドミントンのレベルを底上げしたい、と考えました」。そこで参加者は、小学校・中学校・高校の各連盟からの選抜方式としました。「これも、この教室が継続的な取り組みになってくれたからこそ、なんです」(橋本さん)。「福島県のバドミントンのレベルを上げたい」という橋本さんの思いは、様々な形で結実しはじめています。

画像:基礎的な技術から、しっかりと丁寧に伝える 基礎的な技術から、しっかりと丁寧に伝える

「教える楽しさ」を学び、指導者の道へ

帝京安積高等学校のバドミントン部を指導する同校教員・村越雄太さんは、このバドミントン教室に中学1年生から高校3年生まで参加しました。「はじめて参加したときは、トップ選手のプレーに衝撃を受けました」。それまで見たことのないパワー・スピードに圧倒されると同時に、刺激を受けたといいます。「あの選手たちのようになりたい、という憧れの気持ちからでしょうか、日頃の練習に向かう姿勢も変わっていったと思います」。

参加を重ね、バドミントン選手として、また人間として成長を続ける中で、バドミントン教室から受け取るものも変化していったといいます。「細かい技術や、戦い方のメンタルなど、第一線で戦っている選手から、より具体的なアドバイスをいただける機会になりました」(村越さん)。そんな中で村越さんが気づいたのが「教えること」の楽しさ。「選手の皆さんが、本当に楽しそうな顔で教えてくれるんです。「ああ、教えるって、楽しそうだな」と印象に残りました」。東京の大学でバドミントンを続け、社会に出てもバドミントンと関わり続けたいと願っていた村越さん。バドミントン教室で感じた「教える楽しさ」を自分も味わいたいと、教師の道を選択しました。今は指導者としてこの教室の運営に関わる村越さんは、「生徒たちには、一分一秒をムダにせず、この貴重な機会をしっかりと役立ててほしい」と願っています。

この日受けた刺激を、日々のプレーに生かす

帝京安積高等学校2年の男子生徒は、今年が3回目の参加となります。「昨年までは"あのショット、すごいな"と感心して見ているだけだったのですが、今年は「どうやって打ち分けているのだろう」と、より深く考えることができるようになりました」。

尚志高等学校1年の女子生徒は、「私が中学生の時、スター選手だったんです」と、福島県立ふたば未来学園高等学校出身の永井瀬雰(せぶん)選手に会えるのを楽しみにしていました。「一つひとつのプレーがとても丁寧です。パワー型で少し雑なところのある私にとって、とてもいいお手本になります」。裏磐梯中学校3年の男子生徒は「今日、ひざの使い方を教えてもらいました。いつも重心が高くなってしまうことを気にしていたのですが、ひざを使うことでお尻を下げ、重心を下にすることができると教えてもらって、とても勉強になりました」と言います。

参加した子どもたちは、それぞれに貴重な体験をし、大いに刺激を受けました。それを日々の練習やプレーに生かしてくれることでしょう。

画像:トップ選手と試合できる「チャレンジマッチ」では、みんな真剣 トップ選手と試合できる「チャレンジマッチ」では、みんな真剣

「福島への恩返し」と「自分の原点」に出会える機会

教える立場のNTT東日本バドミントン部の選手たちも、この日を楽しみにしていました。

福島県立富岡高校出身で、高校時代この教室に参加した経験もある齋藤太一選手もその一人。高校2年の時に東日本大震災があり、富岡町から猪苗代町に移ることになった経験があります。

「あの時は、バドミントンが続けられるかとても不安でした。でも、福島のみなさんが支援してくださったおかげで、こうしてプレーを続けることができました」。今回の教室に、恩返しの気持ちも込めます。

「中学・高校の時の努力が、今の自分を作ってくれている」という齋藤選手、参加してくれた子どもたちには、「今を必死に頑張ってほしい。それが未来の自分につながるんだ、ということを伝えたいです。この中からどんな選手が生まれてくるのか、わくわくしますね」と話してくれました。

画像:バドミントン部・齋藤選手からアドバイスを受ける子どもたち バドミントン部・齋藤選手からアドバイスを受ける子どもたち

ふたば未来学園高等学校出身の永井瀬雰選手は「福島のみなさんには、本当にあたたかく迎え入れていただきました」と話します。

震災の後、2012年に新潟から入学してきた永井選手。寮生活に戸惑いながらもなんとかやってこられたのは、部活や学校の仲間、先生など周囲で支えてくれる人、そして地域の皆さんのおかげ、と言います。「ランニングなどをしていると、町の人が"がんばって!"と声をかけてくれるんです。地域でのイベントなどにも参加させていただきました。中学・高校と過ごした福島県は"第二の故郷"のように思っています」。

今回がはじめての参加する子どもたちのプレーぶりに刺激を受けているそう。「みんな一生懸命で、バドミントンに全力で打ち込んでいることが伝わってきます。私も、同じ年頃の時持っていたがむしゃらさを思い出します。自分の原点に戻れるいい機会だと感謝しています」。

画像:「チャレンジマッチ」で子どもたちからの挑戦を受ける、バドミントン部・永井瀬雰選手 「チャレンジマッチ」で子どもたちからの挑戦を受ける、バドミントン部・永井瀬雰選手

変わらずに支えることに、大きな価値がある

「ずっと支援し続けてくれていることに、大きな意味があるのです」と話す橋本理事長。東日本大震災が発災した2011年。「福島のバドミントンにとっても、大変厳しい状況でした。バドミントンを辞めざるをえない子どもたちもいましたし、学校によっては、部活動自体を辞めてしまうところもありました」。

当然この教室も中止だろうと思っていた橋本理事長のもとへ「今年もやりませんか」と連絡があったとき「とても驚いたし、とても嬉しかったことをおぼえています」。震災の前も、震災の後も、変わらず、支援し続けること。そのことが、地域や子どもたちにとって、大きな価値となる。福島のバドミントン教室は、地域の人たちにとっても、私たちにとっても、かけがえのない「宝」に育っています。

画像:あこがれの選手とふれあえた、思い出に残る一日 あこがれの選手とふれあえた、思い出に残る一日

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