日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、2023年に発表した新中期経営計画における基本的な考え方として「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために。」を掲げ、新たな価値創造と地球のサステナビリティのために持続可能な社会の実現をめざしています。
NTTグループでは、2013年より、国内外のグループ各社が取り組む持続可能な社会に貢献する施策を披露・共有することを目的として「NTT GROUP サステナビリティカンファレンス」を実施しています。今回は、過去最多22カ国・地域のグループ会社から過去最多149施策のエントリーがあり、特設サイトのPV数は累計約60万件(前年27万件)、いいね数26万件(前年6万件)と盛り上がりを見せ、優良施策の共有、事例の水平展開を通じて、サステナビリティに対する意識、関心がますます高まりを見せています。本カンファレンスを通じ、NTTグループは今後もサステナビリティの実現に向けた取り組みを推進していきます。
1. 第11回NTT GROUP サステナビリティカンファレンス2023 表彰式概要
日時:2024年6月10日(月)
対象:NTTグループ各社(国内:7社、海外:7社)
内容:受賞施策の発表・表彰等
全149施策のエントリーから選ばれた最優秀賞6施策、優秀賞8施策を表彰
2. 最優秀賞施策内容について
国内外のNTTグループ会社における最優秀施策は、新しいアイデアで人々の豊かな暮らしに寄与すると共に、持続可能なグローバル社会の実現に貢献しています。また、地域に密着しながら、自らの事業として社会課題を解決する要素が強く、ビジネスとサステナビリティの両立にチャレンジする取り組みとなっています。
<グローバル部門>
(1)NTT Belgium(ベルギー)
スマートモニタリングによる節水 ~漏水・逆流を検知・予知する水配送ネットワークソリューション~
ヨーロッパ全土の約40%で社会課題となっている漏水の削減に向け、水使用の最適化、特に漏水や逆流の見地に課題を抱えているリエージュ市において、CISCO等の協力を得て、水の使用量を監視するシステムを開発しました。IoTデバイス、ビッグデータ、AIを活用し水配送ネットワークの状態をリアルタイムで把握、老朽化したパイプラインを優先的に交換できる仕組みを構築し、漏水、逆流などの問題をセンサーが検出。水使用量の最適化と衛生管理を実現する節水インフラが、市合計245,000台のうち65,000台が配備されており、2023年には100万立方メートル以上の節水に貢献し、2024年には倍増の200万立方メートルも見込まれています。
リエージュ市の結果を他地域にも導入し、国家間での水交換に備え、双方向の流量を計算して適切な量の水が汲み上げられるように測定も開始し、市民、現場作業員を含めた関係者全員に水消費に対する意識の醸成と習慣化にも注力しています。
施策内容詳細https://group.ntt/jp/sus_conf/B17.html
- (2)NTTグローバルデータセンター(アメリカ・インド・オーストリア・ドイツ)
ネット・ゼロ・コミットメントを達成するためのデータセンターの脱炭素化
~環境負荷を下げる世界各地のデータセンターの挑戦~
世界的な電力不足、エネルギーコストの上昇などの影響を受けやすいグローバルデータセンターの環境負荷を低減する取組を実施し、各地でのパイロットプロジェクトから得られた成果とノウハウを展開しています。
- ①アメリカ・シカゴ
これまでExcelで行っていた電力管理をデータトラッキングに移行、電力量を最適化しました。
- ②インド・ムンバイ
機器の冷却に直接接触式液体冷却※1(DCLC)、液浸式冷却※2(LIC)の2つの手法を導入し、年間PUEが1.2~1.25へ大幅に改善しました。
- ③オーストリア・ウィーン
冷却機械の燃料として第2世代バイオ燃料であるHVO(水素化処理植物油)を採用し、CO2などの温室効果ガスの純排出量を最大80%、窒素酸化物(NOx)を8%削減しています。
- ④ドイツ・ベルリン
約60℃まで加熱された冷却水の熱を回収、付近のマリエンパーク商業地区に暖房として提供し、排熱を利用した化石燃料を使わない暖房と脱炭素化に貢献しています。
施策内容詳細
アメリカ:https://group.ntt/jp/sus_conf/B31.html
インド:https://group.ntt/jp/sus_conf/B32.html
オーストリア:https://group.ntt/jp/sus_conf/B33.html
ドイツ:https://group.ntt/jp/sus_conf/B46.html
- (3)NTTDATA Argentina(アルゼンチン)
農作物トレサビリティ システマ・インテグラ ~環境負荷とコストを同時に低減させる出荷・管理システム~
植物検疫製品は20リットルのドラム缶で販売されており、アルゼンチンでは年間15,000トンのプラスチック廃棄物が発生していました。システマ・インテグラによって、認証を受けたエンドツーエンドのトレサビリティを実現し、バルク販売が可能となりました。これにより、包装のための容器やドラム缶が不要となり、プラスチック廃棄物の量が大幅に削減され、2200万個のプラスチック容器が不要となりました。
この取組は製品在庫の監視機能、消費量と損失の特定、物流コストや製品在庫を監視し損失を特定する運用コスト低減にも繋がり、カーボンフットプリントの削減、詐欺・混入物の防止にも繋がっています。
施策内容詳細https://group.ntt/jp/sus_conf/B29.html
<国内部門>
- (4)NTT東日本-東北(福島)
「スマート陸上養殖」での地域循環型社会の創出 ~「世界初」を生み出す産官学の取組~
海洋環境の変化による不漁、担い手不足などにより魚の安定確保・供給が課題となっている中、これまで養殖困難とされてきたベニザケを陸上で養殖するプロジェクトに地元スーパーのいちいや岡山理科大学等と共同で取り組み、ビジネスベースでの大型化に世界で初めて成功。2025年の年間10億円の売り上げに向けた計画を進めています。
生産から加工流通消費までの一貫体制を構築する中で福島県内の廃校を拠点にし、地域遊休アセットの活用にも取り組み、陸上養殖ならではの閉鎖循環式陸上養殖システムは、従来のかけ流し式陸上養殖システムと比較して環境負荷が大きく軽減されます。
※サステナブルのポイント
①好適環境水®:成長速度が約2倍になり飼育期間が半減するためエネルギー消費量を削減可能
②閉鎖循環:魚の排泄物や飼料残渣を含む飼育水を海や川に排水せずに処理して再利用可能立地制約がないため地域の遊休アセット等の活用が可能
③データドリブンなシステム:ICTを活用することで、養殖未経験の方でも専門家の支援を仰ぎながら飼育ができる環境を構築し、担い手不足が課題の水産業の振興に貢献が可能
施策内容詳細https://group.ntt/jp/sus_conf/A57.html
- (5)NTTテクノクロス(東京)
AI技術で子どもの「命」を守る ~児童相談所用の音声認識モデルによる地域の安心安全づくり~
児童虐待の相談件数が過去最多を更新し、児童相談所の業務逼迫など、業務効率化は喫緊の課題となっています。本プロジェクトでは江戸川区児童相談所と連携のもと、児童相談所用の高精度音声認識モデルを開発し、児童相談所特有の相談内容への対応、正確な情報収集と記録作成を支援しています。緊急性の高い通話は即時に上司にエスカレーションされることで、虐待早期発見や迅速な対応に繋がり、トラブルの事前回避に寄与しました。
応対に必要な情報の自動表示やヒヤリング項目の自動チェック機能など、職員のユーザビリティ向上にも注力し、職員の経験差に寄らない応対の平準化と質向上、新任職人の応対補助、対応迅速化に貢献し、職員一人あたりの業務を月間約10~20時間以上削減できました。今後は他の地域への展開、各種公的窓口、保健所、警察、消防への技術・ノウハウの流用などの広がりも見込まれています。
施策内容詳細https://group.ntt/jp/sus_conf/A1.html
- (6)NTT西日本大分支店・地域創生Coデザイン研究所(大分)
障がい者雇用×地域企業DXによる共生社会実現 ~障がい者の社会参画・定着に向けた就労モデル構築~
大分県内の地元企業と事業協同組合を設立し、障がい者を共同で雇用するとともに、NTT西日本のICT商材や特例子会社であるルセント社のノウハウを活用したマネジメントを事業協同組合で活用することで企業の業務をモジュール化、中小企業や地方の企業の参画を促しています。
就労後1年の定着率95%(全国民間企業平均50%)と、障がい者の雇用と企業の業務効率化を同時に実現し、ノウハウを蓄積させながら障がい者の業務量確保に共同で取り組むとともに、障がい者の就労定着・育成を支援することで、啓蒙活動を通じ活動の輪を広げています。
施策内容詳細https://group.ntt/jp/sus_conf/A30.html
3. 今後の取組について
NTTグループでは「新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」を掲げ、①IOWNによる新たな価値創造、②データドリブンによる新たな価値創造、③循環型社会の実現、④事業基盤の更なる強靭化、などの取り組みを進め、「お客さま体験(CX)の高度化」並びに「従業員体験(EX)の高度化」を進めてまいります。本カンファレンスもその一つとして、各社の施策をグローバル社会に発信していけるよう引き続き取り組みを進めてまいります。
【参考】
※1液浸冷却:液体誘電体冷媒で満たされたタンクにIT機器を直接浸すソリューション。
※2直接接触式液体冷却:IT機器の内部を冷却水が通過し、熱を取り出すシステム。