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2024年8月30日

日本電信電話株式会社
国立大学法人東北大学

東北大学×NTT 社会や地域の課題解決に向けた分野横断型共同研究を開始
~リモートワールド・ロボティクス・超感覚における人間・社会拡張を通じ、多様な社会課題を解決~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:島田明、以下「NTT」)と、国立大学法人東北大学(宮城県仙台市、総長 冨永悌二、以下「東北大学」)は、社会や地域の課題を解決するため、東北大学の強みであるナノテラス※1、災害科学/医療、ロボティクスとNTTの人間拡張技術とIOWN※2を基盤として融合させた新たな価値の創出をめざし、さまざまな分野を横断したビジョン共有型共同研究を2024年9月より開始します。

1. 背景

これまで東北大学とNTTはビジョン型共同研究として2期6年間の共同研究を実施してまいりました。第一期(2018-2020年)※3では、東日本大震災を経験した東北大学が持つ災害ビッグデータと、NTTが持つコミュニケーションサービス基盤技術を組み合わせることにより、安心・安全のいずれかが欠如した状態から、安心かつ安全な状態へ行動変容を実現する研究テーマに取り組みました。第二期(2021-2023年)※4では、災害だけでなく地球や社会・地域を正確に捉えた上で未来を予測し、しなやかに行動することでの「超レジリエンス社会」の実現と位置付け、共同研究テーマを創出しました。
 第二期は以下の成果を創出しました。

  1. 被災予測デジタルツインを活用した意思決定支援
     行政担当者等ができるだけ早い段階で災害の可能性を認知し、災害時に自ら適切な対応を取れることを目的とした被害予測デジタルツインの開発を行い、令和元年東日本台風において被害を受けた宮城県丸森町を対象に、実災害時の被害状況や避難所への避難率を再現するモデルを実現しました。デジタルツインにより災害対応の分析や最適化につながることができました。
  2. 次世代避難システム構築および地域住民の防災行動促進を目的とした介入モデル
     東日本大震災発生からの13年間で蓄積した知見や備え・対策から、次世代の避難のあり方を提言し、その実現を目的としました。共同研究では新たな災害に備える価値観の醸成や行動変容を促す技術の確立、実現に必要な社会対応基盤の要件定義を行い、基本的な考えを「IRIDeS(※5)スタンダード」としてまとめました。

これまでの共同研究は、NTTと東北大学災害科学国際研究所が中心となり、災害対策の研究を行ってきました。第三期は、災害科学に加え、東北大学の次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」、およびNTTが推進するIOWN構想という新たな取り組みを活用し、加えて体制面を複数の組織や研究者を横断したものへと強化し、新たなビジョン型共同研究をスタートします。

2. 本共同研究体制の意義

東北大学は、2023年9月に「国際卓越研究大学」の唯一の認定候補として選定され、現在その最終認定に向けた審査が進められているところです。東北大学は高い研究能力から日本を先導する研究大学として認知されています。2023年5月、仙台市で開催されたG7仙台科学技術大臣会合で大きな目玉となったのが、東北大学災害科学国際研究所への視察と東北大学・青葉山新キャンパスに建設中の次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」です。ナノテラスとは本学青葉山新キャンパス内に誕生した東京ドームほどの大きさの次世代放射光施設(巨大顕微鏡)です。太陽光の10億倍以上の明るい光で、様々なモノの内部や表面をナノスケールで観察できるだけでなく、様々な観察手法を駆使してモノが示す機能のミクロな仕組みをも可視化できます。2024年度から運用開始をしており、海外からも大きな注目を集めています。
 NTTは、IOWN構想のもとスマートな世界を実現する、最先端の光関連技術および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤を研究開発しています。IOWNの圧倒的な低消費電力、大容量・高品質、低遅延なネットワークにより、新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会の実現をめざしています。
 東北大学とNTTはこれまで多数の共同研究を行ってきましたが、複数の組織や研究者を横断した体制とはなっていませんでした。しかし、現代の複雑にからみあう社会課題を解決するには、共通のビジョンを共有し、複数組織・研究者に横串を通した研究体制の構築により、様々なスキル・考え方を持ち寄り検討することが必要と考え、本体制を導入しました。
 また、研究による技術創出に留まらず、創出した技術を社会へ展開するための既存制度への提言や、ビジネスモデルの構築まで実行していくことが重要となります。
 そのため、「ビジョン共有型共同研究」という枠組みの中で、複数の研究機関を横断した研究を実施します。東北大学とNTTが連携することにより、人類の未来に貢献しうる新しい技術の創出を実現します。

3. 共同研究の概要

① 共同研究テーマ

テーマ検討は、「社会や地域の課題を解決するため東北大学の強みとIOWNを融合させた新たな価値を創出すること」をビジョンに掲げ、2023年度後半より検討を開始しました。東北大学ならではの共同研究テーマを創出すべく、東北大学からは国際放射光イノベーション・スマート研究センター、サイバーサイエンスセンター、工学研究科、災害科学国際研究所など7組織、NTTグループからは研究機関だけではなく事業会社を交えた総勢30人でワークショップを開催し、共同研究のテーマを創出しました(図1)。
 共同研究ではIOWNを基盤として東北大学のナノレベル分析基盤等とNTTが持つ人間拡張の技術を組み合わせることで新たな価値の創出に取り組みます。
 以下の3つのテーマを軸に推進します。

  • テーマA. サステナブルな地域社会を実現する自律分散協調リモートワールド
    災害科学×リモートワールドで実現する「地域の命を守るメタバース空間のヘルスケアサービス」
  • テーマB. ロボティクスによる個と組織のヒューマン・エンパワーメント
    ロボティクス×サイバネティックス技術で実現する「マルチモダリティ表現技術とロボットを活用した次世代技能遠隔学習」
  • テーマC. さまざまな世界とフュージョンし「他」を体験できる超感覚ネットワーク
    ナノテラス×五感情報通信技術で実現する「体験できないこと、なれないものになることができるマルチモーダル五感変換復元」

図1. 共同研究のテーマ 図1. 共同研究のテーマ

テーマAでは、災害等から人を救うネットワークサービスにより社会拡張を実現します。具体的にはメタバース空間にマイタイムライン・デジタルヘルスケアサービスの提供の場を作ることにより、医師・専門医不足の解消、地域医療の堅持に貢献し、災害時はデジタル災害避難支援として災害被害の抑制、データに基づく効率的な避難支援、災害関連死の抑制に貢献するとともに、災害アーカイブを活用した減災防災教育に役立てます。平時から地域の課題解決することにより災害時課題を解決することで災害対応がコストにならない社会を実現します。
 テーマBでは、熟練者の技能を遠隔からでも容易に学べるシステムの構築を行い、誰もが新しい技能習得に挑戦できる環境を提供することをめざします。特に、主観的で曖昧な指導言語情報や熟練者の技能情報を、視覚や触覚などの非言語情報に変換するマルチモダリティ表現技術を開発し、マルチモダリティ表現とロボットによる身体的ガイダンスを組み合わせた次世代技能遠隔学習システムを開発します。現在、多くの分野で人手不足が深刻な社会課題となっており、特に熟練者の不足による技能伝承の困難が顕著です。また、作業の得意・不得意や身体的・精神的障がいにより、技能習得が難しい状況もあります。これらの課題を解決したいと考えています。
 テーマCでは、感覚を他の感覚に変換することができる五感相互変換/圧縮/再現技術に取り組みます。これにより例えば視覚に障害がある方が別の感覚に変換することなどができるのではないかと考えています。ナノテラスのナノレベルの可視化技術や分析基盤技術に加えて聴覚や触覚の東北大の技術とIOWNの超高速NWと人間拡張技術を組み合わせることでこれまで人間が理解できていない宇宙、地球、自然、原子レベルなど人間の機能を超越した体験・経験を通した新しい世界観による人間拡張への発展につなげていきたいと考えています。

② 共同研究の体制

本共同研究では、東北大学の7つの研究組織、NTTは7つの研究所が参加した共同研究を実施します(図2)。

■東北大学

  • 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
  • サイバーサイエンスセンター
  • サイバー&リアルICT学融合研究センター
  • 工学研究科
  • 災害科学国際研究所
  • 電気通信研究所
  • 東北大学病院

■NTT

  • NTT人間情報研究所
  • NTTネットワークサービスシステム研究所
  • NTTアクセスサービスシステム研究所
  • NTT宇宙環境エネルギー研究所
  • NTT先端集積デバイス研究所
  • NTTコミュニケーション科学基礎研究所
  • NTT物性科学基礎研究所

図2. 共同研究体制 図2. 共同研究体制

4. 今後の展開

共同研究では3年間実施します。テーマAは早期の社会実装をめざし事業会社と連携したPoC(Proof of Concept:概念実証)を来年度より実施するとともに3年目にはトライアルと通しビジネスモデルを検討してまいります。テーマBは初年度技能遠隔学習プラットフォームの基礎検討を行い、2年目は技術検証とともにトライアル環境の構築を行い、3年目にはトライアルを行いたいと思っております。またテーマCでは初年度の基礎検討、2年目の技術検証、デモ環境を通して3年目にはナノの世界を体験できる新しい世界観のトライアルを実施するとともに技術要件をまとめたいと考えています。各テーマはそれぞれ人材・技術を連携させることで、より社会や地域に貢献できる研究となるよう取り組んでまいります。
 東北大学とNTTは、東北大学の強みとNTTの人間拡張技術とIOWNとを融合させた新たな価値を創出し社会や地域の課題を解決に貢献します。

【参考】

※1ナノテラス とは、宮城県仙台市青葉区の東北大学青葉山新キャンパスにある放射光施設である。正式名称は3GeV高輝度放射光施設であり、東北放射光施設計画として計画が始まり、2024年4月1日に運用開始した。特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律に云う特定放射光施設である。https://nanoterasu.jp/当該ページを別ウィンドウで開きます

※2IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発を始めています。

※3https://group.ntt/jp/newsrelease/2018/08/28/180828a.html

※4https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/16/211116c.html

※5IRIDeS  International Research Institute of Disaster Science 東北大学災害科学国際研究所

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
E-mail:nttrd-pr@ml.ntt.com

国立大学法人東北大学
産学連携機構
産学共創推進部
E-mail:sangaku-suishin@grp.tohoku.ac.jp

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