機能と特性
機能と特性
ネットワーク&コンピュータの光化と方式刷新
IOWNでは、Well-beingを感じられる世界を持続可能な方法で実現するという難題に挑戦しています。その手段として軸となるのが光技術の導入です。電気に対してエネルギー効率が高く、性能向上と持続可能の両立に重要な要素になると見込まれています。電気は、データの伝送容量(周波数)の上昇に伴って、短区間の伝送でも多大なエネルギーを消費します(図1)。昨今は大容量化が進み、例えば隣接するコンピュータ間、コンピュータ内部のデータ転送でさえも、電気を光に見直すことに価値が生じるようになってきました。
さて、単に電気を光に置き換えるだけでは、IOWNの高い目標を実現できません。ネットワークとコンピュータの方式も含めて見直しが進められています。既存の方式には、エネルギー効率の観点で改善できるポイントがたくさん存在しています。
例えば現在主流のネットワーク方式であるパケット通信(TCP/IPプロトコル)では、必ずデータをパケットに分割し、宛先を各パケットに付け加えて送ります。ネットワークの各ポイント(ルータ)では、毎回パケットの宛先を確認します。これは伝送に光ファイバーを使っている場合であっても、一旦電気に戻す必要があります。これを見直して通信の端から端までを一度も電気に戻すこと無く光の通信のみで完結させるのが、IOWNのAll-Photonics Network (APN)です。データ分割や電気変換の必要性を無くしたことで、超低遅延なネットワークを実現することができます。
コンピュータを並列処理させる場合や、コンピュータ内のデータ転送でも改善できる点があります。現在の方式では、データを転送させるたびにCPUが駆動します。例えば、メモリ-GPU等のアクセラレータ間であってもCPUが介在します。AIの登場で多数のコンピュータを並列して利用することが増えましたが、今のCPU中心とも言うべき方式は非常にエネルギー効率の悪い形態です。これをデータ中心の方式に見直すのが、IOWNのData Centric Infrastructure (DCI)です。DCIはコンピュータの電力効率を飛躍的に向上させることが可能です。
異なる指標の全体最適化
IOWNでは、従来よりも遥かに多種多様で膨大な情報をAPNで伝送し、DCIで効率的に処理することによって、世界・社会の今をより詳細に知り、未来を予測します。これによりWell-beingを感じられる世界の実現をめざしますが、ここで、この世界は単一の評価関数で、その良し悪しを表現できるのかという問いにぶつかります。
我々はこの世(人間の社会)は、相反する価値が互いにせめぎ合う形で存在していると考えています。この矛盾を許容する、多様性を受け止めることが重要であり、Well-beingを感じられる世界を築くための重要なポイントになると考えています。異なる複数の指標がそれぞれには最適ではなくとも、それぞれが許容しあえる解を導くことよって、その実現をめざします。
その実現に必要となるのが、Digital Twin Computing (DTC)です。世の中のあらゆるモノや現象をDigital Twinとして取り込み、様々なシミュレーションを通して未来を予測し、調和のとれた解を求めます。Digital Twinは物理的な情報だけではなく、人の思考や心理といった多角的な情報を捉えることをめざして研究開発が進められています。
さて、情報を大規模に観測、収集、利用するというのは、決して簡単なことではありません。これを持続可能な形で行うには、ICTリソースの柔軟な制御も極めて重要です。この役割を担うのがCognitive Foundation (CF)です。CFはICTリソースを全体最適に調和させて、必要な情報を流通させる機能群です。場所、アプリケーション、環境などに応じて、方式や事業者を意識せず情報を扱えるようにするための技術です。
光電融合デバイスとIOWNロードマップ
光電融合デバイスについては、そのイノベーションにより幾段かの跳躍を期待しています。IOWN1.0ではAPN(All-Photonics Network)サービスを開始し、遅延の目標値1/200を達成しました(図2)。IOWN2.0はボード接続型の光電融合デバイスにより、IOWNはコンピュータの領域へ進展していきます。従来よりも柔軟にパーツを組み上げることが可能であり、かつエネルギー効率の高いコンピュータを実現します。IOWN3.0で容量の目標値125倍を、IOWN4.0は電力効率の目標値100倍の実現をめざします。(図2,3)