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CTOメッセージ

NTTの技術でかなえるウェルビーイングの世界  代表取締役副社長 副社長執行役員 CTO CIO CDO 川添雄彦

IOWN構想の実用化に向けた着実な進捗

NTTの研究開発は、新たなスマート社会の到来を思い描いており、そのために必要なイノベーションとして、革新的なIOWN構想の実現に向けた取組みを進めています。2023年3月には、構想の一部である低遅延ネットワーク、IOWNの第一弾商用サービス(IOWN1.0)を開始しました。2019年のIOWN構想発表当初は、低遅延、広帯域、低消費電力をセットで10年後をめざして提供することを想定していましたが、コロナ禍で通信量が爆発的に増大したことを受け、IOWNの必要性を改めて確信し、前倒しでの提供に至りました。
 既に多くのユースケースが生まれています。例えば遠隔医療の分野では、株式会社メディカロイドの遠隔手術支援ロボット「hinotori」をAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)で操作者と接続することで、低遅延かつ揺らぎない情報伝送を実現し、安定したロボット動作を可能にしました。金融取引の分野でも、株式会社日本取引所グループにおいて東京にある処理システムに札幌や大阪からアクセスする場合、伝送距離による遅延が発生していましたが、APNの導入により、全体の遅延を抑制することに加え、遅延調整機能により距離の遅延差を調整でき、伝送距離に関わらずシステム全体の公平性を担保できるようになります。
 2023年5月に発表した新たな中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered byIOWN」は、IOWNが戦略の要です。先述したように、NTT東日本及びNTT西日本がすでにAPN IOWN1.0の商用提供を開始しており、様々な民間企業で導入が進んでいるほか、国や地方自治体でも活用の輪が広がり、例えば2023年6月には渋谷区とIOWNを活用した新たな街づくりに向けた協業に合意しました。こうしたIOWN構想の実現に向けた取組みを評価いただき、「日経クロステックが選ぶCTOオブ・ザ・イヤー2023」特別賞を受賞いたしました。引き続きCTOとしてしっかりとマネジメントしていきます。
 また、IOWNの普及を推進するためには、グローバルパートナーを巻き込んで仕様や規格を固めていく営みも欠かせません。私自身が2020年1月の設立以来President and Chairpersonを務めるIOWNGlobal Forumは130組織以上のメンバーが参画していますが、ここで事実上の標準であるデファクトスタンダードを定めています。また標準化としては国際機関が定めるデジュールスタンダードも重要です。2023年1月よりNTT出身の尾上氏が国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化局長を務めており、このことは今後のIOWN展開に向けて非常に大きな突破口になると考えています。

サステナビリティを実現する技術力と新たな価値創造

昨今、ChatGPTをはじめとした生成AIが着目されていますが、AIは非常に便利な一方で、大量のデータ処理や電力消費を必要とします。今後も増え続ける社会ニーズに応えるために、NTT研究所ではサステナブルなAI同士がつながり連携するAIコミュニティの形成をめざした取り組みを進めています。
 NTT研究所が開発する小型かつ低消費電力な複数のAIをIOWNでリアルタイムにつなげることで、精度の高い回答や未来予測をサステナブルに実現します。さらには複数の専門性が高いAI同士がIOWNによってつながり連携することでAIガバナンスにも貢献するAIコミュニティを形成します。人をつないできたNTTが、AIもつなぐことで新たな価値創出をめざします。
 このような新たな価値を創造・提供していくためには、これまで以上に高い専門性とスキルを持つ人材を確保し、様々な分野で付加価値を創出していくことが必要不可欠です。今後も外部からの優秀な人材の確保、社員の成長支援に関わる人的投資も拡大していきます。
 また、優秀な人材が十分に力を発揮できるよう、2023年6月にマーケティング機能を含めたR&D組織として、研究開発マーケティング本部を新設しました。
 グローバルでお客さまやパートナーと共創しながら、社会課題の解決に資する研究開発・プロダクト提供を首尾一貫して行うとともに、様々なパートナーとのアライアンスを推進していきます。もちろん、社会インフラを担う使命をしっかりと果たしていくことも必要です。大規模故障やサイバー攻撃の発生を踏まえた強靭なネットワークシステムの実現にも取り組むとともにNTTグループ全体として故障の再発を防止する営みも進めています。
 また、私はCIOやCDOの役割も担っています。CIOとして、2023年4月にはNTTグループ約100社の基幹システムを一斉に刷新し、各社で異なるシステムだったものをグループ共通ITとして統一し、各社のプロセスとデータを標準化しました。これにより基幹システム(共通系システム)が介在するデータの活用および業務プロセスの共通化は格段に進みました。これは現場の協力なくしては実現しませんでした。さらにCDOとして、デジタル技術を活用した業務の標準化、効率化を進めています。例えば前述のグループ共通IT導入で得られたグループ各社に眠っていた多くの情報・データを有効に活用して業務効率化を進めるだけでなく、社内DX推進イベント等でパーパスや行動指針などとともに更なるDXの風土醸成を図り、変革の過程で得られた従業員体験(EX)を、お客さま体験(CX)の向上にも活かしています。この成功を収めた例は世界的にも見当たらず、日本の卓越したプロジェクトを表彰する「PMAward 2023」でファイナリストに選出されています。
 今後は攻めのDXと称して、お客さまを中心とした改革テーマに取り組むべく、各社のCDOが任命したDX推進リーダー(Change Agent)らを中心に更なる施策を推進していきます。

NTTがめざす世界

CTOは常に10歩先の世界を見据えていかねばなりません。私たちが最終的にめざすのは「ウェルビーイング(心身の健康や幸福)」の世界です。一瞬の幸せや快楽といった「ハピネス」ではなく、それらの積分値で社会全体や時間的な広がりをもった幸せが「ウェルビーイング」だと捉えています。IOWNをはじめとしたNTTの技術力で現在のテクノロジーの限界を打破することで、人類が幸せに暮らせる世界に向けた価値創造と地球のサステナビリティの両立を実現します。また日本のみならずグローバルでのコラボレーションを推進することでNTT自身が世界で大きな役割を担い、グループ全体のビジネスを拡大していきます。
 NTTが世界を技術でリードし、企業価値を向上し続けるとともに、理想とする未来を現実のものとするには、知的財産、人的資本への投資が欠かせません。今後もその投資に見合うリターンを創出し、さらに未来を見据えた投資へ活用するといったサイクルを確実に回していきます。株主・投資家の皆様のご期待にお応えできるよう、引き続きNTTグループ一丸となって前進していきます。