代表取締役副社長
副社長執行役員 C T O
私たちがいま生きている21世紀の地球では、低炭素でサステナブルな環境型社会の実現が大きな課題となっています。NTTグループは「Your Value Partner」の経営理念のもと、持続可能な社会の実現に向け、気候変動問題の解決を、重要な企業活動のひとつと捉え、取組みを推進しています。私たちは、IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)を中心とした技術の側面からサステナビリティの実現をめざします。
お客さまに安心してお使いいただける通信サービスを提供することは、NTTグループが果たすべき最も重要な役割です。IoTが広く普及し、生活に欠かせないサービスも多様化するにつれ、トラフィックは増加の一途であり、データ量・遅延・消費電力などさまざまな限界を迎えようとしています。当初はIOWNの実用化は2030年頃をめざしていましたが、前述のようなネットワーク負荷の急激な拡大、カーボンニュートラルに関する世界の情勢、コロナ禍に伴うリモート化によるトラフィックの拡大、さらには原油価格の高騰など、さまざまな社会的課題が顕在化してきている中、NTTグループとしては2030年の予定を前倒し、2022年度内にIOWNサービスをスタートします。先進サービスを要望するユーザーへの導入を進め、技術実証による高度化を進めながら、特定用途・特定エリアへの導入を計画しています。既に、2022年6月にオープンした次世代先進オフィス「アーバンネット名古屋ネクスタビル」で、建物や都市空間、人々の行動データを活用し快適な体験をもたらす「街づくりDTC®」(DTC:デジタルツインコンピューティング)の実証実験が進んでいます。2022年度内には一部技術を実用化した上で、NTTグループの設備にも順次導入していきます。2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)をターゲットにIOWNの成果をみなさまにお見せしたいと考えています。
2021年9月に、「事業活動による環境負荷の削減」と「限界打破のイノベーション創出」を通じて、「環境負荷ゼロ」と「経済成長」を同時実現する新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定しました。 日本の長期目標である2050年カーボンニュートラルを10年前倒し、NTTグループはIOWNによる2040年度カーボンニュートラルの実現をめざしています。
IOWNが狙う高性能と低消費電力を両立したITインフラを実現するためには、光の技術の更なる活用が重要です。電気に比べ低消費電力で信号を扱うことができる光の技術を伝送のみならず処理の部分にも導入し、演算を行う部分の極めて近いところまで光の技術を適用した"光と電気の高度な融合(光電融合技術)"を実現します。本技術を半導体に組み込んでいくことで前述の課題を抜本的に解決していきます。光電融合技術は光関連技術の蓄積を有するNTTが得意とする領域です。
現在、半導体のバリューチェーンにおいては、日本企業は重要な技術や製造能力を有しています。しかし、世界のステークホルダーとしてのプレゼンスには至っておりません。IOWNを日本がグローバルパートナーと連携してリードし、半導体バリューチェーンにおいて日本がグローバルで欠かせない存在になっていくことをめざします。
2020年に米国で設立したIOWN Global Forumは既に欧州・米国・アジアから100社を超えるメンバーを集めています。このフォーラムの特徴は、IT業界や電気通信業界に限らず自動車業界、プラント業界、金融業界といった産業界に加え、学術機関もふくめた広がりを見せているということです。これらのメンバーと手を取り合いあらゆる産業においてIOWNを活用したバリューチェーンを構築できると考えています。
NTTのR&Dは、世界をリードする技術を生み出し、社会や産業、学術の発展に寄与していくという理念のもと、約2,300人の研究者が基礎研究から事業会社のビジネス展開を支える研究開発まで幅広くかつ多様な研究を行っています。
NTTグループの成長力の源泉となる研究開発として、競争力のある技術を創造するとともに、さまざまな企業や大学、研究機関とのオープンイノベーション・コラボレーションを通じて、新たな価値の創出につなげています。社員一人ひとりが「自律的で市場価値の高い研究者」であることが重要と考えています。そのために、個々のキャリアプランに合わせ、基礎研究から技術経営までバラエティに富んだキャリア形成を支援しています。ますます変化が激しくなっている時代においても高い市場価値を持った研究者に成長できるよう、研修プログラムを随時見直し、最新化・最適化を図っています。
今後を見据えると、暗号化技術やエネルギー等多様な分野で優秀な研究者が必要です。そのためにも、報酬だけに留まらず、格式や研究環境等さまざまな切り口からも働きたいと思ってもらえる、より魅力的なNTTグループをめざしていきます。
NTTのサステナビリティ