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CFOメッセージ

事業成長とサステナビリティの強化の同時実現による、持続的な企業価値の向上  代表取締役副社長 副社長執行役員 CFO CCO CHRO 廣井孝史

経営戦略とサステナビリティ

社会や経済が大きく変化していく中、これまでNTTは率先して自己変革を進め、事業活動を通じた様々な社会課題の解決への取組みにより、持続可能な社会実現への貢献を推進してきました。今後も中長期的に成長していくためには、経営戦略とサステナビリティを総合的に推進していくことが重要になると考えています。
 この数年、NTTでは財務マネジメントはもとより、非財務マネジメントも重視するスタイルに変革しています。まず、財務面では中期目標として従来のEPSに加え、2018年度にROICを新たに組み込みました。資本生産性を重視する経営戦略をグループ内に展開することで、リターンの額だけではなく投下資本効率を見るというマインド変革を行い、現在では各投資案件を議論する際等において資本効率への意識はかなり浸透してきたと実感しています。また非財務面では2021年度にカーボンニュートラルや新任女性管理職登用率等の目標を設定し、2022年度には役員報酬のKPIにサステナビリティ指標を追加する等、経営戦略と連動する非財務マネジメントの基盤づくりを進め、グループ内にも展開してきました。
 そして、2023年5月には、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために」を基本的な考え方として掲げた新中期経営戦略を発表しました。成長分野、既存分野の財政目標とともに、2040年ネットゼロ等のサステナビリティ関連指標も設定する等、これまでの取組みを深化させ、事業成長とサステナビリティの強化の同時実現に取り組んでいくことで、企業価値をさらに向上させていきたいと考えています。

新中期経営戦略におけるキャピタルアロケーション

NTTグループは、2012年度よりEPSを主要指標に設定し、中期経営戦略の着実な実行による利益成長に加え、自己株式取得も合わせて実施することで、EPS成長を実現してきました。この間、EPSは3.7円(2011年度)から13.9円(2022年度)へと約4倍となり、当社の株価も連動して高まってきています。しかし、EBITDAは3兆円前後で推移しており、今後の持続的な成長に向けては、キャッシュの創出力を拡大し、利益成長を実現することで企業価値を高めていくことが重要であると考えています。このような考えのもと、新たな中期経営戦略においては、EBITDAを主要指標に設定し、成長分野への投資の拡大を通じて、EBITDAの拡大をめざします。一方、株主還元の充実は当社にとって最も重要な経営課題のひとつであり、成長分野への投資を拡大しながら、同時に株主還元の充実も図っていきます。

成長分野への投資

市場ではデジタル化、クラウド化さらにAIへの期待が高まる中、NTTグループの今後の持続的な成長に向けて、成長分野への投資拡大は必要不可欠であると認識しています。
 主に投資を拡大していく分野は、DXビジネスやデータセンター、スマートライフ、グリーンソリューション、そしてIOWNの分野です。
 この中で、大きな投資額を見込み、短期的な成長が期待できるのはDXビジネス(約3兆円/5年間)やデータセンター(約1.5兆円/5年間)です。マーケットの旺盛な需要を背景に、これまでも投資を実施していますが、今後の更なる成長に向け、投資規模を拡大させていきます。
 スマートライフ(約1兆円/5年間)では、d払いやクレジットカード等の金融・決済サービスを中心に事業を拡大させることを考えています。dポイントクラブの約9,600万人の顧客基盤をもとに、様々なサービスをご利用いただくことで収益を拡大することをめざしており、金融・決済サービス以外では映像サービスやヘルスケア・メディカルの分野へ投資し、現在提供しているサービスをさらに充実していきます。
 グリーンソリューション(約1兆円/5年間)では、太陽光や風力等再生可能エネルギーの発電事業を拡大するとともに、蓄電池やエネルギーマネジメントシステム等への投資を通じて、2040年度ネットゼロの実現と、グリーンエネルギーとICTを組み合わせたソリューションサービスを創出していくことに取り組んでいきます。2023年8月には風力発電の開発実績とノウハウを有する株式会社グリーンパワーインベストメントを買収し、2040年度ネットゼロに向けた再生可能エネルギーの電源確保に加え、FIT制度に基づいた長期間での安定的なリターンを見込んでいます。
 当社が推進している次世代コミュニケーション基盤の構想であるIOWNに関しては、IOWNの特徴の1つである低遅延を活かした、APN IOWN1.0を2023年3月より提供開始し、光電融合デバイスの事業化に向けてNTTイノベーティブデバイス株式会社を2023年6月に設立する等、いよいよIOWNは構想から実現へのフェーズとなっています。2023年度ではNTTイノベーティブデバイス株式会社への出資額300億円も含め、1,000億円を投資することを見込んでいますが、光電融合デバイスの進展に応じて、更なる投資拡大について今後判断していきたいと考えています。

投下資本効率の向上

前述のとおり新中期経営戦略においては成長分野への積極的な投資を行いますが、一方で、既存分野への投資はサービス品質の維持を図りつつ効率化を進めることで、トータルの投資額を適切にコントロールしていく考えです。また、成長分野への投資実行にあたっても、取締役や監査役と様々な視点から議論を行い、案件ごとにROIC等のハードルレートを用いて実施判断を行うことで適正なリターンを追求していきます。DXビジネスやデータセンター等、事業の拡大に合わせてノウハウ、経験も蓄積し、着実に成長を始めています。投資の実行後は、定期的なモニタリングを通じて当初の計画と実績との乖離がないかをチェックし、速やかに改善策等対策を講じていきます。

株主還元の充実

株主還元の基本的な考え方は、継続的な増配の実施を基本的な考えとし、自己株式取得についても機動的に実施することにより資本効率の向上を図ることとしており、新たな中期経営戦略においてもこの考えに変更はありません。
 配当については、2023年度の1株当たり配当額は13期連続での増配となる対前年+0.2円の5円を予定しており、2003年度と比較して、1株あたり配当額は10倍まで拡大する見込みです。
 自己株式取得については、2022年度までに約5.3兆円を実施しており、2023年度は2,000億円を上限とした自己株式取得を決議しています。
 配当と株価変動を加味した当社の過去10年間の株主総利回り(TSR)は464%となり、配当込みTOPIXを上回るパフォーマンスとなっています。

有利子負債

成長分野への投資拡大と株主還元の充実等に取り組むことによるキャッシュアウトの増加に対しては、事業活動による安定的なキャッシュ・フローにより、十分に対応が可能であると考えています。成長分野への投資はリターンが長期に及ぶ案件もあり先行投資となることも想定され、有利子負債/EBITDA倍率は一時的には増加することも見込まれますが、財務の健全性は維持してまいります。中期的には、成長分野への投資によって成長分野のEBITDAをさらに拡大させることにより、2027年度に有利子負債/EBITDA倍率は2倍程度にまで低下させていく考えです。

サステナビリティの重要課題

2022年度は、サステナビリティ憲章で定めたアクティビティや指標の進捗状況を確認しつつ、定期レビューを実施し、あらためてマテリアリティを評価しました。取締役会直下のサステナビリティ委員会で議論した上で、取締役会において重要課題の選定、主要指標の設定及び役員報酬へのKPI設定を決議しています。
 重要課題の選定方法に関しては、開示府令やコーポレート・ガバナンス・コード、ESG対話における投資家の皆さまからのご意見、サステナビリティに関する調査機関の質問事項、有識者との意見交換等、様々な観点を踏まえ"企業としての成長"と"社会への課題解決"の2軸で評価を実施しています。サステナビリティ憲章において、毎年定期レビューをすることを方針に掲げており、2022年度はサステナビリティの重要項目を4つ選定しています。
 まず1つ目は気候変動への対応です。2040年のスコープ1、2のカーボンニュートラルをめざし、省エネルギー推進、再生可能エネルギー利用の拡大、IOWN導入を進めており、2022年度の温室効果ガス排出量は253万トン、2013年対比で▲47%と順調に進捗しています。また、新たな中期計画では新たにスコープ3も含めた2040年度ネットゼロをめざすこととしました。サプライチェーン上流のサプライヤから下流のお客さままで、対話や働きかけを通じて、脱炭素に向けた取組みを拡大していくとともに、他社に先駆けて取り組んでいくことで得られるノウハウを活用し、排出量可視化やグリーンソリューション等の拡大している市場におけるビジネス機会を着実に収益に結びつけていきたいと考えています。
 2つ目は人的資本です。2022年度にはリモートスタンダード制度を導入し、多様な働き方や働く環境を整備したほか、2023年4月には専門性を軸とした新たな人事給与制度を導入する等、社員の成長支援の仕組みを充実化し、社員が能力を発揮しやすい環境を整備してきました。社員のチャレンジ意欲や働きがいが向上することで従業員エンゲージメントが高まり、生産性やイノベーションに寄与するものと考えています。制度の導入には取り組んでいるものの、その運用・実行にあたっては様々な課題に取り組む必要があり、これらの運用における課題解決のためには、経営戦略と人材戦略をより連動させていくことが重要です。経営戦略に合致する人材像の特定、人材獲得・育成の方策、成果をモニタリングする指標や目標の設定等、人的資本の可視化等取り組んでまいります。
 3つ目は新たな価値創造です。お客さまの期待を超える新たな体験や感動を提供していきたいと考えています。新たな中期計画では、NTTの研究開発はグローバルでの共創に加え、マーケティング機能も含めたR&D組織の新設により、これまで以上にお客さま体験(CX)の高度化をめざすこととしています。
 4つ目はレジリエンスです。このマテリアリティはインフラサービスを提供している企業としての使命と考えています。自然災害等による大規模故障への対応だけでなく、サイバーセキュリティへの対応は、最新技術と高度な知識・ノウハウを持つ専門人材が支えています。NTTのバリューであるConnect、Trust、Integrityを将来も実現し続けられるよう、事業基盤の更なる強靭化に努めていきます。

ステークホルダーとのエンゲージメント、対話の充実

NTTグループの事業成長とサステナビリティ強化に向けて、情報開示を強化し、ステークホルダーの皆さまとの対話をより充実させていくこと、また頂いた意見を事業戦略に適宜反映し新たな施策を展開していけるよう、企業価値の向上につながるPDCAを加速していきます。特に、新たな中期経営戦略の目標や施策については、今後実績をお示ししていくとともに、開示を充実し皆さまへ丁寧にご説明していきたいと考えています。
 さらに、株主・投資家はもちろん、サプライチェーンやアライアンスでのビジネスパートナーを含めた様々なステークホルダーの皆さまからのご意見を尊重し、オープンで革新的な企業文化へ変革していきます。また、社員とは、タウンミーティング等を重ね、トライ&エラーを重視する文化を浸透させていく考えです。
 NTTグループの持続的な成長に向け、引き続き皆さまと有意義な対話を行い、大きく変化していく社会のなかで一歩先行く経営をめざしていきます。