代表取締役副社長
副社長執行役員 C F O
昨今、緊迫化する世界情勢、カーボンニュートラルに関する情勢、コロナ禍に伴うリモート化によるトラフィックとネットワーク負荷の急激な拡大、さらには原油価格の高騰など、社会的課題を挙げますと、枚挙に暇がありません。
NTTグループでは、社会や経済の方向性に応じて自らの変革を進め、事業活動を通じたさまざまな社会的課題の解決により、サステナブルな社会実現への貢献をめざしています。NTTグループの持続的な発展のため、新生ドコモグループの成長・強化に取組み、2022年1月から事業セグメントの大幅な再編成を進めてきました。2022年5月にはグローバル事業の統合も公表いたしました。また、当社はESGへの取組みを通じた企業価値の向上をめざしており、2021年11月には、サステナビリティ憲章を制定し、公表いたしました。この取組みを推進するため、温室効果ガス排出量や女性管理者登用率など、役員報酬の業績指標に新たに反映しました。今後は人的資本の活用など非財務情報の開示を一層強化していくと同時に、環境問題などの大きく変化していく社会的な価値観の動きを先取りして、先端的なディスクロージャーにも挑戦していきたいと考えております。
カーボンニュートラルに向けては、電力の消費量を減らしていくのは、半分は電力利用の効率化・削減で、半分はIOWNを中心としたイノベーションだと考えています。継続的な省エネルギーの推進に加え、自社での消費電力量を再生可能エネルギーに切替するなどの取組みを進めていきます。またIOWNの効果、ユースケースなど実用化に向けてそのメリットをしっかり伝えていくように取組んでいきたいと思います。
社会において、年々注目度が高まっている人的資本については、今後特に注力していきたい分野です。人的資本への戦略的な投資が、社会のサステナビリティと企業の成長・収益力の両立を図る「サステナビリティ経営」の観点からも重要な要素であり、次の3つの視点を強化していきたいと考えています。
一つ目の視点は、「経営戦略と人材戦略の連動」です。NTTは、2021年10月に「新たな経営スタイル」を発表しました。働き方の多様化を進め、多様な人材の活躍機会を拡大することで、オープン、グローバル、そしてイノベーティブな業務運営を実現できると考えています。そのためにも、女性および外国人/外部人材の活躍を推進し、昨年度から管理職に対しジョブ型人事制度を導入し自律的なキャリア開発を促しています。会社主導型のキャリア形成から、社員自身が自律的にキャリアを形成していくことができる仕組みへ転換を推進しています。
二つ目の視点は、「めざすべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップの把握(見える化)」です。制度・法律・政策の動向、社会からの要請に応じて各種情報の開示を図っていくのはもちろんですが、めざすべき将来のビジネスモデルや経営戦略と現在の人材のスキルや専門性との間のスキルギャップを分析し、人的資本への効果的な投資を加速させていきたいと考えます。
企業と人が共に成長し、価値を生み出し、社会を豊かなものとしていくそのためにも、「人的資本の可視化」が不可欠だと考えています。今後は経営戦略に合致する人材像の特定、そうした人材を獲得・育成する方策の実施、成果をモニタリングする指標・目標の設定など、人的資本への投資に係る明確な認識やビジョンの策定について議論を進めていきます。
そして三つ目の視点は「組織や個人の行動変容を促す企業文化の定着」です。よりオープンでフラットでフレキシブルなコミュニケーションや考え方、多様な価値観を尊重し、失敗をおそれずチャレンジを称え合えるようなカルチャーにしていきたいと考えています。また、文化の定着を可視化すべく、2021年度「働きやすさ」に関する設問を中心とした従来の「従業員満足度調査」を刷新し、「働きがい」に関する設問も加えた「エンゲージメント調査」をグループ横断で実施しました。国内グループ社員約13万人から回答がありました。
NTTグループ社員の現在のエンゲージメントと改善すべき課題を把握し、改善のためのアクションを実施することで、会社・組織の方針や戦略に共感し、誇りを持って、自発的に仕事に取組むエンゲージメントの高い社員が増えることを期待しています。
従業員のエンゲージメント率は、大きく労働生産性にも影響し業績にも直結します。国内標準、グローバル標準と比較し課題も具体的に見えてきたため、これから対策を打っていき、行動変容を促す企業文化の定着を推進したいと思います。
カーボンニュートラルも、人的資本に関する各種施策も、経営戦略に結び付け・実行計画に具体的に落として初めて意味があります。
カーボンニュートラルの取組みは、将来、社会や企業が負担することになるコストを軽減したり、自社の取組みをソリューションとして提供することによってビジネス機会を獲得する可能性があります。
人材戦略においては、ダイバーシティ&インクルージョンを推し進めることにより、誰にでも働きやすい職場になり、多様な人材を活用することで、結果的に生産性は上がるはずだと考えています。また場所や時間にとらわれない働き方が急速に浸透する中で、会社が柔軟な働き方を提供しているかという点では、今年7月からリモートスタンダードの導入を実現しました。このように個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトカムに繋がる環境を構築してまいります。
NTTグループは、これからも、さまざまな市場関係者のみなさまをはじめ、幅広いステークホルダーのみなさまとの継続的な対話とコミュニケーションの充実を社会の変革を牽引するイノベーティブな企業であることをめざしてまいります。
NTTのサステナビリティ