検索パネルを開く 検索パネルを閉じる メニューを開く メニューを閉じる

AI技術を活用して効率的なリサイクル環境を構築

NTT Ltd Belgium 

クリストフ・シュラーペン

地域が抱えるリサイクル環境の改善をめざして

ベルギーでは、リサイクルの習慣は日常生活の一部となっており、リサイクルやサステナビリティに対する意識の高い国といえます。ほとんどの町にはリサイクルパークがあり、広場にリサイクル用の大きなコンテナが並べられ、いつでもリサイクルできる資源ゴミを持って行って捨てることができます。多くの市民がリサイクルパークを利用し、資源ゴミの再利用に取り組んでいます。

しかしながら、リサイクルパークのコンテナが満杯になる事態が頻発し、捨てることのできなかったゴミは家に持ち帰らなければならず、公園や街中に不適切にゴミを投棄する問題が発生していました。
このような課題の解決を牽引したのが、NTT Ltd Belgium 新規事業開拓・イノベーションディレクターのクリストフ・シュラーペンさんです。

「こうした状況は、市民一人一人のサステナビリティへの取り組みを妨げることにつながります。この状況を改善し、多くの人にリサイクルパークを快適に利用してもらうためには、利用するためのユーザーエクスペリエンス(以下、UX)が重要です。UXが低いとリサイクルパークを利用しようという意識を低下させることにつながります」(クリストフ・シュラーペン、以下同)

また、トラックが資源ゴミのコンテナを回収する際に、まだ満杯になっていないコンテナを回収していくこともあり、回収の効率性という点でも課題がありました。この問題に対処するため、NTT Ltd BelgiumはCisco社の呼びかけに応え「Cisco Innovation Challenge当該ページを別ウィンドウで開きます」に参加しました。3日間のワークショップで、チームはSWOT分析や共感マップを用いて課題を特定し、AIを搭載したスマートカメラを使用したソリューションを設計することにしました。

「UXが低いと人はリサイクルパークには来ません。UXを向上させるためには、ユーザーだけでなく、リサイクルパークの運営側にもソリューションを提供する必要があると認識しました。特に、満杯のコンテナをすぐに交換することや、コンテナの利用状況を予測できるようにすることが重要な課題でした。このプロジェクトは、リサイクルパークのアプローチをデジタル化し、AIを利用してUXを向上させることで、誰もがより気軽にリサイクルを促進できるようにするものです」

ベルギーのリサイクルパーク、資源回収用コンテナ

テクノロジーとプライバシー、課題解決に向けた取り組み

NTT Ltd Belgiumは、スマートカメラを利用してリサイクルパークでのUXを向上させるソリューションの開発に挑戦しました。このソリューションでは、カメラに監視AI技術を組み込み、コンテナ内のゴミの量を読み取ることができるように設計しました。このテクノロジーを利用することでAIがリアルタイムでコンテナに入っているゴミの量を認識します。

「カメラでリアルタイムにモニタリングする点においては、プライバシーの懸念もありました。そのため、プライバシーへの対応策として顔認識や特定の情報を収集せず、また全てのデータは暗号化されるような仕組みをつくりました」

この方法により、市民は安心してリサイクルパークを利用できるようになります。

「このソリューションの開発にあたり、プライバシーとセキュリティは重要な課題でした。特定の状況のみを認識し、データを暗号化して外部に漏れないようにすることで、市民がリサイクルパークを利用する際の安心感が増し、プロジェクトの受け入れが促進されたと感じています」

市民はオンラインでリサイクルコンテナの利用状況を確認することが可能になり、せっかく車を走らせリサイクルパークに行っても資源ごみを廃棄できなかったという事態をなくすことができました。

モニタリングの映像。リアルタイムでコンテナの使用状況を確認でき、赤に達すると満杯

AIを活用したサステナビリティな社会へ

このプロジェクトは、SDGs(持続可能な開発目標)にも寄与しています。特に17の目標のうち「9 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11 住み続けられるまちづくりを」、「12 つくる責任 つかう責任」、「13 気候変動に具体的な対策を」といった目標に関連しており、リサイクルの効率化とともに、社会全体の持続可能性への貢献をめざしています。

AIカメラによってリアルタイムでゴミの量を読み取り、過去のデータと合わせて分析することで、コンテナ交換の最適なタイミングの予測が可能です。その結果、コンテナが満杯でゴミを捨てられないという事態を回避でき、市民がストレスなくリサイクルパークを利用できるようになりました。公園や路上への不法投棄もなくなり、さらには、回収トラックの燃料費とCO2排出量を最小限に抑えることもできました。

このプロジェクトの発端となった考えは、人間なら容器を見ただけで満杯の状態を把握できるという原理に基づいたAIモデルの開発です。このプロジェクトは、リサイクルパークなどサステナビリティに直接関わる企業とNTTのように技術的な知識やスキルを持った企業が協力し、パートナーシップを組むことの重要性を示しています。

「同じ価値観を持つ企業同士が協力することで、このような成果を出すことができ、社会に大きなインパクトを与えることが可能です。このプロジェクトは、パートナーや顧客と多角的なチームを編成し、協力体制を築くことで成功しました」

また、顧客満足度の向上とクライアントの温室効果ガスの削減にも貢献しており、世の中に高い影響力を与えることになりました。

「AIは使えば使うほど学習を重ね、正確性や可能性がスケールアップしていきます。AIの可能性をさらに発展させることで、今後、他のエリアや産業にも適用し、より良い未来をつくれると信じています」

クリストフ・シュラーペンさんのSelf as We

「『Self as We』の概念については一定の理解ができていると思っています。私の言葉で説明するならば、次のようになります。『個人として(Self)、他の人々(We)のためにも世界をより良い場所にすることを確実にすることで、私たちの未来を最も良く守ることができます』」と語るクリストフ・シュラーペンさん。

「Self as Weを自分の日々の業務の中で考えると専念、献身、コミットメント、チームワーク、尊敬、共感、革新、自己啓発、自分自身への挑戦、継続的な学習と、こうした10個の言葉が当てはまると思います」

そして、昨年、丸の内のパレスホテル東京で行われた第10回NTTグループ サステナビリティカンファレンス表彰式に出席した時のことを次のように語ります。

「最優秀賞の候補者の一人として表彰式に参加できたのは、本当に素晴らしい経験でした。NTTグループ幹部から参加者全員が受けた温かい歓迎とオープンな姿勢、そして丁寧な対応は、特筆すべきものでした。実際、イベント自体は、それぞれの施策を競い合うというよりは、私たち候補者がそれぞれのプロジェクトに誇りを持ち、皆、それぞれが勝者だったと感じられるものでした。ステージに呼ばれ施策について発表する時には、すでに全員がMVPであるような気持ちで発表をしていました。NTTグループの一員として、私は自分の価値を信じることができました」