NTTのサステナビリティ活動
農業の生産性と持続可能性を高めることを目標とするシステマ・インテグラプロジェクトは、プラスチック容器で販売されていた除草剤などの農薬をバルクでの販売に切り替え、革新的な追跡技術を採用して農薬の管理を効率化することで、環境への影響を最小限に抑える取り組みを行っています。このプロジェクトで構築したシステムは、農家が直面する日々の課題に対応するために開発され、プラスチック廃棄物の削減から農薬の正確な散布まで、幅広い分野にメリットをもたらします。NTT DATA アルゼンチン エネルギー部門 アカウントパートナーのマリーナ・ヘリティエさんに、システマ・インテグラの概要とプロジェクトへの思いについて伺いました。
アルゼンチンの多くの農家は作物の生産性を高めるために日々試行錯誤しています。その過程で直面する主な課題の一つが、除草剤などの農薬の適切な管理です。除草剤は、作物の成長サイクルの特定の段階で散布することが効果的であり、そのタイミングと正確な使用が作物の生育と収穫量に直接的な影響を与えます。
システマ・インテグラは、アルゼンチン国営石油会社YPFとパートナーシップを組むことから始まりました。YPFは資源探査、開発、流通といった事業から、電気、ガス、石油及び炭化水素誘導体の生産に至るまで、幅広いビジネスを手がけています。また、燃料、潤滑油、肥料、プラスチックなど産業関連製品も販売しているアルゼンチンを代表するエネルギー会社の一つです。石油会社としては、直接・間接的にアルゼンチン全土で10万人以上の従業員を雇用していることでも知られています。NTT DATA アルゼンチンはシステマ・インテグラのシステム開発、導入を担当し、NTT DATAの強みであるブロックチェーン技術やセクターの専門性を提供することでプロジェクトの実現に寄与しました。
現在、このプロジェクトは、アルゼンチンが抱える除草剤などの農薬の課題に対して革新的なソリューションを提供し、農家が抱える一連の問題を解決しようとしています。アルゼンチンではおおよそ年間3億6000万リットルの農薬が使われ、1万7000トンのプラスチック容器が使用、廃棄されています。そして農薬が入っている容器が適切に管理されないことで、農薬に耐性を持つ突然変異した雑草が新たに発生し、環境への影響が懸念されています。また、年間2000万個の化学物質に触れたプラスチック容器が廃棄されることは、環境だけでなく人々の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの問題に対処するため、このプロジェクトでは従来のプラスチック包装を使用せずに大量の農薬を一つにまとめて販売する、バルク販売方式を導入しました。バルク販売方式は、製品を大量に一括販売することで、不要な包装材を削減します。これにより、プラスチックなどの廃棄物を減らし、コスト効率を向上させます。また、このシステムの導入で、管理ミスを防ぎ、より効果的な農薬の運用が可能となります。
ソリューションを提供する上で重要なポイントは、農薬を個別のプラスチック容器に入れることなく、直接、生産者の畑に輸送することです。その実現には、NTT DATAが主導するウェブプラットフォームの開発に加えて、YPFのアルゼンチン全土にある配給業者の施設がシステムを導入・適応させ、開発した移動式タンクを配置し、新しい物流ネットワークを構築することが必要でした。この移動式タンクの導入により、農薬散布と管理のプロセスを抜本的に改革することができました。その中でもテクノロジー・モバイル・タンクはソーラーパネルを備えた自律型で、位置情報を把握し、正確な投薬量での農薬散布までを行うことができます。
テクノロジー・モバイル・タンク
さらに、このシステムは、製品の出荷を追跡し管理するプラットフォームZoomlo Trackerとブロックチェーン技術を組み合わせており、各農薬のバッチがどのように配布され使用されるかを正確に追跡できるように設計されています。この先進的な追跡システムは、IoTデバイスとモバイルアプリケーションを活用してリアルタイムでのデータ収集と分析を行い、農薬の在庫管理や有効期限の追跡を効率的に行います。これにより、アルゼンチン農畜産品衛生管理機構の厳しい規制と安全基準に準拠し、農業生産の安全性と効率性を大幅に向上させることができました。
車両の追跡状態を確認・変更できるアプリ
このシステムの導入は、効率性を向上させる以上の成果をもたらしました。持続可能な農業が推進され、環境への悪影響を大幅に減少させたのです。その中でもプラスチック容器の使用削減、運搬と保管のコスト削減、そして炭素排出量の削減は、このプロジェクトがめざす環境保護という目標に対して、重要な成果を出したといえます。また、タンクで農業生産者に届け、タンクから農薬散布が可能なため、人が農薬に触れるリスクを減らし、労働安全性を向上させることができました。その他にも、農薬の有効期限をシステム上で管理できるため、期限切れによる損失や製品の変質を防ぐことができます。また、製品の追跡管理により、配布先での製品の品質、効果のモニタリングが可能になりました。
このプロジェクトに関わることは、持続可能な農業技術の推進というビジョンを実現するための重要なステップであり、これにより社会全体にポジティブな影響を与えることができたのです。
私たちが行動することによる影響を理解し、共通のゴールをもつこと。「Self as We」という概念は、個々の行動がどのように集団全体の成果に貢献するかを示します。システマ・インテグラのプロジェクトを通じて、ビジョンの共有とプロジェクトに関わる人々の努力が、農業の慣習をどのように変革させるのかを明確に示すことができました。
マリーナ・ヘリティエさん(前列右から3番目)とチームメンバー
また、このプロジェクトに関わる全員が共通の目的を持って協力することで、それぞれが環境および社会に対してどのように責任を果たすかを再考させられました。
Self as Weは、私たちの行動が持続可能な未来に向けてどのように影響を与えるかを理解し、それに基づいて行動することの重要性を強く示しています。
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